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インタビュー

ミノル工業 代表取締役社長 髙橋 功 氏

投稿日時
2025/09/25 13:00
更新日時
2025/09/25 13:05

技あり電設工具で常識を変える
内製化で高品質追求

1967年に創業し50年を超える国産電設工具メーカー、ミノル工業(大阪市中央区)。前田軍治商店に勤めていた髙橋貴氏が高橋興産を興し、製造部門として設立された同社。現社長の髙橋功氏は、電気配線や工事現場で求められる使いやすさと信頼性に応える新製品を追求し続けてきた。

——景況感はいかがですか。

「電設工具はあまり景気の波に大きく左右されず、ある程度一定です。例えば商業施設でテナントが撤退する時も原状回復するため使われますから。電力会社関連からも『電気工事に使う工具を新しく作れないか』と問い合わせがあります」

——出番が多い工具なだけに品質にこだわられます。

「電線作業にかかわる圧着工具は、圧着端子のかしめ不足や緩みが発熱や火災のリスクに繋がります。1丁ずつ同じ品質と加工状態を保たなければいけません。安全面には特にこだわっています」

——JIS基準認定はもちろん、耐久性にも万全を期しています。

「認定条件である3万回の連続試験にプラスアルファで5000回、合計3万5000回の耐久試験を課しています。これを3年に一度、全形式行っています。耐久性も大事ですが、圧着不良を起こさないために、ダイスの嚙み合わせなど数マイクロの調整ですべて最適化しています。50年以上蓄えたノウハウで、何が重要かを見極めています」

——切断工具にも、ノウハウと技術をつぎ込まれていますね。

「ケーブルカッター『Sシリーズ』は、支点軸のオート可動機構で片手で60平方㍉メートルの太さのIV線も切断できます。従来、ハンドルを握り切った状態が刃に最も力が加わりますが、オート可動機構は、切断前は支点が力点側に近く刃が大きく開き電線をくわえやすく、切断し始めると支点の軸が移動して作用点に近づき、握り幅が狭くなった時に力を加えやすい独自の新機構。負荷が少なく、ラウンド状とストレートの刃の組み合わせで力を余すことなく使えます」

ミノル工業_製品写真 (2).jpg

【写真左】特許を取得する軽天工具Mバーカッター「MC30M500」はヘッドが360度回転して壁際でもハンドルが壁に当たらない、【写真右】軽量・コンパクトな圧着ペンチ「MC10H002J」。高い品質と性能が求められる圧着工具には厳しい耐久試験を課し、現場の安全を守る

——するすると刃が入る独特の切れ味が面白いです。

「力が均等に入るため切断面も変形しませんし、ハンドル荷重が従来品から4割軽減しました。こういう遊びのような仕掛けをいっぱい持っています。様々な可動機構を開発して、後からどの工具に載せるか検討するパターンが結構多くて」

■「これまでにないモノ」を形にする力

——開発力の源泉は。

「製品開発のスピードを高めるために研究開発部門『MARVEL R&D』を分社化し、開発に集中できる環境を用意しています。開発メンバーは工場の機械設備をほぼ触れ、金型から試作品まで自ら作ります。一人ですべて完結できる力と、設計したものが現実的に作れるか判断できる開発者が揃っています」

「天井などを吊る軽天材を切断するMバーカッター『MC30M500』は、360度回転し干渉物を回避できるヘッドが大きな特長。またハンドルにある2つの軸が両手の力を刃に伝え軽い荷重で切断できます。干渉物を避けられる軽天工具を作りたい、と私が投げかけ、研究開発メンバーが解を出した製品です」

「ほかにも独自のツインカム・オート偏心機構を採用したCチャンカッターは連続的に移動するカムのあたり面を中心軸の代わりに利用し、常に最適な力が出るポジションで動き、軽い力で切れます。旧モデルの全長680ミリから500ミリとコンパクト化。ベストセラー製品の一つです」

——新機構開発のための設備投資も大いに力を入れておられます。

「愛知県の岡崎工場では開発から生産、検品を一貫製造しています。安田工業の高精度マシニングセンタやC&Gシステムズの「CAM-TOOL」などで金型を内製化。品質を追求し、付加価値を高い工具を作る環境を実現しています。自動化や省人化にも取り組み、新しいアイデアに応えられる多彩な設備機械が『世の中にないモノ以外は作らない』という当社の信条を製品にしています」               



(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)

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