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インタビュー

トーヨーエイテック 代表取締役社長 岡野 寛範 氏

投稿日時
2025/08/25 09:35
更新日時
2025/08/25 09:40

内径・端面・内歯車加工ができる世界唯一の複合研削盤

後に自動車メーカーとなる東洋工業(現マツダ)の一部門として1929年に研削盤の製造を始め、89年にマツダから分社独立したトーヨーエイテック。内面研削盤の国内販売でトップクラスを誇り、歯車研削盤も充実させている。6月26日付で社長に就いた岡野寛範氏に今後の方向性を聞いた。

おかの・ひろのり 1963年広島県生まれ。芝浦工業大学工学部卒業後、86年マツダ入社。車両製造部長、MMVO(メキシコ)副社長、マツダ防府工場長などを経て、2022年にトーヨーエイテック副社長、25年6月に現職に。「マツダだからというわけではありませんが、ドライブは趣味ですね。今はロードスターで時間があればいろんなところをよく走ります」

——社長に就任されて約1カ月。今のお気持ちは。

「歴史のある会社ですから気が引き締まります。持続的に成長する会社にしたいという思いは副社長時代からあります。社員が働きがいを持って生き生きと仕事をしてくれる会社にしていきたい、みんなで盛り上げていきたい、というのが率直な気持ちです」

——これまでに特に力を入れて取り組まれたことは。

「私は2022年4月からマツダからの出向となり、3年間副社長を経験してからの社長です。当社の名前の由来でもありますアドバンストテクノロジー(先進技術)でお客様を支える唯一無二のグローバルニッチ企業にしていこうと考えています。思いとしては3つあり、当社は工作機械、自動車部品、表面処理の3つの事業をもっていますが、それぞれの部門が商品ポートフォリオをきちっとつくっていくのが1つ。2つ目はすべてのステークホルダー、特にお客様、お取引先様、地域社会、それから従業員との強固な信頼関係をつくっていくこと。3つ目は会社を魅力ある人と組織にすること。これらを具現化させようと副社長のときから力を入れてきました」

——貴社をとりまくビジネス環境の変化は。

「今はアメリカの関税政策の影響が一番気になるところですが、自分たちでできる範囲はしっかりとコントロールしなければなりません。業務効率や生産性を向上することによって損益分岐点を下げることを今期は徹底的に行っています。様々な懸念はありますが、工作機械については、一般機械や空調機器の需要増で、コンプレッサー向けの内面研削盤を中心に国内および中国から多くの注文をいただいています。それにインドからの歯車研削盤などの引合いもかなり強い。一方で、ワイヤソーはシリコンのインゴットをスライスする機械ですが、需要が少し落ちています。スマートフォンやパソコンが少し在庫の過剰感があるようです。あと自動車などに使われるパワー半導体の需要が思ったほど伸びていません。この需要拡大は2026年の後半くらいになりそうです」

——工作機械事業では内面研削盤、歯車研削盤、ワイヤソーと3つあり、どれかが悪くても他でカバーできますね。

「そうですね。狙いとしては先ほど述べた持続的成長ができる商品ポートフォリオをもつということ。さらに工作機械、自動車部品、表面処理という3つのポートフォリオもあります。いま売り込み強化中の歯車研削盤では後発メーカーですが、いずれは内面研削盤を上回る販売台数にまで伸ばしていきたいと考えています。歯車は自動車の電動化が進むなかで需要は増えますし、ロボット関係の需要も増えますから」

■自動化、環境負荷低減に力

——昨秋のJIMTOFではミネラルキャストを採用した横形内面研削盤「THG-35C」を出品され、環境負荷の低減にも貢献しています。

「カーボンニュートラルには大きく2つのアプローチがあります。ライフサイクルを考え、工作機械をつくる過程でCO2をどれだけ減らせるか。もう1つはお客様が工作機械を使う際のエネルギー消費をいかに抑えてCO2を削減するか。ミネラルキャストを採用したのは前者の観点になります」

4面あたり【新社長】トーヨーエイテック岡野寛範社長P2.jpg

7月に販売を始めた複合研削盤「TGGi-35」は内径・端面・内歯車の研削を1チャッキングで行う。

——ミネラルキャストは今後、他の機種にも採用されますか。

「方向としてはそうなると思います。ミネラルキャストはCO2を減らせるほか、温度変化しにくいという特長もあります。これは高精度加工を維持するのに効きます」

——複数の加工機の組合せ提案など自動化にも力を入れています。

「自動化には大きく3つの見方があります。1つはオペレーターの人数を減らす省人化。砥石の自動交換などがこれに当てはまります。2つ目は高い技能を必要とする作業をいかに自動で行うか。THG-35Cに搭載した自動芯出しがこれに当てはまります。3つ目は、やはりハイスキルを必要とする保全領域の自動化。設備を維持管理していく人も減っていきますから、人手に頼らない設備の状態監視が必要になります。生産現場の視点で見るとその3つを考えていかなければなりません」

——貴社のいち押し製品は。

「歯車研削盤は外歯車向けに2つのモデルがあり、中型用と小径歯車用です。内歯車向けモデルはこの7月に販売を始めました。外歯車・内歯車向けが揃ったのでお客様にはワンストップで選んでいただけます。外歯車向けモデルはトップレベルの性能をもつのはもちろんですが、それに加えて砥石の自動交換機能などをもたせて長時間の連続稼働ができます。内歯車向けの『TGGi-35』は内径・端面・歯車加工ができる世界唯一の複合研削盤です。ワンチャッキングで加工できるので精度も非常によい。お客様からどう評価されるのか、ワクワクしているところです」

——販売の目標は。

「工作機械事業の売上高では遅くとも2030年には内面研削盤、歯車研削盤、ワイヤソーをそれぞれ100億円ずつ、計300億円を目指します。それをできれば28年に前倒ししたいですね」



(日本物流新聞2025年8月25日号掲載)