インタビュー
キャドマック リーダー・次長 密野 健 氏
最高効率の現場作りにソフトの存在感増
- 投稿日時
- 2025/12/24 11:14
- 更新日時
- 2025/12/24 11:21
板金業界 人手不足深刻!
7月のMF-TOKYOで発表した曲げ加工自動化システム「MACsheet BENDRobot」や現場専用端末「MACsheet TouchPocket」、9月に刷新した板金設計3DCAD「MACsheet BBX」など、今年に入り次々と新たな方向性を打ち出しているキャドマック。人手不足や海外製の板金機械の浸透など板金業界の地殻を揺るがす事態に、ソフトウェアで現場を支える姿勢は変わらない。最新のソリューションと同社製品が市場で受け入れられている理由について探った。

キャドマック 大阪支店 技術部・西日本チーム リーダー・次長 密野 健 氏
――MF-TOKYOでは曲げ加工の自動化ソリューションなど新たな提案もあり、貴社ブースには人垣ができました。その後の反響はいかがですか。
「今回展では非常に多くのお客様に当社ブースに来ていただきました。9月、MACsheet SEG5からMACsheet BBXに刷新した板金設計3DCADは、会期後の8月からこれまでコンスタントにデモンストレーションの依頼があります。関心は高く販売実績も伸びてきています。新たに発表したMACsheet BENDRobotも出展後に1社納品をし、その後も3社ほどから引き合いがあり現在検討フェーズに入っている状況です」

MACsheet BENDRobotの活用画面イメージ
――市況は軟調ですが引き合いが増えている理由は。
「これまでソフトウェアへの投資はハードウェアに比べ後回しにされがちでした。しかし、人手不足が深刻な今、高性能な機械を導入しても人手が足りず遊休設備となりかねない。ソフトを上手く活用すると加工工程前後にかかる負担を削減し、人手を生産へ振り向けることができます。現在いる従業員で現場を最高効率で回すためにも、ソフトに意識を向ける企業が増えてきています」
――中でも貴社製品が選ばれる理由は。
「そもそも板金製造業向けの3DCADを扱っているメーカーが限られるため、日系大手を除くと真っ先に当社の名前を挙げていただける。加えて、市場では中国を中心とした海外製の装置の活用が進んでおり、メーカー横断でデータを活用しようとすると当社の製品を選んでいただけます。また、既存のソフトに使いづらさを感じているお客様も多く、設備更新のタイミングで『ソフトも他を見てみよう』と検討されるようです」
――使いづらさとは。
「発注先の設計データは必ずしも製造のことまで考慮されていません。そのため、板金製造業の現場では、まず受け取った3Dデータを加工できるように修正する作業が発生します。当社の製品は元のデータを活かしながら素早くデータに直接編集することが可能で、この点を非常に評価いただいています」
「当社製品には派手な機能はありませんが、開発においては現場の具体的なお困りごとに耳を傾け、大きな会社にはないスピード感で解消していくことを意識しています。現場で使っていただいてこそ良い点、悪い点は見えてきます。当社のインフォメーションセンターには毎日のように現場の声が届きます。この具体的な声こそが当社の強みの源泉です」
■曲げ加工やデータ管理を省力化
――新たな提案について、まずはBENDRobotから他社製品との違いなどを教えてください。
「コマツ産機様と協業し建機向けなど中厚板を扱うユーザー様に絞って提案した点が他とは違います。今回1号機を導入いただいたユーザー様も、これまで厚さ16㍉のワーク(重量14〜15㌔)を1日に80〜100枚も特定の作業者が曲げていました。数はそこまで多くないですし、曲げ形状も比較的シンプルで、高い習熟度は求められません。しかし『重い』。今後の担い手確保に限界を感じ導入いただきました」
――技術的な違いもありますか。
「当社のシステムは、ほぼロボットコントローラーを触らずに、ソフトだけでプログラムを作れるのが特長です。私自身、ロボットを動かした経験は全くありませんでしたが、ロボットの仕様やレイアウトをソフト内で構築し、ワークをどこから取り、どこへ置くかなどを指示すれば、動作プログラムを自動で作れました。敷居が高いと導入に踏み切れませんから、ロボットの操作を習得しなくても、とりあえずロボットが現場で機能するかを判断できるのは非常に大きな意味を持つと思います」
――MACsheet DataPocketにも新たな機能(MACsheet TouchPocket)が追加されました。
「DataPocketが事務所などにあるデータ管理の役割であるのに対し、TouchPocketはタブレットを通した現場でのデータ活用と作成を目的としています。これまで、事務所にあるデータは紙に印刷して現場活用するのが基本でした。そのため、届けるまでに時間がかかる、最新の図面への差し替えミスといった問題がありました。TouchPocketを使えば、現場から常に最新のデータにアクセスできる。また、図面だけでなく写真などのデータも登録できるので、不良の報告やマニュアル作りを現場でタブレットのカメラ機能を使って行えます。TouchPocketを併せて活用することで、DataPocketを単なるファイル管理ソリューションではなく、『板金加工の情報プラットフォーム』として発展していける可能性があると感じています」
――最後に、今回の記事を読む板金業界の方にメッセージがあればお願いします。
「先日、東北エリアでBBXの体験会を当社として初めて行いました。既存のお客様だけでなく、新規のお客さまにも来ていただき、思いのほか盛況なイベントとなりました。今後は製品のアップデートだけではなく、当社の製品に触れていただける機会を各地で増やしていきたいと考えています」
西日本の板金事情
密野氏によると西日本地域の板金ニーズは、「どこも決して景気がいいわけではないが、北陸で多い建材関係のユーザーは仕事が順調に回っているようですし、中四国・瀬戸内も造船関係が伸びている」と好感触。一方で、半導体で熱い九州は「あまり動きがみられない」という。
(日本物流新聞2025年12月25日号掲載)