インタビュー
オーケイエス 社長 大神田 佐敏 氏
航空宇宙向け治具が成長
- 投稿日時
- 2026/03/31 09:33
- 更新日時
- 2026/03/31 09:38
航空宇宙はライフワーク
工作機械向け治具・搬送システムの設計・製作を手がけるオーケイエスは、内燃機関のラインから楽器の製造まで、モノづくりの自動化、効率化を支える治具システムを作り続けてきた。自動車産業の変革や地政学リスクが高まる中、昨今の景況と同社が目指すモノづくりの方向性について思いを語ってもらった。

――昨年を振り返って全体的な印象は。
自動車部品向け設備は全体として需要が減少傾向にあり、設備投資も一巡した印象があります。当社でもこの分野の案件が減少しましたが、一方で二輪車や産業機械向けエンジン関連では設備投資が継続しており、また航空機エンジン部品向けの加工治具についても航空宇宙分野はこの5年ほどで着実に増加しており事業構成が変化してきています。結果として昨年は堅調に推移しました。
――輸出製品案件は関税リスクを受けませんでしたか。
昨年末までは新設・増強計画も見られましたが、国際情勢や各種制度の影響を受け、足元では慎重な動きも出てきています。その中でもアジア拠点向けの新規設備ラインも手がける機会はあり、海外案件における海外工作機械メーカーとの調整力や対応力の重要性を改めて感じました。
――好調な「クレーンレス治具交換」の需要について教えてください。
近年、工場内でのクレーン作業に関する運用面の課題をうかがう機会が増えています。背景には、作業者の熟練度や教育環境の変化など、さまざまな要因があると感じています。そうした中で「クレーンを使わずに治具交換ができる仕組み」への関心が高まっています。当社のシステムは、台車でパレットごと搬送し、機械装着時には高精度で位置決め・クランプが可能なものです。
省力化補助金との親和性もあり、工作機械メーカーのオプション仕様として採用されるケースも増えてきました。
――中国から国内回帰するメーカーの案件も増えている。
トランプ関税の影響による生産拠点の見直しに伴い、日本や他のアジア地域への再配置を検討するケースも増えています。従来の専用ラインを見直し、「BKS(ベビーカンガルーシステム)+走行ロボット」による多品種混合の自動化ラインとして再構築した事例や、クレーンレス治具交換システムとして構築した事例などがあります。全自動多品種ラインは複数の#30マシニングセンタに走行ロボットを組み合わせた、小規模FMSのような柔軟性の高いライン構成が特徴です。
■宇宙航空案件はライフワーク
――優れた治具や加工システムの設計はノウハウや想像力、現場経験が必要です。貴社の人材育成について聞かせてください。
現在、日本と海外拠点で設計人材の育成を進めています。設計はすべての品質を左右する重要な工程であり、その責任の重さをどう伝えるかが大きなテーマです。
私自身、専用機設計に携わっていた時代に、「納期遅延は生産停止に直結する」という現場の緊張感を経験しました。
現在はデータやツールが充実し、設計環境は大きく進化していますが、それでも「想定外が起きたときに何が起こるか」を予見する力は不可欠です。
その感覚をどう次世代に継承するかが重要だと考えています。
――データベースのAI活用は視野に入れていますか。
現在は構想段階ですが、3Dデータベースと設計標準を連携させ、最適な構造設計を複数パターン提示できる仕組みの実現を目指しています。一方で、これらのデータは当社の競争力の源泉でもあります。
そのため、セキュリティを確保したクローズド環境での活用が前提となります。
コストや運用面も含め、段階的に仕組みづくりを進めているところです。効率化のためのAIではなく、技術力をさらに高めるためのAIとしてどう使うか。そこにこだわっています。
――改めて航空宇宙関連の仕事について、思いを聞かせてください。
私にとってはライフワークです。
約35年前、ロケット関連部品の案件で当社の加工機械が唯一の国産機で採用された際、「この分野に関わり続けたい」と強く感じました。
耐熱合金の難削材加工多工程ラインを全て自動クランプ化した案件や、研究機関との共同プロジェクトなど決して簡単ではない挑戦を積み重ねてきました。航空宇宙の仕事は要求レベルが非常に高い。だからこそ、ここで通用する技術は、どの分野でも通用すると考えています。自社の技術が最先端分野に貢献できることに、大きな誇りと責任を感じています。
――今年、特に力を入れる領域は?
三つあります。一つ目は、航空宇宙分野のさらなる拡大です。既存分野に加え、新規領域の開拓も進めます。二つ目は、汎用製品の展開です。省力化補助金にも対応したクレーンレス治具交換装置や、女性作業者も扱える作業負担を軽減する搬送システムを、展示会などを通じてより広く届けたいと考えています。
三つ目は、社内デジタル化の推進です。AI活用と自社デジタル環境の整備で設計支援を高度化し個人に依存しない開発体制の構築を目指します。

BKS-APCとAGVを組み合わせた自動化ライン
防衛・航空宇宙分野への広がり
かつては値段が厳しく撤退する会社が続出した防衛装備品向け案件。しかし現在は近年、防衛・航空宇宙分野では事業環境の整備が進み、企業にとっても持続的に関与できる基盤が整いつつある。
大神田社長は「当社は量産部品よりカスタム設備が主戦場なので直接的な恩恵は限られますが、難削材加工や自動クランプなどのコア技術を軸に、重工メーカーとの技術連携を強化し最先端分野における“治具の価値”を高める取り組みを続けていきます」と力を込める。
(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)