インタビュー
津田駒工業 取締役 工作機械関連事業統括 大河 哲史 氏
- 投稿日時
- 2025/09/30 13:23
- 更新日時
- 2025/09/30 13:25
小型加工機投入、積極開発で第3の柱創出へ
小型加工機「TSUDAKOMA i-CUBE」の本格販売を始めた津田駒工業。大河哲史取締役は「価格も含め既存の工作機械とはターゲットが違う」と語り、拡販やオプションの拡充に意欲を見せる。加工機以外では、汎用的な工作機械にレトロフィットして生産性を高める周辺機器を次々と開発。NC円テーブル・バイスに続く工作機械での第3の柱の創出に向けた歩みを進める。

――小型加工機「TSUDAKOMA i-CUBE」が本格販売に。異色の製品ですが開発経緯は。
「社内で3Dプリンター活用が盛り上がり、後加工が必要になりました。そこで加工機を内製したのが始まりです。最初は見るからに武骨でしたが改良を続け面白い設備になりました。100V稼働で極端な話、ここ(応接室)でも使える。エレベーターに入る寸法でキャスター付きなので2階にも運べます。加工前後のモデルで加工プログラムも自動作成します」

小型加工機「TSUDAKOMA i-CUBE」は100V電源で稼働し消費電力は1500W程度。毎分最高3万回転(オプションで同6万回転)の主軸を搭載しアルミやステンレス、チタンを加工できる
――工作機械の導入経験がない企業にも向く。
「大学やラボでの試作、3Dプリンターの後加工を想定しています。既に実績もあり、部品のバリ取り・面取り、面白いところでは溶接屋さんに肉盛りの除去で購入いただいた。我々も予想し得なかった需要先です。このように一般的な工作機械とターゲットが違い、定価も580万円。加工機を製造することで業界に余計な波風を立てる気はありません」
――気が早いですが今後の機種拡張の可能性も…。
「可能性はあります。例えばNC円テーブル(以下円テーブル)を軸に提案できる加工機もあるのではないかと。オプションはATCや傾斜円テーブル等ですがこれも拡充したい。ロボットでワーク交換ができれば中量生産が視野に入りますし、医療や宝飾品業界で使えるアプリケーションも準備したい。今はバイスと円テーブルの2本柱ですが、将来的に第3の柱を構築すべく加工機に限らず種を蒔いています」
――加工機以外では、汎用工作機械に後付けする製品の開発に積極的です。
「コロナ禍前は自動車の部品加工の投資が活発で、我々の売上も専用機向けの円テーブルの比率が非常に高かった。ただ専用機の先行きは厳しいと考え、汎用機にレトロフィットできる製品を強化してきました。汎用機の生産性を上げる必要があります。ターゲットは中~小規模の製造業。高額な自動化は難しいが生産性は高めねばならない。そこで機械に後付けする手動パレットチェンジャーをツダコマテクノサポート(TTS)が開発しました。機外で楽な姿勢で段取りでき、負荷が下がり稼働率は上がります。イニシャルも300万円ほど。東南アジアでも売れる可能性があります」
――MECTでもそうした製品群を披露しますか。
「MECTではそれに加え、我々として初のAWC(自動ワーク交換装置)を披露します。これと傾斜円テーブルと5軸バイスのパッケージで汎用的な3軸機でも最新の需要に応えられる。さらにオリジナルのワーク搬送装置も開発中です」
「また近年はギガ・メガキャストが注目され、一方でEVのユニット化が進みケース系の大型ワークが増えています。そこでMECTではワーク旋回径800㍉の大型円テーブルも出展予定。今まで500㍉が最大でした。更に開発段階ですが、BT30の小型機の『X軸ストロークを拡張する』提案も煮詰めています。テーブルが機械側面に飛び出すようなイメージで、横長のEVワークに小型機で対応できます」
――それは面白い。実に様々な開発が走っていますね。
「何が実を結ぶかですが、いずれも汎用機の拡張機能を高める製品。我々の工場自体、量産ではなくロット数もまとまりにくい自動化の難しい現場ですからそんな現場を助ける製品を提供したい。グループには先述のTTSに加え周辺機器のOEMを手がける共和電機工業があり、実は社内に様々な知見があって、そこに横串を一本通す発想です。何でもやろうと社内に言っています。開発も最初から100点を求めず、60点でもまず展示会で意見を聞こうと。最終的な方向性はそれを受けて決めれば良いので」
■円テーブルで旋削
――市況はまだら模様です。関税の影響は。
「北米は予期したほど落ちず、関税の妥結以降は動き出す案件が増えています。好材料はエネルギー関連。データセンター向けの発電機は大型で、円テーブルも大型のため工場の操業という観点では悪くありません。中国は停滞中ですが4月以降は大型案件が徐々に決まり出した。国内は今一つ。欧州はまだら模様という言葉がピッタリです」
――そんななか、EMOショーが開催されます。
「工程集約ニーズの強い欧州向けに、旋削機能を持つ傾斜円テーブル『TDB』をメインで出展します。自動車メーカーや宝飾品業界など主に海外から注文を頂いており、おかげさまで受注残もある。欧州市場が好む製品です。必ず売れると思います」
3つの駆動を操る
津田駒工業はボールドライブ、ウォームドライブ、ダイレクトドライブの3つの異なる円テーブルの駆動技術を持つ。「持ち味が違う駆動方式を組み合わせることで、複数の軸を持つ円テーブルでも顧客が求めるパフォーマンスを発揮できる」と言う。各駆動をユニット化して作り込むため、開発やカスタマイズも柔軟で早い。ちなみにボールドライブ駆動は構造上バックラッシュが存在せず、減速比を小さくできるため割出スピードが早い利点がある。
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)