インタビュー
明治機械製作所 代表取締役社長 福田 浩二 氏
- 投稿日時
- 2025/09/25 08:00
- 更新日時
- 2025/09/25 14:38
開発プロセス改善と潜在ニーズ掘り起こし市場開拓
コンプレッサーとハンドスプレーガンのエアー技術の両軸体制で、歩みを続けてきた明治機械製作所。昨年は創業100周年を迎え、今年は6月26日付で福田浩二社長が新たに就任。入社以来、技術畑のバックグラウンドを持つ福田社長は、次なる節目に向けて未来図をどう描くか。意気込みと今後の成長戦略を聞いた。

福田浩二(ふくだ こうじ)=名古屋生まれ。1986年に明治機械製作所大阪工場技術課入社。塗装機器事業の設計部署でキャリアをスタートし、技術開発部長を経て2012年から岡山工場長に就任。13年に取締役、23年に常務取締役。25年6月26日より現職。
——社長として重視するところは。
「本社のある大阪と生産拠点の岡山で、大阪はどちらかといえばファジー、岡山は真面目と社内の気風も異なりますが、入社時は大阪、その後岡山で12年間工場長を務めた私は両方を知っています。工場長の経験から言えば、組織にはしっかりとしたルールや規則が大切。経営の数字を把握し、感覚に頼らない判断を重んじます。期中の交代でもあるので、今期の経営計画に準じて従業員満足度の向上や、顧客第一主義の追求、スピード第一、労使協力姿勢は変わらずに進め、マーケティングや市場分析を改めて深掘りしたいですね」
——メーカーとして製販体制を強化する。
「時間をかけて開発した製品をうまく販路に乗せることが大切です。今まで役員だけだった会議を部長クラスにも広げて意識の共通化を図ります。製品開発サイドも、開発途中から営業の声を取り入れられるプロセスに変えていきます。そして技術者が現場に同行し、お客様の生の声に触れる機会を作っていきたい。私もかつて設計部の出身でしたが、お客様の声をヒントにした製品で高い評価をいただいたので。そこにも重点をおきたいですね。最近は販売店さんと現場に行き、高圧仕様のコンプレッサーの現場で据え付け、その場で改善したりという機会を持っています。IoTで遠隔監視によるトラブルメンテナンスなど、事前にトラブルを回避する仕組みに取り組んでいます」
——ニーズをつかむには開発スピードも重要です。
「製品開発のスピードも、工程ありきでなくスケジュール重視で進めたい。過去のリーマンショック時に社員の数が減りましたが、ほぼ当時の社員数のまま、今の売上は約20億円から42億円と倍になっている。若手社員の活躍で生産力が上がり、利益構造が変わりましたが、少数精鋭な分、リソース不足がリスク。ムダをなくし効率よく、いい流れを止めない体制を整えたいです」
——生産工程の改革にも手を付けられています。
「今苦慮しているのは、スプレーガンの鋳物ボディの品質チェックの工程です。今は人の目で行っていますが、判断基準のバラつきなど課題があり、画像処理で自動化したい。しかし箱から出して確認して、また梱包に戻す――、となると結局人の手を介すことになる。従来から取り組んでいるロボットによる組立工程の自動化も、光が反射するボディをうまく画像で認識できず、チョコ停がネックに。この辺りもAIなどの画像認識技術で乗り越えらえるのではと期待しているところです」
■市場の見直しと深掘り
——今後力を入れる施策は。
「高圧仕様のコンプレッサーを最近、ペットボトルのブロー成形用途で販売しています。高耐久で小型かつ、メンテナンス性に魅力を感じていただき、置き換え需要として動いています。レーザー加工機向けとしてもよく売れていますが、飽和状態の市場にも置き換え需要を受けて当社の製品が入っていけるということは、まだ気づいていない、攻め切れていない余地があるということ。そこを狙っていきたいです。ブースターコンプレッサーも特殊品ですが、全国的にPRを進めていきたいです。業態によって様々な現場に対応するため仕様や容量のバラエティが増え、5MPa以下の対応機種にも幅が出てきました」
「ハンドスプレーガンは海外比率を上げたい。低い時で5、6%でしたが今は9%近くになっています。SNSのプロモーションなどで新規の取引先が出来ており、国ごとのニーズや仕様に合わせた特殊品も手掛けようと。まずインドネシア向けに二輪車の補修関係の超小型タイプを今期中に開発したい。標準品から逸脱して明治の個性を出します。今後特殊品の比率をどんどん上げて、お客様の困りごとを解決していき、小回りが利くメリットを活かします」
「当社が長年取り組んできたLCC(Life Cycle Cost)は長寿命製品を使っていただき、生涯コストを削減するというコンセプトで脱炭素にも寄与します」
——社長としての目標は。
「経常利益10%を目標に伸ばしていきたいです。利益率は設備投資や従業員満足度にも繋がります。売上に走ると利益を削ってしまうケースがあるので、足並みをそろえてターゲットを絞り、新商品をチームで売っていきます」
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)