インタビュー
古河電工メタルケーブル 営業本部 営業企画部 アルミ拡販チーム 課長 佐藤 仁 氏
- 投稿日時
- 2025/12/11 15:33
- 更新日時
- 2025/12/11 15:47
古河電工、電線盗難で銅からアルミ交換需要急騰
高施工で倉庫・工場でも採用増
アルミ導体ケーブル需要が急伸している。背景には太陽光発電施設での相次ぐ銅導体ケーブル盗難がある。中でもアルミ導体ケーブルのパイオニア・古河電気工業(以下、古河電工)の「らくらくアルミケーブル」には注目が集まっており、市場の開拓者であると共に業界のスタンダードとなりつつある。古河電工メタルケーブル 営業本部 営業企画部 アルミ拡販チーム 課長の佐藤仁氏に話を聞いた。

――多発する太陽光発電施設での銅導体ケーブル盗難によって、貴社の「らくらくアルミケーブルシステム」の需要が増えているようですね。
「そうですね。当社の『らくらくアルミケーブル』上市当初からは被覆材が銅CVケーブルとは異なる青色をしており識別しやすく、犯罪の抑止につながると2022年ごろから採用が急増しています。犯罪集団の中でも青色のケーブルは盗んではいけないとの認知が広がっているようで、太陽光発電施設ではケーブル=青いアルミがスタンダード化しています」
「現在、FIT制度ができた当初に設置された太陽光発電施設で、パワコンやパネルをより性能の高い機器への入れ替え(リパワリング)が増えており、同時にケーブルもアルミへの見直しが進んでいます。来年ぐらいまではこうしたニーズは多いと思います」

らくらくアルミケーブル
――そもそもなぜ太陽光発電施設の銅導体ケーブルが狙われるのか。
「背景には銅価格の高騰があります。20年ごろには1トンあたり70万円ほどだった銅価格が、現在同170万円ほどで推移しています。5年で約2.5倍。盗難対策がほぼされていなかった野立ての太陽光発電設備が真っ先に狙われました。警察庁の調査によると23年には全国で5千件以上の盗難被害があります、警察の取締りや施主様の対策が強化されています 」
「それに対し、アルミは価格が銅の3割程度。ケーブルを盗んだのちに皮を剥く手間賃なども考えると採算が合わない。また、日本国内では純アルミをリサイクルするスキームが定着しておらず、流通量も少ないので足がつきやすいようです」
――具体的にどのくらい伸びている。
「銅価格が上がり始めた21年から24年まで倍々に右肩上がりで成長してきました。25年は更に高い目標を掲げて日々客先ニーズに応える努力をしています」
■物流倉庫や工場からも好反応
――アルミ導体ケーブルは硬くて取り回しにくいといった印象もありますが。
「当社製品が出てくるまでのアルミ導体ケーブルは硬く曲げづらく、熟年の職人さんはアルミ=硬いというイメージを持たれている。らくらくアルミケーブルは、この取り回しの悪さを解消し銅よりも比重の軽い特性を活かすことで、現場の省力化に寄与する製品として18年に上市しました」
――太陽光発電設備向けで開発したわけではない。
「そうです。2024年問題や2030年問題で発生すると予測された労働力不足を見越し、現場の省力化に寄与できる製品として開発しました。実際、導体や絶縁材に独自の工夫を凝らすことで、銅導体ケーブルと比べ絶縁体の剥ぎ取りに必要な力は2分の1に、曲げる際に必要な力も3分の1と優位性があります」
――デメリットはありますか。
「銅と比べると導電率は低いので、ケーブルサイズをワンサイズ程度アップしないといけません。付随して、ケーブルラック幅や管路径も見直さなければならず、ビルやマンションなど居住空間を大きく取りたい現場には向きません。また、サブコンさんや工事店さんでも敷設した経験のない方が多いですし、接続する機器側にも少し工夫が必要です」
――対策は。
「太さに関してはどうしようもありませんが、当社製品が『システム』を謳っているのはアルミ導体ケーブルに付随する諸課題を解消するソリューションとして提供しているからです。アルミ導体ケーブルは銅に比べデリケートで、施工方法を誤れば電食によって発熱・発火の危険もあります。当社の製品は万が一の事故も起こらないように電食対策を幾重にも行なっており、ケーブルに加えて端子や工具も開発、現場での作業レクチャーも含めてパッケージとして提案しています。全国で2500件を超える施工実績のうち、当社製品を起因とする事故は一度も起こっていません」
――施工方法にはどのような工夫を。
「電食は導体が顕になる端子の接続部で発生しやすいので、ここに工夫を施しています。例えば、絶縁体を除去したのちの剥き出しになったアルミ導体ケーブルは導体が酸化被膜で覆われています。これを除去せずに電気を流すと抵抗値が上がって発熱してしまいます。当社では、被覆時に酸化皮膜も除去できる専用工具『アルミらくらくソケット』を開発するなど、アルミ導体ケーブルを安全かつ手間なく施工ができる工夫を施しています」
――太陽光以外の分野の状況は。
「セグメントでいうと太陽光は昨年の売上げの内半分以上を占めています。他には物流倉庫や工場、複合施設など、比較的空間を取りやすい建物で採用が進んでいます。大手自動車メーカーさんの工場での施工事例などもあります」
――なぜ採用が増えているのか。
「やはり工事店さんも労働力不足で、現場も工程単位の人工を削減できたり工期を圧縮できたりするソリューションには非常に関心が高いです。ケーブルは人の手で引いて敷設するため、人数がいないと施工できない。当社のシステムは軽いし取り回しもしやすいので、少ない人数で素早く施工を済ませたい現場でご活用いただいています」
――今後の展開について。
「他社さんも参入してきていますが、アルミ導体ケーブルのパイオニアは古河電工だと自負しています。まずは、ユーザー様に安心安全にご活用いただける製品をしっかりと提供していきます。その上で、30年の売上50億円を目指し、太陽光発電施設はもちろんのこと、新しい市場の開拓も図っていきます」
(日本物流新聞2025年12月10日号掲載)