インタビュー
専用機と複合加工機で商域拡大へ
- 投稿日時
- 2022/03/10 15:03
- 更新日時
- 2024/08/19 13:21
FUJI 取締役 常務執行役員 マシンツール事業本部長 営業部部長 江崎 一 氏
2021年に複合加工機分野に参入したFUJI。従来の受注生産的なビジネスから、計画生産を取り入れたアドオン型のモノづくりへ移行するなど大胆な変革を進めている。1月には豊田事業所内に工作機械の新たなショールームも誕生。こうした様々な動きについて、マシンツール事業本部長 営業部部長の江崎一取締役常務執行役員に話を聞いた。
――足元の景況感は。
「工作機械業界全体としては回復基調ですが、我々の主力である国内の自動車業界大手、いわゆるティア1・2の動きはまだ実感としてやや鈍い。景気を下支えする補助金の対象はティア3・4中心ですから、そうした恩恵がやや薄いのも影響しているのでしょう。とはいえ中国は昨年のGW頃に足踏み感があったものの、以降は継続して回復基調。米国は持続的かつ緩やかに回復している実感がありますから、投資マインドは総じてそう悪くない。自動車業界でも投資機運は戻りつつあり、その牽引役はEVです」
――現状のEV需要はやはり海外中心ですか。
「ええ。EVがドライバー役を果たしているのは米国や中国で、そうしたEV動向が要因となり、昨年決まらなかった案件が今期に受注に至るケースが多く見られました。日本でのEV関連投資はまだこれからですが、例えば日系メーカーの中国工場などで動きが活発化しています。実際、日系メーカーの引き合いが中国経由で入るケースも増えている印象です」
――中長期的な方向性としては。
「少し先の目線では、大量生産・工程分割から多品種生産・工程集約へと移行する流れが業種を問わずますます加速するとみています。大量生産から多品種生産、工程分割から工程集約まで多岐にわたるユーザーをカバーするためには機種拡充が急務ですが、昨年発売した複合加工機『GYROFLEX』は我々のもつ様々な技術を集約してパッケージ化した大型機。ティア1・2で中量以上の生産量を持つユーザーがターゲットで、サイズ的にティア3・4のユーザーに少しそぐわない面もあります。そこでGYROFLEXの機能をブレイクダウンする形で既存機種に搭載するのか、もう少し小型の複合加工機の新シリーズを立ち上げるのかを、現在見極めているところです」
――MECTではGYROFLEXの実機を展示しつつ、横形NC旋盤「TNシリーズ」のバージョンアップも紹介されました。そうした複合加工機以外の開発動向は。
「MECTでは案内だけでしたが、その後同シリーズの次世代機『TNⅡシリーズ』の実機が完成し、昨年末に完成した豊田事業所内のショールームで展示を行っています。NCを最新モデルに更新したほか、新操作盤を搭載しタッチパネル式となります。将来の画面表示の変更、ソフトウエア改良にも容易に対応できるなど使いやすさが向上しました。そのほか対向2スピンドル旋盤『ANシリーズ』のバージョンアップも予定しており、22年秋にリリースできるよう準備中。こうした既存機の更新も積極的に推進します」
■進む商流&生産改革
――複合加工機への参入と並行し、販売網の再編に注力されています。進捗状況は。
「販売網の再構築は昨年4月から進めており、取扱いいただける国内の商社も以前より大幅に増加しました。欧米でも代理店を再編しつつ、幅広い業界への拡販を念頭に自動車以外を得意とする商社との取引も開始しています。我々の製品は従来、1台1台作り込む専用機に近い形でしたが、商社の商流に乗せやすい標準的な製品の開発と、販売網の再編とを同時進行で進めているイメージです。また商社向けの簡易見積もりシステムも機種限定で運用開始しており、対象を随時広げます。これはオプションをある程度パターン化し、システム上でそれを選ぶわかりやすい形(3D WEB方式)。一方で新規の代理店を急拡大しましたので、今後は随時ショールームを活用した勉強会を開催し、商社のビジネスチャンス拡大に利用していただきたいと考えます」
――受注生産の専用機的なビジネスから、標準部分を作ってからオプションを加えて専用機的に転身させるアドオン型の計画生産を取り入れるなど、モノづくりの手法を大きく転換されています。こうした生産改革の動向はいかがでしょう。
「一連の生産改革を始めて約1年ですが、取組みとして定着してきました。部材の供給問題があり狙っていた納期短縮効果は見極めが難しいですが、問題が解消された際に効果を発揮できる下地は仕込めたと見ています。部材不足の表面化前には計画生産機仕様の機械を受注から2週間で納入した例もありますし、幾ばくかの特注対応を行う場合もこれまで半年だった納期を4カ月に短縮するなどリードタイム短縮を実現しています。今は販売網の拡大と再構築、その商流に乗せる製品の開発や生産改革、ユーザーや商社がわかりやすいパッケージ化などを全て並行して行っている状態。すべての取組みが有機的に絡み合い数字に表れる段階にはまだ至りませんが、引き続きそこに向け粛々と変革を進めます」
豊田事業所内に1月にオープンしたショールーム。白を基調とした近未来的な空間に工作機械がずらりと並ぶ。内覧会や商社向けの勉強会など様々な活用を予定する
(2022年3月10日号掲載)