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インタビュー

コマツ産機 社長 長利 啓正氏 
バイストロニックと協業発表、中厚板向け板金機械を強化へ

投稿日時
2026/03/11 13:23
更新日時
2026/03/11 13:26

板金大手・バイストロニック社との協業を発表したコマツ産機。2次元ファイバーレーザー加工機を自社の強固な国内販売・サービス網で展開し、中厚板を扱う建機サプライヤーなどの需要を深耕したい考えだ。中厚板の曲げ作業を自動化する柔軟な自動化システムも展開。主力のサーボプレスでは、成長著しいインドにおける小型機のブランド確立を図る。長利啓正社長に戦略を聞いた。

――2025年は自動車産業の投資が軟調でした。

「世界経済の不確実性が高まった年でした。特にトランプ関税の影響で投資が様子見となり、大型プレスの案件が停滞。小型プレスは影響が限定的でしたが、資材高騰や人手不足で建設需要が落ち込み、我々の板金機械が煽りを受けています。一方、新興国を中心としたエアコン向けのサーボプレスは堅調。日系メーカーのプレゼンスが高く投資も拡大基調で、今後も継続的な需要が期待できます。BEV・HVに向けたバッテリーケースなどの部品需要にも引き続きチャンスがあります」

――板金分野でスイス・バイストロニック社と協業されました。狙いは。

「両社の利害が一致した結果です。我々は長年、自動車向けの3Dレーザー加工機に注力してきましたが、汎用的な2D市場を強化し、特にコマツの主力である建機業界と共に成長したいという思いがありました。建機は中厚板がメイン。従来はプラズマ切断機が主流でしたが、ファイバーレーザーの高出力化で中厚板も切断可能になりました。そこで高度な板金技術を持つ同社の製品を、我々の強固な国内販売網とサービス力で提供する体制を整えました。3月に展示場に実機が入り本格的な拡販を開始しますが、既に複数の内示があり堅調な滑り出しです」

――協業は板金分野を強く伸ばす意思表示ですね。

「その通りで、板金機械は建機と共に歩む戦略製品です。昨年のMF︱TOKYOで『ブレーキロボット』を披露しました。中厚板を曲げるプレスブレーキと、ロングリーチのロボットを組み合わせたシステムですが、中厚板の自動化を提案したのは当社だけ。中厚板の曲げ加工は重労働で、人手不足です。一方で量産品が少ないため、昼間はロボットを折り畳んで人が汎用的に作業し、夜間は無人稼働できる『使い分け』が可能な仕様にしました。実稼働も始まっており、今後水平展開を加速させます」

――海外はどの地域に注力を。

「注目はインドです。私も駐在経験があり、昨年約7年ぶりに訪れ力強さを肌で感じました。今後の成長が楽しみでしかありません。これまでは大型プレスに特化してきましたが、今後は小型でも攻勢をかけます。安価な機械が主流の市場ですが、我々は『サーボはコマツ』とマーケットに認知されたい。サーボプレスはリニアスケールでスライド位置を常に監視しており、これを用いた独自の荷重制御や下死点位置制御により、熱によるフレームや金型の伸びすら補正して安定した品質を保ちます。現在は±0・01㍉(H1F︱2シリーズ)に収めるほどの高精度な制御が可能です。市場全体のシェアを奪うより、品質重視の顧客へ確実に届けてブランドイメージを築く。現在の大型プレス同様のポジションに小型サーボも引き上げます」

■納入後も進化するプレス

――サービス面では稼働監視システム「Komtrax」による予知保全を強化されています。

「2018年から実装していますが、最大の特徴は『センサーレス』であること。故障リスクとなる後付けセンサーを避け、機械制御に必須な既存のデータを解析することでモーター故障を8割方、予知します。ユニークなのは『残存寿命は14カ月』と具体的な数字を提示できる点。さらにユニット丸ごとの高額な交換を避け、エンコーダーなど最小限の部品交換で済ませることが可能です。現在は大型プレスが中心ですが、今後は小型機へも横展開します」

――今後のKomtraxの展望は。

「今春にUIを全面刷新し、将来的に生成AIを活用した保全サポートも開始します。チャット形式で保全のナレッジを引き出せるこのシステムは、24時間稼働を続ける世界中のお客様や、サービス現場の強い武器になるはずです。また2020年よりリリースの『使われ方モニタ』は、全ショットの荷重データをクラウドに蓄積し、偏心荷重による機械の負荷を可視化。実際に製品の板厚ばらつきを0.05ミリに低減した例も出ています。さらにお客様が独自に追加したセンサーのデータをプレス稼働データと紐づけ、我々のクラウド上で管理する構想もあり、開発を進めています」

「プレス機は導入すれば30年そのまま使われる機械でした。しかしクラウドを活用することでSDVのように導入後もアップデートで賢く進化させられる。プレス機の稼働監視サービスは現状、オンプレミス型が主流で我々のポジションは非常にユニーク。このことが今後、コマツ産機独自のアドバンテージになります」

PVS8525ロボットシステム(背景そのまま).jpg

プレスブレーキとロングリーチロボットを組み合わせ中厚板の曲げ作業を自動化。昼間はロボットの腕を畳んで人が汎用的な作業をすることもできる 




中厚板ならではの自動化


昨年のMF-TOKYOではプレスブレーキとロボットを組み合わせた自動化提案が目立ったが、「中厚板の自動化を披露したのは我々だけ」と長利社長は言う。中厚板の曲げ作業は建機や船舶が主な需要先で、いずれも量産品が少ないため“自動化一本槍”では需要とミスマッチが生じてしまう。そこでコマツ産機はロングリーチのロボットを用い、昼間は腕を折りたたんで機械前のスペースを確保して人が作業できる形を模索した。オフラインでティーチングできるソフトも搭載。「中厚板業界の関係者にぜひ見てほしい」とする。



(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)