インタビュー
トライエンジニアリング 専務取締役 岡 丈晴 氏
- 投稿日時
- 2025/11/25 14:31
- 更新日時
- 2025/11/25 14:34
ロボットによる切削・研磨・FSW・積層造形
造形と切削・研磨をセットにして市場を拡大
ロボットを使った切削・研磨・FSW(摩擦撹拌接合)に金属積層造形を加えたトライエンジニアリング。これら新しい事業は、従来は売上の大半を占めたヘミングシステム(自動車ボンネット外周の折り曲げ装置)と同程度まで成長してきた。その深化形のニーズを国際ロボット展で問う。

――景気はいかがですか。
「右肩上がりで推移しています。2025年度売上高は前年度比2割増の過去最高を予想しています。自動車業界は悪いと言われながらも、当社では横ばいか若干プラスで推移しています。むしろ増えているのは自動車以外の産業で、最近当社が取り組んでいる航空宇宙産業や鉄鋼、造船関係向けです。やはりどこも人手不足で、これまで自動化があまり進まなかった業界でロボットによる自動化を進めたいという話が増えています。かつて売上の95%を占めた自動車向けのヘミングシステムは5割ほどになり、ロボットマシニング、ポリッシング、最近始めた金属積層造形が伸びています」
――FSWはいかがですか。
「足踏み状態です。売れてないわけではありませんが、用途として多いのは電気自動車のバッテリーケースやギガキャストの加工になり、トランプ関税も相まってこの分野の需要はいま上がっていかず積極的な投資に結びついていません」
――国際ロボット展で何をアピールされますか。
「先日のMECTでも出品しましたが、ロボット加工の新しい形として小型ワーク向けの『ロボットマルチプロセッシング』を出品します。ロボットがワークを把持したまま穴あけ、面削、研磨、計測などを連続して行うものです。ロボットを使った金属積層造形『WAAM(ワイヤアークアディティブマニファクチャリング)』も大型ワーク向けに紹介します」

アームが掴んだワークをドリル、タップ、ベルトサンダーなどに順次押し当てて加工する「ロボットマルチプロセッシング」
――WAAMとしては以前、水素燃料タンクの造形を披露されました。
「そうです。引き続きその受注を続けますが、同時に課題を感じています。金属造形をするときの造形物の強度です。従来の圧延材やアルミダイカストなどの圧力をかけて作るものに対して、WAAMは金属を溶融して冷やして固めただけのものですから内部強度が十分でないことがあります。それを改善する仕組みを取り入れようとしており、まずはアイデアの提案です」
――どんなアイデアですか。
「WAAMには圧縮の工程がありません。そこで積層して金属が熱をもっているうちに当社ヘミングシステムの技術であるローラー転圧を組み合わせ、内部組織を緻密にできるのではないかと考えています。効果の検証は大学の協力を得て行うつもりですが、もう少し先になると思います。大型製品における金属造形はロボットで行いやすく、今後広がっていくと思います」
「金属積層造形と聞くと、これまで当社が行ってきたロボットによる加工から離れるように思えるかもしれませんが、造形した表面品質は必ずしも良くはないので、切削や研磨との組合せで成り立ちます。実績のある水素燃料タンクもロボットマシニングを組み合わせたシステムになっています。ですから金属積層造形を広げることは、当社が従来から手がけるロボットマシニングやポリッシングの売上増にも繋がると見ています」
■新型ロボット×FSW
――国際ロボット展では以上の2つを紹介されるのですね。
「あともう1つ、ロボットFSWも紹介します。ファナックさんが今春、高剛性ロボットの新型『M-810/270-27B』(270キロ可搬)をリリースされました。これと組み合わせた新型のロボットFSWを初披露します。用途としてはバッテリーケースの加工などで、従来から当社が進める適応領域と変わりはありません。ただ新型ロボットとの組合せによって、従来ロボットに比べて加工品質や生産性がどれくらい向上するのかをロボット展出展後に検証していきたいと考えています」
――課題はありますか。
「少量多品種への対応というところで、プログラムレスにしたいとか、計測結果をフィードバックしたいという話が非常に増えています。当社が進めるロボット加工の市場をさらに広げるには、1回ずつロボットのプログラムを作るのではなく、自動で判別してパスが生成されるようなシステムを構築できるようにしていかなければなりません。それには3次元カメラなど様々な機器を用いる必要がありますが、何をどう組み合わせたら最も良いシステムになるのか。現在市場にある機器だけで足りない部分があれば、それをどうやって補うのか。そんなことを含めて提案していきたいですね。製品のばらつきを吸収して製品ごとに適した加工をすることはある程度確立されつつありますが、全く違うものがランダムにやって来る場合にはまだまだ課題があります」
トライエンジニアリング株式会社
1974年創業、社員48人
愛知県名古屋市守山区花咲台2-601
ロボットベースで年間50-80台納入
自動車メーカーの技術部門出身者が創業。金型や治具をつくる鉄工所からスタートし、コンクリート研磨機などの専用加工・組立装置を手がけるように。1991年頃からロボットを組み込みヘミングシステム(自動車ボンネット外周の折り曲げ装置)として納入。一時これが売上の95%を占めたが現在は5割ほどに。新事業としてアーム先端に持たせた装置での切削、研磨、FSW、金属積層造形に注力する。本社・テクノヒル工場のほかライフバレー工場も(2022年4月本格稼働)。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)