インタビュー
オーエスジーダイヤモンドツール 代表取締役社長 神谷 伸顕 氏
- 投稿日時
- 2025/10/01 10:10
- 更新日時
- 2025/10/01 10:15
ダイヤモンド切削工具の立ち位置を変える
微細・精密加工に力を入れるオーエスジーグループの、核となるダイヤモンド切削工具メーカーのオーエスジーダイヤモンドツール(旧名:日新ダイヤモンド・滋賀県高島市)。昨年は蘭・Contour Fine Tooling B.V.をグループに加え、マイクロ・ダイヤモンドの事業継承を行うなど布陣を揃え、本格的なグローバル展開に臨む。神谷伸顕社長は「ダイヤモンド工具のデファクトスタンダードとなる」と果敢に挑む。

——昨年末、社名を56年続いた日新ダイヤモンドから変更されました。
「昨年7月にオーエスジーグループが、オランダに本社を置くContour Fine Tooling(Contour社)を買収し、10月にマイクロ・ダイヤモンド(神奈川県横浜市)を当社が事業継承しました。Contour社は単結晶ダイヤモンド工具を専門とし、マイクロ・ダイヤモンドは独自技術による極小径単結晶ボールエンドミル製造など、両者は『超精密』加工が強み。当社は天然ダイヤモンドや人工単結晶ダイヤモンドやPCD、PcBNなどの様々な切削工具を手がけ、3社の強みは互いに補完関係。旋盤加工の超精密工具はContour社、ミーリング加工ならマイクロ・ダイヤモンド。オーエスジーの「6C」シリーズやその他グループ会社を含めて、オーエスジーグループは世界で他にない総合ダイヤモンド工具メーカーとなりました」
——一般加工から半導体の精密加工、スマホのレンズなどの超微細精密加工まで市場全体をカバーできるように。
「ダイヤモンド工具はアルミでも樹脂でも一度の加工で鏡面仕上げが可能。面粗度が10ナノ以下と切削痕も残りません。高精度で高効率加工が可能な一方、まだ魅力を知られていない。現状を打破するために今春、ダイヤモンド工具の教科書兼カタログ『THE DIAMOND BASICS』を発行しました。前半は基礎知識や応用事例の解説など大学で教材として使えるレベルの内容をまとめ、後半に当社の標準品のカタログを掲載しています」
——ダイヤモンド工具といえば特注品が基本ですが、標準品に力を入れている。
「『N―BRAND』として、今年は17品目追加し現在28品目ありますが、さらに増やす方向です。単結晶ダイヤモンドの2枚刃エンドミルは世界でも当社でしかつくれません。ラインナップは径0.3~1.5ミリで、径0.3ミリの極小径は削るのには顕微鏡を見ながら20時間以上かかる。これでしかできない仕事があり、なにより研磨が不要。ダイヤモンド工具の位置付けを変えていくために標準化のラインナップに加えました」
「ダイヤモンド工具のハードルは『納期の長さ』、『価格の高さ』、そして『扱いづらさ』。標準品とすることで納期が短くなり、価格も下げられます。当社の人間が切削速度など条件もサポートします。カタログも都度見直し刷新し、多言語対応でWebでも発行していく。目指すのはダイヤモンド工具のデファクトスタンダードです」
——狙う加工ニーズはやはり微細・精密加工分野ですか。
「そこに留まらず、超硬工具を使っている現場をダイヤモンド工具に変えていくような新しい市場を作りたい。競合他社製品と競うなら価格だけの競争になってしまう。それより一緒に世界の市場を広げていきたい。当社の工場にダイヤモンド工具メーカーの方をお招きすることもあります」
「ダイヤモンド工具メーカーは中小企業が多く、手による研磨で生み出されるダイヤモンド工具は自動化できません。熟練工などスキルドワーカーが支えている。でもその価値に頼っていては世界に遅れてしまう。協力して全体で盛り上げていかなければなりません」
「最近ではナノ医療イノベーションセンターで、タンパク質の分子を10万個あるくぼみで選り分けるマイクロアレイチップの金型の5㍈の山を当社のダイヤモンド工具で削っています。医療だけでなく半導体や自動車のピストンやヘッドランプ、航空機ではCFRP切削など実に幅広く使われているのがダイヤモンド工具です」
■受注力強化が推進力に
――最近の景況感は。
「主に国内で昨年度比30%アップです。当社は12月スタートで半年を終えたところ。事業継承による連結の影響もありますが、Contour社やマイクロ・ダイヤモンドを加えたことで積極的に案件を取りに行け、受注の取りこぼしがなくなりました。標準品を揃えたことも営業の動きやすさに繋がりました」
——今後、注力するところは。
「量産工場の拠点が多い海外に力を入れたい。医療用レンズ関係だったら東南アジアなど、半導体産業は台湾、医療関係ではアメリカは順調なので、掘り下げる余地のある欧州を伸ばす考えです」

業界初という単結晶ダイヤモンドの2枚刃エンドミル「N-Double Square Mill」も標準品のラインナップに加える
働き方改革「魅せる工場」
帳票関係を完全ペーパーレス化し、マイクロソフトのTeamsやパワーBIを用いてDX化を果たした。掲示板を廃止し、現場の職人も含め一人1台タブレットを通して、出勤状況や受注日報、新製品のプロジェクトなど社員がすべて見られる。4台を数えるレーザー加工機は、夜間は無人で稼働が可能。DX化のモデル企業として年間200人もの見学者が訪れる。
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)