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インタビュー

トーヨーエイテック 代表取締役 副社長執行役員 萩 幸次郎 氏(工作機械事業部門統括)

投稿日時
2025/07/28 09:00
更新日時
2025/07/28 09:00

新機種加え、外歯車・内歯車研削盤をフルラインナップ

内面研削盤の国内販売でトップクラスを誇るトーヨーエイテックは、そのノウハウを注ぎ込んだ歯車研削盤を2014年に発売。その後、小径歯車向けを開発し、今月には内歯車用の新機種をラインナップに加え、3機種が揃った。社内に機械ユーザーがいる(自動車部品メーカーでもある)のが大きな強みだ。

昨年2月に50%株主である伊藤忠商事から出向し、今年6月26日付で副社長に就いた萩幸次郎氏。「お客様を訪問する機会が減り少し寂しい気もしますが、経営面や世の中の動きを勉強していきたい」と意欲的に話す。社員とのカラオケも楽しむ。

――貴社をとりまくビジネス環境に変化はありますか。

「研削盤分野においては経済発展の著しいインド向けの商談が増えており、また中国を含めた東アジアや日本国内での設備投資需要は回復傾向にあると認識しています。歯車研削盤の具体的な商談もずいぶんと増えてきました。ただ、工作機械売上の半分を占める半導体分野向けのマルチワイヤソーなどは若干厳しい状況にあります。最近の変化としては、お客様から『困りごと』の相談をいただくことが増えてきました。背景には人手不足や熟練者不足があり、当社としては高精度・高生産性だけでなく、複合加工や様々な自動化・省人化を含めて提案することでその困りごとをお客様と一緒になって解決してゆく共創活動を進めています」

――貴社の歯車研削盤の特徴は。

「内面研削盤メーカーとして培ってきた高速回転軸と同期制御技術で得られる高精度・高能率加工があります。加えてATCなどの自動化や複合加工などによる高い生産性も追求しています。昨秋のJIMTOFと今春の中国CIMTで歯車研削盤を実機で展示したところ大きな反響をいただきました。ATCを付け砥石の自動交換ができます。これは先ほど申し上げたお客様の困りごとの解決の1つです」

――売れ行きはいかがでしょう。

「歯車業界向けには、内径・端面を加工する研削盤を含めて年間20~30台の受注を目指しています。歯車は多様な分野で必要とされますから、歯車研削盤の販売をさらに拡大してゆきたいと考えています。納入先として多いのはトランスミッションを含む自動車やロボット関係。あと建設機械向けもあります。国内外の比率はおよそ半々で、海外の半分は中国向けが占めます」

――内歯車を研削できる新機種を開発されていると聞きました。

「今月販売開始となった『TGGi-35』です。ロボットに使われる減速機向けに開発した機種で、直径200㍉までの内歯車の創成研削と内径・端面研削を1チャッキングでこなせますから、高精度の要求に応えられます」

15面歯車加工特集・トーヨーエイテックP2.jpg

小径歯車の高能率加工とATCによる長時間連続稼働を実現した歯車研削盤「TGG-26-2W-HS」

――QCDを高めるために取り組んでいらっしゃることは。

「できるだけお客様の困りごとに耳を傾け、Qualityの向上を追求し続けています。聞くべき声は外だけに限られません。当社の特徴の一つですが、工作機械をつくる事業部だけでなく、自動車部品を製造する事業部もあります。主にマツダさん向けの部品を提供しており、この自動車部品事業は工作機械を使う側の立場にあります。当社の工作機械事業部が製造した機械を実際に使っています。機械ユーザーが会社の中にいるということで、使い勝手はこうした方がいい、保守はこうあるべきだ、こんな機能がほしい……とユーザー側の声を社内で聞けることになります。これをさらに促そうと事業部間の垣根を低くしてコミュニケーションを促進しているところです」

――社内に機械ユーザーがいるのは心強いですね。

「まさにそうです。ただ、そういった形でお客様の声を拾い続けていくと、どんどん一品一様になりかねません。そうなると製造コストが膨れ上がってしまいますので、お客様の声を聞きながらも標準化を進めることにも努めています。一方で長納期部品については一部予測して先行して手配することで納期の短縮を図っています」

――今後の製品展開や新たな需要開拓の計画は。

「先ほど申し上げたようにJIMTOF、CIMTで大きな反響をいただきましたから、日本国内と中国での商談を推進しているところです。特に中国では一昨年、上海に現地法人を設立し対応しているところです。一方でインド、ASEAN地域での販売展開も進めてほしいという要望がお客様や商社の方々からいただいており、これも同時並行で対応し、アフターサービスも充実させる考えです。今回、内歯車・内面複合研削盤を加えたことで、外歯車・内歯車の研削工程のフルラインナップができあがり、当社が強い内面研削盤との相乗効果を出していきます」




トーヨーエイテック株式会社

1950年設立、社員666人

広島市南区宇品東5-3-38

歯車を加工する研削盤を年に計20~30台生産


後に自動車メーカーとなる東洋工業(現マツダ)の一部門として1929年に研削盤の製造を開始。1989年にマツダから分社独立しトーヨーエイテックとなった。工作機械、自動車部品、表面処理の3事業を柱とし、売上高の割合はおよそ6:3:1。工作機械事業は内面研削盤(横形・立形・超大型)、ワイヤソー、歯車研削盤など製造し、2023年に総生産2万台を達成。本社のある広島工場(工作機械、自動車部品、表面処理)、東広島工場(東広島市、自動車部品)、東日本工場(埼玉県深谷市、表面処理)、中部日本工場(愛知県春日井市、表面処理)の4つの製造拠点をもつ。



(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)