インタビュー
イシダ 部長 中川 和幸 氏
マスタ整備と『はかる』技術で積載率向上へ
- 投稿日時
- 2026/02/24 16:05
- 更新日時
- 2026/02/24 16:11
人手不足に現実解、既存インフラで省人化
物流関連二法の施行で積載効率向上が急務となる中、計量機大手イシダが「マスターデータの精度向上」を起点とした物流改革を提唱している。労働力不足に対してはピッキング支援システムや電子棚札を活用し、既存設備を活かした現実的な改善策を提示する構えだ。物流システム部の中川部長に、同社が描く物流事業の戦略を聞いた。

イシダ 物流システム部 部長 中川 和幸 氏
――貴社の「はかる」技術は特に食品業界で高い存在感を持ちます。組み合わせ計量機は貴社の発明だそうですね。
「開発は1972年です。国際特許も取得し、今も国内シェアは推定70~80%。スーパーの㌘表記のある食材の多くは、弊社の計量機を経てパッキングされています。“正確に速くはかる”というコア技術が事業の根幹です」
――食品以外の物流向けソリューションはどのような立ち位置ですか。
「物流事業は総売上の7~8%ほどですが、内容はユニークです。最大の特徴は、物流の中でもケース単位ではなく単品・個品のピッキングに特化している点にあります」
――詳しく教えてください。
「コンビニは今でこそ全国に5万軒を数える社会インフラですが、日本では約50年前にチェーン展開が始まりました。店舗が小さくケース単位の在庫を持てないため、物流センターでその日に必要な分をピッキングし供給する仕組みが必要です。この構築を弊社の計量・仕分け技術でお手伝いしたのが物流事業の原点。現在もコンビニ向け個別ピッキングシステムで高いシェアを持ちます」
――物流業界は法改正や物量増加で激動の渦中です。現場のニーズに変化はありますか。
「多くの物流センターは長い年月をかけ最適化したオペレーションを確立しています。そのため大掛かりな設備投資でゼロベースから作り直すより、今のインフラを活かしつつ、トラック待機時間削減や配車効率向上に取り組む方向に関心が移っています。また人手不足も深刻です。特に首都圏では“スキマバイト”なしには成立しない。そうなると『17時に出勤した未経験者が17時5分にはベテラン並みに動ける』ような設備が不可欠です」
――具体的に、どの製品がそのニーズに応えていますか。

さいまるカートは複数オーダーを同時に質量検品し生産性を高める
「重量検品機能を持つ『さいまるカート』が一例です。液晶画面の指示に従うだけで誰でも正確にピッキングできます。デジタルピッキングシステムも、シグナルタワーによるゾーニングとランプ表示で直感的に何をすべきかを伝えます。昨今はAMRへの関心も高いですが、自社工場の検証では、限られた面積内での処理速度において、まだ熟練した人の手による作業には及びません。同能力をAMRで実現するには広大な面積と多額の投資が必要です。我々はあくまで現場の密度を損なわないシンプルな仕組みを重視しています」
■電子棚札を物流効率化に
――物流業界で電子棚札の活用も進めているそうですね。
「マルチベンダー方式のセンターでは、配送先が変わるたびに保管間口の表示を書き換えます。従来は紙の看板を差し替える膨大な工数と資源が割かれてきましたが、電子棚札なら切り替えを瞬時に自動化できます。さらに大きな可能性を秘めるのが、配送用のオリコンへの適用です。店舗ごとにラベルを貼り替え、返却時に剥がす作業が全国どのセンターでも行われます。これを電子棚札に代替すれば、ペーパーレス化とミス根絶、効率化を同時に達成できる。初期投資は必要ですが先行して踏み切る企業も現れています」
――積載率向上が叫ばれます。貴社の計量・計測技術が重要になるのでは。
「ええ。ただ積載率を最適化しようにも、前提となるマスターデータの精度が低いケースが散見されます。シーズンごとに膨大な新商品が出るため、現場の管理が追いつかない。メーカー提供データが間違っているケースもあります。かつては運賃を払えば運べる時代で、マスター管理は軽視されがちでした。しかしEC拡大でサイズ別運賃が厳格化し、さらに法規制で積載効率が問われる今、ようやくマスターの重要性が認識され始めました」
――具体的にどのような提案を。
「商品を置くだけで寸法と重量を出力する高精度ピースマスター計測機『PS-450 パーツスキャン』の提案を強化しています。30年前からラインナップしていた製品ですが、需要が増えたのはここ15年ほど。またコンベヤ搬送中に計量する『ウェイトチェッカー DACS-ASシリーズ』と寸法計測を組み合わせ、工程を止めずに最新情報をマスターへ紐づける仕組みも提供しています。正しいマスターがなければ積み付け効率の向上も難しい。今後もニーズは増えると思います」

「PS-450 パーツスキャン」は商品を置くだけで寸法と重量を出力する

「ウェイトチェッカー DACS-ASシリーズ」はマスター整備や積載率向上に有効
――今後の展望をお聞かせください。
「大型マテハンによる完全自動化も一つの解ですが、私たちは今のセンターのインフラを大きく変えず、いかに人を減らし効率を上げるかという難問に向き合っています。詳細はまだ明かせませんが、現場環境を維持したまま省人化を実現する新たな開発も進めており、年内の発表を目指しています。一部のお客様からは既に『すぐやってくれ』と非常に好反応をいただいています。ご期待ください」