インタビュー
ニデックマシンツール 執行役員 歯車機械システム事業部長 古田 成毅 氏
- 投稿日時
- 2025/07/28 09:00
- 更新日時
- 2025/07/28 09:00
ワンニデックでギヤ加工ソリューションを提供
ニデックマシンツール(以降マシンツール)は、ギヤ加工を網羅する専用機のラインナップと少量多品種に対応する汎用タイプのマシン、そして切削工具と加工ソフトと、歯車加工に関するハードとソフトをトータルで提案できる強みを持つ。栗東工場の「Nidec GEAR Lab」では、実機によるテストカットや加工相談など顧客ニーズに対応するとともに、加工技術の高度化と対応力の向上も追求している。執行役員の古田成毅歯車機械システム事業部長に話を聞いた。

――貴社の強みを端的に言うと。
「『ギヤ加工ソリューション』という言葉に尽きると思っています。旋盤での穴あけ・キー溝、歯切り・面取り・シェービング・歯車研削まで主要な工程を、ニデックの工作機械グループでほとんど取り揃えることができます。さらに各工程に対応した切削工具も自前で持っていますし、加工ソフトもお客様が使い易いものを開発・提供しています。つまり、機械と工具、加工技術までしっかり提案できる。この総合力が、ニデックグループのストロングポイントだと考えています。仮にお客様のところで何かトラブルがあったとしても、『機械のせいじゃないですか』『いやいや工具の問題でしょ』みたいに押しつけ合いにならない。ワンストップで解決できます」
――複合加工機でのギヤ加工について教えてください。
「昨年のJIMTOFでは、マシニングセンタ(以降MC)ベースや旋盤ベースの複合加工機で歯車を加工できる製品群を発表しました。その中でも、『マルチタスクギヤセンタMGC300』はニデックオーケーケーの高剛性MCをベースにした最新機種です。ギヤ加工に適した機械にするために、テーブルの高速化を図り、歯車加工専用のプログラムを開発・搭載して操作を簡単にしています。マシンツールが持つ歯車加工のノウハウをしっかり入れ込んでいるので、自動車の補用品などの少量多品種の歯車製造や、これから歯車加工にトライされたいお客様が導入し易い機械として作っています。機械に加え、長年積み上げてきた加工ノウハウも含めて、お客様の抱えておられる課題に対してしっかり寄り添いサポートできるのは当社ならではです」
――加工技術の取り組みについても教えてください。
「加工技術の面では、滋賀県栗東市の工場内に『Nidec GEAR Lab』というラボを設け、そこに最新機種を置いています。ここはお客様からのテスト加工の依頼に対応しているほか、当社の歯車加工の研究・開発の場所としても活用しています。さらには、現在、建設中の新テクニカルセンターではニデックグループの他の工作機械を設置し、もう少しスケール感のある研究・開発拠点を目指しています。我々グループ内の技術の横通しやコラボレーションに留まらず、お客様との技術交流も深め、常に最新の加工機と加工技術をいち早く提案できるよう取り組んでいきたいと考えています」
栗東工場の「Nidec GEAR Lab」
――歯車の高精度化についてはどう考えていますか。
「大きく2つの流れがあると考えています。ひとつは、従来通り最終仕上げ工程で精度を追求していく方法。そしてもうひとつは、熱処理の前段階で、たとえばホブ盤などを使って、シェービングに近いレベルの精度を出すという、前工程での高精度化ですね。当社では、どちらのアプローチにも対応できる機械と切削工具を持っており、そこに加工技術を乗算していく形です。たとえば、歯車のギヤノイズ低減というニーズに対して、“ローノイズ研削”で周期的な歯面のうねりを低減する技術の追求や、ヘリカルギヤのクラウニング加工時に発生する歯面のねじれ形状を、“バイアス修整機能”を活用して修整するといった提案もしています。また“ポリッシュ研削”で歯面を極限まで磨きあげ、歯面強度の向上及び摩擦を減らす技術の追求も行っています。その他、加工した歯車の精度評価には、クリンゲルンベルグさんをはじめ測定器メーカーさんと連携して、品質の安定化にも取り組んでいます」
――最近、内歯車の高精度加工ニーズも高まっていると聞きます。
「はい、大いに実感しています。遊星歯車を使った減速機をつくるには、内歯車(リングギヤの加工)が不可欠になります。お客様の多くは『高精度で量産したい』というご要望をお持ちで、当社の『Z125A』という量産対応用の内歯車研削盤が注目されています。内歯の加工は、工具(または砥石)の大きさが、内径よりも小さくないと加工できないという制約があり、1歯ずつ削る方式の機械が使われていますが、これでは量産に向いていません。当社の機械は、歯車の内径と砥石が干渉しないよう角度を設け『かみ合うように』して連続的に研削する方式で、精度と速度を両立しています。この技術は特許を取得しており、今のところ当社以外に作れるメーカーがないオンリーワン技術です」
――切削面取り一体型ホブ盤「GE25CF」についても教えてください。
「本年6月に販売を開始したばかりの機械で『GE25CF』という工程集約型ホブ盤になります。ホブ加工に加えて、歯車の両端の面取りとバリ取りをこの一台で完結できます。高精度な歯車づくりを効率よく行うために、従来のフレージング(塑性加工)とは違う創成法を採用しており、自社製切削工具を用いることで、狙った通りの面取り形状が出せるのが特徴です。また、バリ取りも同時に行えるので、段取り替えの手間を省くことができ、品質面でも効率の面でも大いに貢献できる優れた機械だと考えています」
ニデックマシンツール
2004年設立、社員約1000人
滋賀県栗東市六地蔵130
工作機械、切削工具及びその関連製品に関する設計・製造・販売
同社では「歯車勉強会」と題して、歯車加工に関する学びの場を提供している。「歯車には、製造現場にフィットした教科書が少なく、また大学でも研究者が減っていて教える人も少ない」といったお客様の切実な声を受けて「我々の社内の教育資料をブラッシュアップしてお客様を対象に勉強会を実施。好評を得ています」(古田氏)と話す。歯車の専門用語や機械構造、加工理論、加工条件の考え方が身につき、生産性や品質の改善に役立てられている。また、コースもいくつかあり、初級コースでは新入社員や非エンジニア(販売店など)の基礎講座としても活用されている。
(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)