1. トップページ
  2. インタビュー
  3. カシフジ 取締役 香月 邦彦 氏 一歩先へ カシフジ、新たな産業の成長に追随

インタビュー

カシフジ 取締役 香月 邦彦 氏 
一歩先へ カシフジ、新たな産業の成長に追随

投稿日時
2026/03/11 13:17
更新日時
2026/03/11 13:22

自動車業界の設備投資が停滞する中、ホブ盤メーカーのカシフジは新たな市場開拓に注力している。営業本部長の香月氏は「造船や農機、半導体など視野を広く持つことが重要」と強調。足元では中国で急伸する減速機市場の歯車需要が好調だが、今後予期される人型ロボットの本格普及を前に、より小型の歯車加工機の開発を急いでいる。香月氏が「成長」という言葉に込めた、新たな時代への戦略を追った。

――昨年の設備投資は主力の自動車を中心に軟調でした。

「自動車の電動化の方向性が定まらず設備投資が停滞しています。結果的に自動車、農機、建設機械、一般機械の分野では、大きな設備投資案件は受注できていません。ただ、反動で今年は良くなる期待感は持っています。視野を広げれば明るい分野もあります。例えば半導体装置関連や昨年のコメ不足に伴う農機の特需などがあります。人口減少の中で農業の無人化・省人化の潜在的な需要はあり、農機の生産台数は増える傾向にあると考えています。造船業界も好調で、26年後半には当社にも設備投資計画がくればと思っています」

――造船や半導体と歯車加工機は一見、結びつきにくい印象です。

「船=1mを超える大きな歯車、という話だけではないんです。確かにそのような歯車もあり、そのサイズの機械は、当社のラインナップから外れているので設備投資は望みにくいのですが、業界全体が盛り上がればクレーンやウィンチの需要が生まれ、そこには必ず当社のホブ盤サイズの歯車を使用する減速機が存在します。同様に半導体製造装置もタイミングプーリなどを使用した変速機構を使います。つまり、産業が動けば回り回って歯車加工機の需要に結びつく。先入観なく見渡し『どんな産業にも繋がりがある』という目線で探さなければなりません」

――市場開拓に加え技術面でも選択肢を増やしていますね。

「歯車加工に付帯する周辺の仕事でお役に立ちたい。例えば『ホブ切り+切削面取り』の『KE180C』や、『ハードホビング+ポリッシュ加工』を1台で可能にする『KE180F』のホブ盤です。特にKE180Fは、『歯車研削までの歯車精度は要らないが、安価に歯車仕上げを行いたい』という声に応える仕様です。お客様にコストメリットも届けることが肝心だと考えています。そして当然の事ですが、一度市場に出した機種や機能も徹底的にブラッシュアップします。発売後もお客様の満足を追求した製品へ昇華させる。それがカシフジのポリシーです」

■来たる人型ロボット需要

――自動車が軟調な中、現在の下支えとなっている分野は。

「減速機に使われる歯車加工が主な受注先です。コロナ禍で無人化ニーズが高まり、2021年頃から急速に増えました。特に中国では『電動車の次はロボットだ』とこの分野は活況です。23年の中国・CIMT(中国国際机床展覧会)では電動車と産業用ロボットがトレンドを二分しましたが、25年のCIMTはガラリと変わり“人型ロボット”が強調された展示会でした。同時期に、北京で人型ロボットのマラソン大会が開かれ日本でも話題になりました。この旧正月の大晦日(26年2月16日)、中国のテレビ番組では人型ロボットが子供の動きと同調しながらカンフーをしていました。映像を見たのですが動きは滑らかで、1年も経たないのに『ここまで変わるのか』という、進化のスピードに圧倒されました。26年後半には人型ロボットが量産に入ることを中国政府は目標に掲げています。我々もこの流れを捉えねばなりません」

――ロボット向けにはどんな加工機を。

「小型のホブ盤や、内歯車を加工するギヤスカイビング盤です。ただ人型ロボットに使う歯車は外径も小さく、モジュールも非常に小さくなります。指先の関節に使用する減速機は鉛筆ほどの大きさの歯車になると言われています。当社のホブ盤では今までは加工していない領域で、本来は専門外です。しかしありがたいことに『カシフジの機械で加工できませんか』という声が次々に届く。中国企業との積み上げた実績と信頼がある中で、この期待に応えないと次なる仕事につながりません。今、研究開発を急いでいるところです」

――中国の経験がいずれ国内で需要が立ち上がった際の武器になりますね。

「そう願っています。日本は人型ロボットで出遅れましたが、国も産・学一体で注力し始めました。当社が中国市場の最前線で積み上げた歯車加工技術は、日本でも人型ロボットへの量産開始時に大きなポテンシャルになります。高精度な小型歯車は、当然ロボット以外にも使用できます。何がどうなるかわからない世の中だからこそ『全方位戦略』で挑みます」

――次のJIMTOFで「成長」した姿が見られるのでしょうか。

「まだわかりませんが、まさに『成長』をテーマに据えた新たな技術を披露したいと考えています。お客様の反応は不安ですが、楽しみでもあります。世の中は変化し成長を続けます。当社も絶えず成長し、変化をしていかないといけません。その思いを、形にして見せたいです」

KPS10_2.jpg

開発を進める小型ギヤスカイビング盤


インドは長期戦


近年インド市場にも注力するカシフジ。香月取締役は「地道に実績を積み、現地での評価を広げたい」と語る。かつての中国市場も、日本の現場で稼働する同社機を見た顧客の口コミから一気に波及した。インドも一筋縄ではいかない市場だが、口コミで良い商品が広がる文化はあり、長期戦で成長を目指す構え。「もちろん1、2年の短期間で成果はでないが、コツコツ実績を積み上げ、信頼を勝ち取る」と香月氏。中国での体験を活かし、次なる巨大市場の開拓に取り組む。



(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)