インタビュー
キャドマック 開発部 部長 渡邉 光行 氏
- 投稿日時
- 2025/10/21 09:00
- 更新日時
- 2025/10/21 09:00
板金設計3DCADをサブスク・SaaS型に刷新
キャドマックは9月、板金設計3DCAD「MACsheet SEG5」を刷新し、新たに「MACsheet BBX」をリリースした。期間ライセンス(サブスク)化することで、導入コストを抑えながらクラウド化やAI対応など最新のITソリューションをタイムリーにユーザーに届けたい考えだ。開発を担当した渡邉光行氏に狙いや展望を聞いた。

――板金設計CAD「MACsheet SEG5」を刷新しました。その背景について教えてください。
「この10年程でクラウドや期間ライセンス(サブスクリプション)型のビジネスモデルが一般化し、セキュリティやライセンス管理の重要性も高まっています。MACsheet SEG5は2011年のリリース以来、1000以上のユーザーにご活用いただき、板金業界のDX化をサポートしてきました。ただ、買い切り型では初期投資の負担が大きいという課題がありました」
「特に当社のお客様には中小規模の企業も多く、業界のDX化をさらに進めていくには導入のハードルを下げることが不可欠でした。実際、SEG5で期間ライセンスをテスト販売した際の反応は良く、この数カ月で営業案件数が倍増しています。加えて、パートナーであるシーメンス社がSaaSを基本戦略に舵を切ったこともあり、私達もプラットフォームを刷新し『MACsheet BBX』として新たなスタートを切る決断をしました」
――ユーザーにとってのメリットは。
「最大のメリットはやはり初期投資の抑制です。BBXなら月数万円程度から利用可能で、合わなければやめることもできます。この『始めやすさ』は、これまでコストを理由に3D化やDX化に踏み出せなかった企業への後押しになります」
――既存のユーザーへの影響はありますか。
「ご安心ください。SEG5のバージョンアップ契約やXaaS契約に加入されているお客様は、追加の費用なく現在の契約の延長線上でBBXへ移行できます。これまで蓄積された設計データやCADの操作性もそのまま引き継がれるため、現場が混乱することなく、スムーズに最新環境をご利用いただけます」
■AI機能も追加予定
――BBXならではの機能はありますか。
「直近ではAIを活用した操作アシスタント(チャットボット)や、3面図から自動で3Dモデルを作成する機能の強化、これまで対応が難しかった厚板向けの曲げ逃げ自動補正機能などを順次追加していく計画です。BBXは『Bankin Base X』の略で、単なる作図ソフトではなく板金業界のDXを推進する基盤となることを目指しています。SaaS型である利点を活かし、常に最新のソリューションを提供していきたいと考えています」
――市場からの反応は。
「非常に好意的です。7月に開催された『MF―TOKYO 2025』や10月3日まで開催された『ものづくりワールド 大阪』では、『期間ライセンスならすぐにでも試してみたい』『この価格で使えるならいいですね』といった声をいただきました」
――今後の展望をお聞かせください。
「BBXを起点にデータ管理の『DataPocket』や生産管理の『Taktory』などと連携し、設計から生産までを一気通貫でつなぐ世界を実現します。さらに、当社は『CAD Free』『CAM Free』『Data Free』を掲げ、特定メーカーやソフトに縛られることなく柔軟にデータを連携できる環境を提供していきます。業界全体の生産性を引き上げるとともに、時代の変化に追従できる力強い日本のモノづくりの構築に貢献していきたいと考えています」
(日本物流新聞2025年10月10日号掲載)