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インタビュー

東京精密 代表取締役会長 吉田 均 氏 
測定が自動化時代の主役を担う 

投稿日時
2026/03/24 14:15
更新日時
2026/03/24 16:13

インライン化で品質保証を革新

吉田均会長は2015年の社長就任時に、「自動化」「非接触測定」「インライン計測」という三本の柱を掲げた。それから10年、労働人口の急減という荒波に直面する製造現場において、その先見の明は今や不可欠な「解」となった。半導体製造装置と計測の融合、さらにはEV向けバッテリー評価の本格展開まで、時代を遠望する経営戦略と、その先に描く未来の展望に迫る。

――測定機器の受注状況と、特に好調な分野は。

測定機器市場は工作機械とほぼ連動します。工作機械が今年も10%近い伸びを見込むなら、測定機器も同程度の伸びが期待できます。特に伸び率が高いのは航空・宇宙・防衛分野です。高精度かつ大型ワークへの対応が求められ、1台あたりの単価は自動車部品向けの数倍になることもあります。また、各国が安全保障ニーズへの対応として防衛・安全保障関連投資を拡大しており、当社にとっても重要な成長領域のひとつとなっています。

自動車分野も回復の動きがあります。ここ34年はEV化シフトで設備投資が止まっていましたが、ハイブリッドへの再注目でエンジンラインの新設や設計変更が動き出し、測定機器需要が戻ってきています。

――自動化の加速が測定機器ビジネスに与える影響は。

大きな追い風です。以前は測定室で1台の機械が測っていたものが、今は加工現場の隣に置かれ、全数検査に近い形で稼働しています。これは、お客さまや市場のご要望に応える形で、当社も製品の耐環境性向上に継続的に取り組んできた積み重ねが、今につながっていると考えています。全数を自動で測るとなれば人手は不要になり、タクトに合わせて3台、5台と導入されるケースも増えています。1プロジェクトあたりの受注単価が工作機械に迫る規模になってきました。

さらにAIと結びつくことで、測定機器の役割はより広がります。AIの核はデータですが、そのデータを生み出すのは測定機器です。前工程へのフィードバックにとどまらず、製造ライン全体の温度管理から省エネまでを最適化するスマートファクトリーの実現につながる。測定機器はその中核を担うキーデバイスです。

――半導体製造装置と計測の融合を推進している。

当社は計測技術を持つ半導体製造装置メーカーです。これまで各部門が専門性を磨いてきた技術を、部門の垣根を越えて融合させ、半導体製造装置部門と精密測定機器部門による共同開発を積極的に進めています。加工したら必ず測定が要る。高度な加工には精密測定技術が欠かせない。融合による相乗効果は計り知れません。開発投資は2026年度に120億円を超える見込みですが、やるべきことは山ほどあります。

■人手不足は好機

――次世代半導体技術「ハイブリッドボンディング」への対応は。

チャンスだと確信しています。ウェーハの面同士をバンプ(端子)なしで直接貼り合わせるこの技術は、ウェーハ全面での極めて高い平坦度が求められます。今年後半から引き合いが増え、2028年頃に拡大すると見ています。

昨年中部地区に新工場(東精エンジニアリング)を設けたのもこのためです。もとは自動車向けの専用機をメインに生産していましたが、今後の半導体需要を見越して、従来の専用機生産の機能を残しつつ、グラインダの生産を主目的とした工場を新設しました。また、業界全体で人材確保が大きな課題となっている中、当社はこれまでのサプライヤーの皆さまや従業員との関係を継続できており、その点が強みとなり大変ありがたく思っています。

――バッテリー評価試験機事業の手応えは。

8年前に他社から事業を譲り受け、福島県の拠点で充放電試験装置の開発を続けてきました。昨年11月には、スズキさんの次世代電池の技術開発に不可欠な充放電試験を請け負うなど、本格的に動き出しています。EVには逆風が吹いた局面もありましたが、10~20年単位で見れば電動化の方向は揺るぎません。バッテリー評価の需要は着実に伸びていくと考えています。

バッテリー市場は世界規模です。ハイブリッド車も燃料電池車も必ずバッテリーが伴います。着実に積み上げてきたこの事業が、今後の精密測定機器部門における成長エンジンになると期待しています。

――これからのモノづくりについてお聞かせ下さい。

内閣府によると、2030年までに約300万人の労働人口が失われます。これは広島県や茨城県の人口全体に相当する、非常に大きな数字です。モノづくりの量は増えるのに、担い手がいなくなる。当社も製造現場の人手確保は年々難しくなっています。特に半導体製造装置の7割以上がカスタマイズ品であり、現状では、人手に頼らざるを得ない部分が多いのが実情です。設計段階から共通化・標準化を織り込み、自動組み立てを前提とした製品設計に転換していく必要があります。

人手不足は多くの企業が直面する共通の悩みですが、自動化へ踏み出す絶好のタイミングでもあります。自動化を支援するメーカーにとっても、導入するユーザーにとっても、大きな可能性があります。政府の補助金などもうまく活用しながら、自動化への設備投資を前向きに検討していただければと思います。

東京精密自動化写真.jpg

完全自動化から無人化検査セルの構築まで様々な計測ソリューションを提供している


サステナブルな製品開発へ


深慮遠謀の経営ビジョンで社を牽引し、安定した成長基盤を築き上げてきた吉田会長は、「今後10年は自動化やデジタル化の深化が技術革新の主軸になる」と予測する一方、「現在のままでは地球環境の維持が困難」と警鐘を鳴らす。

「企業にとって環境貢献はもはや回避不能な責務であり、その追求こそが次の大きなビジネスチャンスに直結する。当社もこのビジョンに基づき、次世代のモノづくりに向けた開発を加速させています」と力を込める。

自動化、デジタル化の先にある「持続可能な社会への貢献」を成長の原動力に変えていく構えだ。



(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)