1. トップページ
  2. インタビュー
  3. 鈴木製機  代表取締役 社長 鈴木 昂 氏

インタビュー

鈴木製機  代表取締役 社長 鈴木 昂 氏

投稿日時
2025/12/17 09:29
更新日時
2025/12/17 09:32

11月から簡易リフト適法化
鈴木製機、かつてのトップメーカー再参入

――11月1日から簡易リフトが建築基準法の適用から外れました。今回の改正をどう捉えていますか。

「まず、『違法だったものが違法ではなくなる』これは非常に大きなことです。これまでは『労働安全衛生法ではOKなのに建築基準法ではNG』というダブルスタンダードの結果、違法な製品が一部、未だに販売され続けていました。この解消に期待が持てます。また、ユーザーにとっては確認申請が不要になる点や法令点検から自主点検へ切り替えられるといったメリットがあります。一方、簡易リフトから垂直搬送機に大きく舵を切ってきた当社としては、なぜ今、突然再考されたのか疑問もあります」

――改めて簡易リフトの位置付けについて教えてください。

「簡易リフトは労働安全衛生法で定められているエレベーターのことで、床面積が1平方m以下、『または』高さが1.2m以内の製品のことを指します。一方、建築基準法で同様の規格サイズに当たる小荷物専用昇降機は床面積1平方m、『かつ』高さ1.2m以内の製品を指します。過去には簡易リフトの規格を遵守することが一般的であった時期があり、小荷物専用昇降機よりもサイズ自由度の高い簡易リフトがたくさん出回っていました。しかし、エレベーターでの人身事故が多発した20年ほど前から国交省による本格的な指導が始まり、小荷物専用昇降機のサイズ規定を外れる簡易リフトは『違法化』状態にあるとの認識が一般的となっていました」

――鈴木製機さんは垂直搬送機のイメージが強いです。

「実は当社も簡易リフトが市場で主流であった時代には簡易リフトをラインナップしており、年間1000台以上手掛けるトップメーカーでした。しかし、『お客様に安心・安全に使っていただける製品を届けるために、法的に問題のあるものはやらない』という方針から垂直搬送機に軸足を移してきました。垂直搬送機は荷物の出し入れをコンベヤなどで自動化・機械化した機械で、人が昇降路内へ侵入することがないため安全性がより高い製品です。そのため、労働安全衛生法と建築基準法いずれの適用からも外れています」

■簡易リフト市場に再参入

――今回の改正を受けて簡易リフト市場に再参入する。

「そうですね。すでに当社HPやメルマガなどでは発信していますが、再び簡易リフト市場に参入することに決めました。垂直搬送機は簡易リフトの技術をもとに製造された製品ですので、かつてトップメーカーであった頃の技術力やノウハウは健在だと自負しています」

――市場からの反応は。

「すでにお話をいただいています。ここ10数年ほど『簡易リフトはやらない』とお伝えしてきたので、当社には情報が回ってきていなかっただけで、グレーであった間にも簡易リフトニーズは思ったよりもあったようです」

――垂直搬送機との使い分けはどうなりますか。

「垂直搬送機は寸法などの規制がありません。より大きな装置とはバッティングしませんが、小さなサイズの製品では重なる部分が出てきます。その際、垂直搬送機は搬入出用の固定設備が必要になるため設置スペースや価格面で不利になる。ある程度簡易リフトへの移行は進むと見ています」

――適法化の影響は既設の設備にも及ぶようです。入れ替えを検討してきたユーザーの計画見直し懸念もあるのでは。

「そうですね。現場の営業マンなどにはその点しっかり説明をするように伝えています。今お使いのものをそのまま使い続けられるのが一番です。一方で、そもそも簡易リフトでもない違法な昇降機を知らず知らずのうちに使用している現場も多々あります。判断が難しいと思うので、不安な場合はぜひご相談ください」 

――今後の展開について。

「今回の適法化で市場は広がると思います。一方で、まだまだ解釈が曖昧な部分は多く、グレーな製品や危険な使い方が出回ってしまう可能性もあります。だからこそ、当社としては市場がグレーな方向に傾かないように、安心かつ安全に使える設備と正確な情報をユーザー様にお届けすることが責務だと考え取り組みを進めていきます」



(日本物流新聞20251210日号掲載)