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インタビュー

村田機械 部長 松村 孝 氏 
ファイバーレーザ複合加工機で需要を創造

投稿日時
2025/12/24 11:43
更新日時
2025/12/24 13:26

板材に高速レーザ加工+切削加工

搬送機器・自動倉庫などのロジスティクス/FA関連事業をはじめ、繊維機械、情報機器、製造系ソフトと機械のデパートを思わせる村田機械。グループ全体で前期連結5260億円の売上を達成しており、シートメタル加工機部門では、創業90周年の歳月を経て広範に培った技術を活かし、複合機能や前後工程を含めた自動化で大きな成果を上げている。

シートメタル加工機を開発・生産する同社の犬山事業所(愛知県犬山市)を訪ね、板金システムの販売を統括する松村孝氏に話を聞いた。

村田機械 松村 孝 板金システム販売統括部長

■独自性の高い複合機

工作機械が複合機能を本格的に持つようになってざっと4半世紀強。板金加工業界も主に板材の打ち抜きや穴あけに使うタレットパンチプレス(タレパン)に、レーザー機能を付ける形で加工の複合化を進めてきた。

「ところが当社製の機構は逆なんですよ」―。松村氏の短い言葉がキーワードだった。

「タレパンにレーザー機能を付加するのが一般的な複合機です。けれどこれではファイバーの持ち味である高速性が活かせません。対して当社の複合加工機LS-HLシリーズは、ファイバーの高速性を保ちつつ成形・タップ加工を同一加工機内で行え、より高効率な工程集約が図れます」(同)。

つまり同社は、これまでの業界の常識にとらわれず、ファイバーレーザーベースの複合加工機を追求した。ユニークな発想と技術で、「このスタイルは今も唯一無二」(同)という。

同社がこのタイプの複合加工機を最初に発表したのは2016年。開発から約10年が経過し、今年は一段と進化した新機種を7月に発売。「複合機市場での認知度も高まってきた」と松村統括は胸を張った。

■切削機能へ進化

その新機種が「切削と切断の融合」を高度に実現した複合加工機「LS3015MC」だ。最大板厚16ミリまでの厚板にドリル、タップ、皿ザグリ・深ザグリ加工等を柔軟に行う。機械には切削ヘッドとレーザヘッドの2つを搭載し、切削側はATCを介した複数の刃物で切削、レーザー側にはフライングオプティクスヘッドを搭載し高速動作のレーザー加工を行う。

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新機種「LS3015MC」の内部。切削ヘッドとレーザヘッド(左奥)のハイブリッド仕様だ

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タップや穴加工もスピーディに自在

松村氏がユーザー目線で説明する。

「機械や装置産業の盛んな日本は特に、板金加工でタップやボルト穴の加工が多いんです。カバーやベース部品を見ればよく分かります。だから現場ではレーザー切断後にボール盤で穴をあけたり、工作機械に乗せ換えて後加工するのが大半で、段取り換えは肉体的にも大変でした。位置ズレや表裏の間違いなどNGも出ていたかと思います」。

要は新型機による完結加工で精度や品質が上がり、段取り換えがないから効率的で作業負荷も減るというわけだ。

■長時間の連続稼働も

さらに大きな続きがある。同社は得意とする自動倉庫や搬送システムをレーザ複合機につなげて板金加工全工程の自動化を提案中だ。

犬山事業所の一角にはその効果を見せるショールームがあった。8段のストッカシステムからシート材がマシンへ自動供給され、複合機能による一貫加工から完成ワークの仕分け積載と全フローを見ることができる。機械は無人稼働し、有人の仕事は多段ストッカシステムへの梱包材搬入くらいか。リードタイム短縮の要求が厳しくなるなか、ユーザーからは「3日かかった仕事を8時間で終えた」、「メンテを考えても年間300日を超える高稼働も実現できる」などの評が出ているそうで、「リピート受注もいただいています。ジョブショップや材料メーカー、製缶業からの引き合いも増えています」と松村氏。

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シート材の供給から無人加工、ワークの仕分け積載まで完全自動化を実現

さらに板金加工のデータ3次元化に絡んでは、CADデータや加工プログラムを機種・メーカーを超えて有機的につなげる共用ファイル(オープンインタフェース=SCPX)の普及をソフトメーカーらと推進し、板金加工のDX化をたぐりよせようとする。

◇―――◇

国内板金機械メーカーは過去から「1強」が続いてきた。対抗馬となる同社は、独自構造のファイバーレーザ複合加工機とオープンなデータ運用でその背中を追う形だ。松村統括は「ファイバー複合加工ならムラテック、板金加工の自動化でもムラテックと呼ばれるようにしたい」と口元を引き締めた。



(日本物流新聞2025年12月25日号掲載)