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インタビュー

ダイキン工業 油機事業部長 大谷 徹 氏

投稿日時
2025/09/26 10:13
更新日時
2025/09/26 10:19

ハイブリッド油圧と冷媒規制対応商品を世界に

インバータを搭載したハイブリッド油圧ユニットや、工作機械の主軸やクーラントを冷却するオイルコンディショナー(オイルコン)・チラーを主力に取り扱うダイキン工業・油機事業部。環境や社会課題解決への貢献を重視したESG経営の加速、世界的に進む冷媒(低GWP化)規制等々、環境変化を捉え、空調や化学などダイキングループの総力を結集した技術力でグローバルに向けた展開を強化する。

――最近の景況感は。

「油機グループは工作機械やプレス機を中心とした産機油圧事業と建機油圧事業がありますが、特に、産機油圧事業に関しては、工作機械向け商品の受注の波が大きな指標の一つです。今年度は当初から国内や欧州の需要停滞が続くと想定していました。トランプ関税の方向性が定まったことも含め、下期の後半から設備投資が動き出し、徐々に戻ってくることを期待しています」

――その中でも動きが見られる地域は。

「工作機械メーカ様は従来から輸出されている北米と欧州に加えて、最近はインドで販売に力を入れており、インド向けの機械に搭載する油圧機器の相談は来ています」

――貴社のハイブリッド油圧ユニットは国内の工作機械に多く導入されていますが特徴は。

「機械を動かし安定した加工を行うためには精緻な制御が求められます。そのために、油の吐出、排出を瞬時に行い高精度な圧力制御を実現する、油機独自のモータ・油圧制御アルゴリズムを開発しました。工作機械向けの『エコリッチ』や大型産業用機械向けの『スーパーユニット』は50%超の省エネ効果がある上、低発熱で作動油量を低減でき、タンク容量の小型化や作業者への輻射熱も防ぐことができます。開発当初の2000年代は省エネに対する意識は今ほど高くありませんでしたが、生産設備の省エネ性能が見直されるにつれ機能や容量を拡充していき国内のシェアアップに成功しました」

ダイキン油機_AKZ43B.jpg

R32冷媒に対応するオイルコン「AKZ43B」

――加工精度を向上させるオイルコン・チラーにも力を入れています。

「インバータオイルコンは高速回転する主軸の冷却油や切削液の温度を安定させ、機械の熱変位を抑制することで、工作機械の高精度化に貢献しています。全機種にインバータを搭載していますので、ノンインバータ式に比べて省エネかつ高精度を実現しています。最近では米国の冷媒規制に対応した温暖化係数(GWP)の小さい冷媒(R32)を搭載したオイルコン・チラー『#Bシリーズ』をリリースし始めました」

――冷媒の開発・製造を自社で行っていることが大きなアドバンテージに。

「欧米を中心に冷媒規制(低GWP化)の動きが加速し、産業用オイルコン・チラーにも低GWP冷媒の使用を義務化する法律が制定されています。米国では来年1月(GWP700以下)、EUでは27年(GWP150以下)から開始されるため、グローバル展開する企業にとって対応は必須です。国によって規制のタイミングや、冷媒も様々。当社は冷媒をフルラインナップで揃え、お客様のご相談にタイムリーに対応できます。主軸の精度向上のために温度制御が重要なオイルコン・チラーは、冷媒の特性に合わせてコンプレッサーをいかに制御するか、微妙なコントロールにノウハウが必要。制御面には人材を含め特に力を入れており『オイルコン・チラーのNO.1技術者集団になれ』と発破をかけています」

■保全・メンテ工数削減で差別化

――メンテナンスや保全工数の削減に着目した製品も投入しています。

「エコリッチのタンクに搭載したセンサーと独自の色判定アルゴリズムで、作動油の劣化を色で判定、監視する機能(油状態センサー)は現場のニーズから生まれました。作動油の劣化を放置しますとポンプやバルブなどの油圧機器の故障に繋がるため、点検や交換が欠かせませんが、作動油の状態確認は目視で行われ製造や保全員の重い負担となっていました。油状態センサーは人によるバラツキが無く、常時監視が可能となります。また、オイルコン・チラー用フィルター『ラクフィル』は2週間に一度必要だった定期交換を年に1度のみとし、長期に渡って購入時の省エネ性を維持することができます」

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油状態を色で判定するセンサーがついたエコリッチR「EHU30R0702-40-M」

――今後のビジョンは。

「日本での成功事例を伝播させ世界に向けて大きく出ていきます。足がかりとして、22年にイタリアの油圧機器カー デュプロマティック社をM&Aしました。更には工作機械向け油圧商品の需要が大きいドイツ市場への参入に向け今年7月に老舗オイルコン・チラーメーカー デルタサーム社をM&Aしました。この2社を拠点に欧州市場における環境貢献といったニーズを掴み商品開発に即座に活かしていきます」

「油圧機器やオイルコン・チラーの技術開発はなお熾烈になってきています。グループのリソースや社外のネットワークを最大限に活かして戦い抜く覚悟です」




自社開発でAI活用


デジタルを活用した現場力の強化にも先進的に取り組む。製造のメンバーの声をもとに、データ分析と画像処理技術を用い、加工設備の刃具摩耗限界推定と交換時期を自動アナウンス。当日の出勤者の保有スキルにより最適な人員配置を組む「マルチフォーメーションAI」など自社で設計、システムアップ。急な人員シフトが必要になったときでも生産性を落とすことなく対応できるようになったと好評という。

(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)



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