インタビュー
パナソニック コネクト ダイレクター 小笠原 隆志 氏
「現場」から始める物流全体最適化
- 投稿日時
- 2026/02/24 15:55
- 更新日時
- 2026/02/26 08:56
世界標準×日本の現場がSCMを変える
世界80カ国以上で展開するBlue Yonderや、現場実行領域に強いZetesをグループに擁し、グローバルなSCMの知見を蓄積してきたパナソニック コネクト。同社は「現場から始める全体最適化」を国内の事業コンセプトに掲げ、実行領域のデジタル化を起点とした変革を提唱する。グローバル標準を取り入れつつ、日本の現場の強みを「武器」へと昇華させる戦略とは。同社・現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏に聞いた。

パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクター 小笠原 隆志 氏
――「現場から始める全体最適化」を掲げています。全体像を先に描かずに現場から始めると、部分最適に陥る心配もあります。「現場から」進める理由を教えてください。
「私たちが言う『現場から』は、個別最適を積み上げる話ではありません。全体最適という高い目標に向かうため、まず現場の『データ基盤の構築』という不可欠な出発点を設けています。現場力の強い日本では、長年人の知恵や工夫で業務が回されてきましたが、その一方で紙やアナログな運用に依存しデータが分断しがちです。全体最適を議論する前提として、まず現場のデータを集め可視化・活用する。次にシステム間や業務プロセス間をつないで統合する。最終的にAIやロボティクスとも連携し、リアルタイムに意思決定できる状態へ進化させる。段階を踏んで全体最適へ到達する『ロードマップ型』の提案を行っています」
――国がCLOの設置を求めたのは、個別最適から抜け出せないからこそ、権限を持って全体を見直せというメッセージにも思えます。
「おっしゃる通り、経営へのコミットと権限を持つCLOは非常に重要な役割を持ちます。しかし、トップダウンで進めようにも、判断材料となる『現場の数字』がなければどこに手を打つべきか判断できません。例えば、拠点ごとの荷役時間や待機時間、配送の実績、ドライバーの稼働などを問われたときにエビデンスがあるか。そこが弱いと改革には至れません」
――まず、現場を測れる状態にすると。では、膨大な業務プロセスがある中で、最初はどこから取り組むのが現実的でしょうか。
「現場からとれるデータは多岐にわたります。しかし、一度に全て対応しようとするとそれだけで現場が疲弊してしまい、変革そのものがとん挫してしまいます。なので、当社では今最も困っていることの特定から伴走します。倉庫なのか輸配送なのか、その中でも人員計画、庫内作業、配車、配送進捗、運行管理など、ボトルネックは企業ごとに異なります。まずは現場を確認し、必要なデータと取得方法を整理したうえで、段階的に導入を進めていきます」
■世界標準を日本の現場に
――段階的に導入を進めると、システムがバラバラになり、結局サイロ化してしまいそうです。
「そこが私たちの戦略の核心です。ポイントは、世界で実績のあるグローバル標準の『ベストプラクティス(標準業務フロー)』をベースにするという考え方です。日本企業は自社の業務に合わせた『スクラッチ開発(特注)』を好みますが、それでは独自仕様が乱立し、データの連携を阻害します」
「対して私たちは、Blue YonderやZetesといった世界的に洗練されたパッケージを土台に据えます。業務の80〜90%をこの標準フローに合わせ、残りの10%程度に日本独自の商習慣や法規制、その企業の競争力の源泉となっている運用を『アドオン(追加機能)』として実装します。これにより、現場の柔軟な対応力という『日本の強み』を活かしながら、全体を横断するデータ基盤をスピーディーに構築できます」
――Blue YonderやZetesのようにSaaS型ですと、既存システムに慣れたユーザーからの反発はありませんか。
「そうですね。そのため、私たちは単なるシステム導入ではなく、業務プロセスそのものを変える『チェンジマネジメント(変革管理)』を最優先としています。パッケージ化することでシステム構築期間を短縮できる分、現場の方々への教育やトレーニング期間を手厚く確保し、導入前からシステムへの理解を深める取り組みを行っています。どんなに優れたシステムでも、現場が使いこなせなければ意味がありません。時間をかけて伴走し、デジタルが自分たちの仕事を楽にする『武器』であることを実感していただく。約700人のSCM専門チームが、そうしたカルチャーの醸成まで含めてトータルでサポートいたします」
――導入先はどのような効果を得られていますか。
「段階的な導入で大きな効果を上げた事例として、福岡運輸様のケースがあります。同社では配送進捗のリアルタイム可視化や積込検品のデジタル化を段階的に進めました。その結果、荷主からの問い合わせ対応を月1150時間、配車管理者の対応を月2760時間削減し、管理業務工数を80%も削減しました。他にも、デジタル検品によって検品ミスや積み間違いといったヒューマンエラーの防止、急な積荷変更への迅速な対応など、現場の運用品質そのものが向上しています」
――現場から始めた先にはどのような物流の未来が待っていますか。
「まず国内物流のボトルネックとなっている実行領域のデジタル化を完遂させ、そこから『製造・物流・流通』というサプライチェーン全体をデータでつなぐ最適化を目指しています。さらにその先には、資源循環の観点から重要性が増す『返品管理(リバース・ロジスティクス)』の領域も視野に入れています。物流を単なるコストではなく、企業の『競争力の源泉』へと変え、持続可能な社会インフラとして維持することに貢献していきたいと考えています」

パナソニック コネクトが提供するサービス全体のイメージ。返品管理まで視野に入れていることが特長の一つだ
(日本物流新聞2026年2月25日号掲載)