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インタビュー

コンバム 國松 孝行 専務

投稿日時
2025/11/26 11:32
更新日時
2025/11/26 11:36

近未来の物流・製造現場へ新提案
大型電動吸着ユニット、吸着痕ゼロの真空パッド

真空・吸着機器メーカーのコンバムは、社名変更を経てブランド再構築期の真っただ中にある。今年の国際ロボット展に向け、同社はこれまでにない強気のキャッチコピー「STICK WITH CONVUM」を掲げ、ブランド再構築と市場開拓を同時に進める構えだ。国際ロボット展では、未来の物流や製造現場への意欲的な提案が準備されている。同社の國松孝行専務に出展コンセプトや展示品の詳細、さらには吸着ハンドリングが切り開く未来について聞いた。

――今年のロボット展におけるキャッチフレーズについてお聞かせください。

「STICK WITH」は「使い続ける」「固執する」といった明確な意思を伴う表現になり、意訳すると 「こっちに付いて来い」「うちを使い続けよう」という、かなり強いメッセージになります。つまり「STICK WITH CONVUM」は「他社ではなくコンバムを選ぼう」という挑戦的な表現なんです。少々攻めたコピーですが、社名変更を経た今、ブランドを再定義するタイミングで踏み込むべきと判断しました。

このコピーを全面に印刷したバッグを国内外の来場者に配布し、「この会社は本気だ」「コンバムは変わった」と感じてもらえればと考えております。

――展示会の出展コンセプトは。

当社は「今の需要」に寄せるだけでは戦えないと考えています。吸着ハンドは、大手メーカーが大量の営業網を持ち、改良品はすぐにコピーされる世界です。だからこそ、「近い将来、こうなるはずだ」という世界線を先に描き、その未来に必要となる製品を先に作る。これが当社の戦略です。

今回のロボット展は、その思想を全面に出す展示にしました。従来のように小さな新製品を机に並べるのではなく、「未来のロジスティクス、未来の工場で吸着が果たす役割」を、大型モニターやデモ機と共にダイナミックに提案します。

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会場ではEVトラックへの搭載イメージを披露する

――物流に向けた提案についてお聞かせ下さい。

今回提案するのは、世界最大級の大型電動吸着ユニットです。ロボットのハンドリングは従来、エア駆動が主流でした。電動タイプは小型製品こそあれ、大荷重を扱える大型は市場にほとんど存在しません。

そこで当社はEVトラックにロボットが搭載され、荷揚げや荷下ろしを自動で行う未来を想定し、協働ロボットと大型電動吸着ユニットを設置し未来の荷役シーンをモニターで提案します。

こちらはすでに特許を出願済みで、ロボットメーカーや自動車メーカーとの共同開発も視野に入れています。担い手不足が深刻な物流現場の省力化・自動化に向け、具体的な提案ができると考えています。

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大型ワークを把持できる真空吸着システム

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形状を問わない把持が可能

■薄板鋼板をへこませない革新パッド

――モノづくり業界に向けた提案は。

薄板鋼板を「へこませずに持てる」吸着パッドを新開発しました。EV化や軽量化の流れで、自動車車体の鋼板はますます薄くなっており、従来の真空吸着パッドでは座屈や吸着痕が残ってしまい、不良の要因になっていました。そこで当社は、ゴム材質の硬度、形状の内部構造、変形の力学バランスをゼロから見直し、試作を重ねて形状特許も出願しました。

現在、複数の大手車体メーカーで評価試験が進んでおり、今回が初公開となります。

――食品業界向けの取り組みも本格化していると聞きます。

食品業界の自動化は、今後最も伸びる分野の一つです。しかし、実は食品に直接触れていい吸着パッドは、市場にほとんど存在しません。材質が安全でも「パッドそのものの製造環境がクリーンでない」ケースも多い。

当社は1億円を投資して三品業界向け製品専用のクリーンルームを設置し、原料の保管から成形、洗浄、梱包まで一貫してクリーン環境内で行える体制を整えました。こちらは食品のみならず、医療・医薬品にも対応可能な製品を製造できます。

――実際の採用事例も増えているそうですね。

従来、自動化が難しいとされてきた冷凍唐揚げのピッキングやカップ麺具材(粉末・かやく)の自動投入、ホタテ殻への稚貝セット工程、鶏枝肉の自動さばきラインなど、多くの食品工場で採用が始まっています。

食品は「何か起きたら終わり」の業界ですから、クリーン生産の安心感が強い武器になると考えています。

――なぜこれほど尖った製品開発を続けるのでしょうか。

ロボットが増えれば増えるほど、吸着のニーズは確実に増えます。掴む方法は爪か吸着の二択で、食品・物流・自動車など多くの領域で吸着がより有利です。それゆえ、当社製品の市場は今後も伸び続けると確信しています。私たちは営業マンの数でも販売網でも、大手には勝てません。だからこそ他社が対応できないモノづくりを先んじて行い、「困ったときに頼って頂ける存在」を目指しています。



(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)