インタビュー
コロナ 上席執行役員 営業本部長 山腰 聡明 氏
- 投稿日時
 - 2025/10/27 10:03
 
- 更新日時
 - 2025/10/27 10:08
 
成熟市場に挑む、暖房から「つぎの快適」創造へ
暖冬や住環境の変化を背景に、暖房機器市場が転換期を迎えている。石油暖房で培った技術とブランド力を強みに、快適の新しい形を模索するのがコロナだ。同社・上席執行役員 営業本部長の山腰聡明氏に需要動向と今後の方向性を聞いた。

――近年の暖冬などの影響で、暖房機器市場が変化しているといわれます。現状をどう見ていますか。
「冬が短く暖かくなっていると共に、高気密・高断熱住宅が増え、電気暖房やエアコンだけで冬を越す家庭も出てきました。一方で、電気料金の上昇を受けて『燃焼暖房のほうがコスパがいい』と見直す動きもあります。石油暖房機ならではの暖かさを好まれる方も多く、市場は減少傾向ながら極端に減ることはないと考えています。また、浴室などでのヒートショック事故をきっかけに、住空間の室温差を低減したいといったニーズも高まってきています」
――石油暖房機が支持され続ける理由はどこにありますか。
「やはり『パワフルで、じんわりとした暖かさ』です。エアコンのように風で空間だけを温めるのではなく、石油暖房機は輻射熱で壁や床などの躯体まで暖めます。エアコンを使うと高気密・高断熱住宅では空間全体が速く温まる反面、エアコンの室温センサーが『十分に暖まった』と判断して運転を止めてしまうことがあります。この状況では、壁や床の内部は冷たい状態なので、時間が経つとそこから冷気が戻ってきてしまう。結果的にエアコンが頻繁に作動し、省エネや快適性を損ねます。猛暑を理由にエアコンの活用が進んだと言われる北海道でも、冬場は燃焼暖房を使用している家庭が多いです。高断熱化の進展は、燃焼暖房の新たな価値や役割が再発見されるきっかけになると見ています」
――一方で、脱炭素の流れの中でエコキュートやヒートポンプ暖房にも注力されていますね。
「はい。エコキュートは当社が2001年に世界で初めて商品化してから24年になります。今は新築だけでなく買い替え需要が伸び、業界全体が前年を割れる中でも当社は上回っています。昨年度にはエコキュートの生産を行う長岡工場に当社史上最大規模の投資を行い、生産の効率化を進めました。暖房事業を継続しつつ、ヒートポンプ事業を次の柱に育てていきます」
■認知拡大に「楽しさ」「個性」追求
――課題はありますか。
「認知度でしょうか。北海道から北陸エリアの寒冷地の比較的年齢層の高い方の間では当社をよく知っていただいています。一方で、関東から九州にかけて温暖な地域では当社をご存知いただけていないこともある。九州勤務時代にその認知の差を実感しました。当社はエアコンや給湯機も扱っており商品がないわけではない。どう認知を広げていくかが課題になると思います」
――課題への対応は。
「例えば、24年3月に立ち上げたアウトドアブランド『OUTFIELD』では、10月8日から黒を基調に炎を際立たせる新シリーズ『ナイトブラックエディション』を公式オンラインストアで販売しています。デザイン性を重視する層に訴求した製品展開は、幅広い世代から関心をいただいています。また、メーカー同士のコラボ商品も好評で、限定モデルが即完売するケースもあります。当社の製品を『機能』だけでなく『楽しさ』や『個性』で選んでもらえるよう工夫し、これまで当社製品と縁が薄かった層との接点を増やしていきます」
――今後の方向性を教えてください。
「当社は1955年に加圧式石油ストーブを日本で初めて開発・販売して以来、『マイナスをゼロ』にする商品の供給を通じて社会に貢献してきました。こうしたお困りごとは海外でも同様ですので、中東や韓国などを中心に海外に向けて提案を加速していきます。一方で国内に向けては、暮らしをもっと豊かにする『ゼロをプラスへ』を実現していきたい。さらには『プラスをひろがりへ』繋げていけるよう取り組んでいきます。暖房機器は成熟市場に見えますが、まだまだ変わる余地があります。お客様にとっての『つぎの快適』をどうつくるか。それが私たちの挑戦です」

10月8日から公式オンラインストアで販売しているアウトドアブランド『OUTFIELD』の黒を基調に炎を際立たせる新シリーズ『ナイトブラックエディション』
(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)