インタビュー
ダイフク 常務執行役員 イントラロジスティクス事業部門長 鳥谷 則仁 氏
- 投稿日時
- 2025/11/10 09:00
- 更新日時
- 2025/11/12 16:40
インド新工場で好調の自動倉庫生産、将来は流通需要も見込む
面積を従前の4倍に拡げたイントラロジスティクス(一般製造業・流通業向けシステム)事業の新工場を、インド中南部ハイデラバードに開設したダイフク。インドでは旺盛な内需を背景に製造業が成長しており、ここ数年で自動倉庫のニーズが伸長。新工場はこれまでできていなかった自動倉庫を生産することで、需要をタイムリーに捉える狙いがある。同事業部門を率いる鳥谷則仁常務執行役員は「(工場新設は)今後の需要を見越した先行投資」とし、将来的に見込める流通業向けのマテハン需要もターゲットに据える。

【鳥谷(とりや)則仁】1988年入社、大型のプラント案件を手がける部署に配属されたのち2014年FA&DA事業部(現イントラロジスティクス事業部)システムソリューション部長、2016年FA&DA事業部営業本部長、2017年執行役員、2023年常務執行役員 イントラロジスティクス事業部長(現任)、2025年イントラロジスティクス事業部門長(現任)
――ハイデラバードに新設したイントラロジスティクス事業の工場が今年4月に稼働しました。工場新設の背景は。
「イントラロジスティクス事業部門としてインドに本格的に進出したのは、ムンバイに営業拠点を設立した2016年です。当初は日本からの輸出で対応していましたが、19年にVega Conveyors & Automation Private Limited(現 Daifuku Intralogistics India Private Limited)を買収し、現地生産を開始しています。Vega社はコンベヤ製造が中心の企業で、自動倉庫は引き続き日本からの輸出で対応していましたが、ここ4、5年で建築塗料や自動車のタイヤ、さらには菓子類を含む食品など製造業における自動倉庫のニーズが拡大しました。今回の工場新設は自動倉庫の生産も目的としており、現地生産により品質の安定と納期の短縮、コスト削減を図ります。ローカルの競合マテハンメーカーもありますから、今後の需要を見越した先行投資として、自動倉庫も生産できる体制を整えたということです」

インド中南部ハイデラバードに新設した新工場の外観。敷地面積は13万3020㎡で投資額は約40億円
――自動倉庫の需要が伸びた背景は、製造業各社の生産量が上がったためですか。
「そうですね、内需が増えています。人手不足という背景ではなく、原材料や製品の保管を従来の平置きや固定棚から自動倉庫にすることで、生産の効率化や管理の最適化を目指すのが狙いです。インドは現状、サプライチェーンが十分に発達していないため、メーカーが自ら在庫を持って必要なタイミングで出荷する必要があります。こうした背景から自動倉庫の需要が増えています」
――新工場も視察されたと思いますが、現地の印象は。
「停電や未舗装の道路はまだ多いですが、人口が増え経済も成長しているので、インフラは今後も少しずつ改善を続けるのでしょう。かつての中国のように一気に発展するスピード感ではなく、もう少し時間がかかるように感じます。一方でモディ首相が掲げる『メイク・イン・インディア』による、内需拡大の国策もあり、人口規模を鑑みれば我々の製品を販売するチャンスはある。マテハン市場の規模も、イントラロジスティクス事業の売上も中国と比べまだまだ少ないものの、あれだけの人口に旺盛な内需が伴えば必ず自動化・効率化のニーズが生まれる見込みがあり、早期に工場を新設すべきだという思いがありました」
――自動倉庫が本格的なマテハン需要到来の端緒だとすれば、次はどんな設備に期待ができますか。
「今は保管用途のパレット自動倉庫が中心です。今後は配送先がもう少し細かい単位になり、パレット荷姿の製品をピッキングし、仕分け、配送する工程の自動化が進み、ケース系の自動倉庫や仕分け装置、ピッキングシステムの需要が拡大すると見ています。かつて日本もメーカーが在庫を持ち自ら物流センターを建てるのが主流の時代がありましたが、今は3PLを中心とした流通形態に変わっています。製造業が発展すればインドでもいずれ流通分野の需要が生まれるはずです。また、前提条件として各家庭への冷蔵庫の普及や輸送設備など様々な課題をクリアする必要はありますが、日本や諸外国と同様に冷凍食品の需要も望めます。長い目で見れば製造から流通、そして冷蔵・冷凍へという流れになると予想しています」
■北米に次ぐ成長エンジンへ
――新工場についてお聞きします。生産する自動倉庫は国内と同じ仕様ですか。
「仕様も品質も基本的には同じです。荷姿や要求は国による特色こそあるものの、その国の規格に準拠すれば現在ダイフクが手掛けるハードでほぼ対応できます。ただ今はコア部品を日本から調達しており、現地調達の割合を高めるなどコストダウンに向けた改善の余地はあります」

工場には自動倉庫などの自動化システムを導入
――インドで生産した製品の周辺国への輸出は考えているのでしょうか。
「まずは地産地消です。イントラロジスティクス事業部門では、日本のほか北米、中国、タイにも製造拠点を持っており、それぞれ基本は地産地消ですがタイは周辺国にも輸出しています。インド工場の生産品も将来的に第三国へ輸出することも検討しています」
――新工場の稼働状況は。
「スムーズに稼働しており自動倉庫の生産もすでに開始済みです。生産スペースは従前の約4倍になりましたし、周辺の土地も確保しており、需要の拡大に合わせて工場を増設する余地もあります」
――国内マテハンメーカーは多くが海外市場の開拓に苦戦している印象で、貴社の海外展開の積極姿勢は異色に映ります。
「日系企業だけをターゲットに海外進出するのは限界があります。現地企業をターゲットに含めると色々な難しさがあり、躊躇する面もあるかもしれません。我々は日系企業だけでなく、現地企業の攻略にも積極的にチャレンジしています」
――グローバル市場におけるイントラロジスティクス事業の成長を、企業全体の成長の鍵に据えています。インド市場の位置づけは。
「最も注力しているのは北米です。現状の売上も多く、さらなる成長も見込めます。中国にも早期に進出しましたが、今の経済状況を鑑みると北米に次いで今後の伸び率が高いのはインドだと見ています。新工場の生産能力を最大限に生かしてインド市場での事業拡大に努めてまいります」