インタビュー
イトーキ 常務執行役員 中村 元紀 本部長/設備機器営業統括部 システム機器販売部 平本 淳 部長
- 投稿日時
- 2025/08/25 13:53
- 更新日時
- 2025/08/25 14:02
イトーキが挑む『第二の柱』づくり
処理と保管両立の自動倉庫26年投入
オフィス家具の老舗イトーキは、設備機器・パブリック事業を第二の柱に据え、特に物流分野での拡大を進めている。7月には事業部独自のビジョンを公表。2026年に市場投入予定の処理性能と保管能力を両立した自動倉庫「X-NR(プロジェクトコード)」も発表した。同事業の成長戦略について、常務執行役員の中村元紀本部長と設備機器営業統括部 システム機器販売部の平本淳部長に聞いた。(以下敬称略)

【写真左】平本淳部長、【写真右】中村元紀本部長
――オフィス家具のイメージが強いですが、物流領域でも強みを持つ製品がありますね。改めて、物流領域を含む設備機器・パブリック事業の立ち位置を教えてください。
中村 確かにワークプレイス事業のイメージが強いと思います。ただ我々は1972年から自動倉庫を手掛けており、稼働の安定性とスピード性が評価され、近年はEC向け倉庫やメーカーの製造工場など幅広いお客様に活用いただいています。設備機器・パブリック事業では物流設備のほかに、特殊扉や美術館向けの展示ケースなども扱っています。それぞれの領域で高いシェアを持っており、社会課題などを背景に拡大傾向にあるため、当社としては「第二の柱」に育てていきたいと思います。
――7月には事業部独自のビジョン『専門領域の“働く”と“未来”を切り拓く』を打ち出しました。
中村 当事業部としてはおそらく対外的に発表する初めての単独のビジョンです。前提として当社のコーポレートステートメントは『明日の“働く”を、デザインする。』。働く現場はオフィス空間だけではないです。あらゆる分野で人手不足が深刻化する日本において、物流などの専門領域の「働く人々」にも貢献していきたい。さらに、課題というのはクリアしたら新たな課題が出てくるもの。我々としては常にアンテナを張って課題認識し、先回りして提案していきたいです。
――その文脈に今回の新製品「X-NR(プロジェクトコード)」もある。
平本 X-NRは、従来の自動倉庫システム「SAS-R」のスピード性能をベースに、在庫性を強化したハイブリッド型製品です。シャトルと上下昇降機能(スタッカークレーン)を組み合わせたようなシステムで、ピッキングユニットを薄型化することで、背の低い荷姿への対応力を強化しました。最適な処理速度での設計が可能で、収納効率は従来比で10%以上向上します。
――なぜ収納効率を上げる選択をした。
平本 いわゆる物流の2024年問題やサプライチェーンの見直しで、自動倉庫に求められることが変わってきています。つまり、ある程度の在庫を偏在的に持っておきたいというニーズに対し、リードタイムが吸収できるくらいの程よいスピードと程よいコストで、人をかけずに在庫を管理できるシステムです。当社としては、スピードに特化してきたこともあり、そうしたニーズに対しては処理能力が過剰になってしまうこともありました。X-NRという選択肢は生産能力のバランスを取るためにも有効となります。
――生産能力のバランスを取る。
平本 単純なX-NRへの置き換えによる調整のほか、下層5段は仕分け用に処理速度重視のSAS-Rを入れて、上層5段には在庫性を重視したX-NRにするなど、層ごとに異なる構成にも対応します。我々は物流業界だけでなく、自動車やPC部品、冷凍・冷蔵品、変わったところで言えば舞台装置まで、様々な業界の荷捌き・保管のお困りごとに対応してきました。様々なお客様の悩みに向き合って製品をカスタマイズしていくところに、イトーキの強みがあります。X-NRの登場で、「機械に設計要件を合わせる」のではなく「設計要件に機械が寄り添う」体制をより深化していけると信じています。
――コスト面はいかがでしょうか。
平本 SASからの単純な置き換えで約20%削減できます。そのため、システム面だけでなく、コスト面での調整もしやすくなります。シャトル自動倉庫は高額なイメージもあるので、よりお客様の満足に寄り添った提案に近づけると思います。
――新製品は第二の柱に貢献していきますか。
中村 現在、設備機器・パブリック事業部関連は全社売上の約4分の1です。将来的に売上比率を拡大させていく。中でも、物流領域が担う役割は大きいです。当社の創業者・伊藤喜十郎はそれまで日本になかったホチキス等の発明品を広く普及させました。そうした開拓者精神が当社では連綿と受け継がれてきました。これから踏み出す新たな領域ではお客様の要求も変わってくると思います。お困りごとに伴走しながら、お客様が描く生産性や働き方を実現していく我々のスタンスを貫くためにもX-NRの存在は重要になると見ています。
(日本物流新聞2025年8月25日号掲載)