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インタビュー

日本クリンゲルンベルグ 取締役 神野 瑞晴 氏/サービス部部長 三浦 裕二 氏

投稿日時
2025/07/28 09:00
更新日時
2025/07/28 09:00

次世代の歯車加工を支える最高峰の加工精度と測定技術

世界の歯車加工業界を牽引するクリンゲルンベルグ。その日本法人・日本クリンゲルンベルグが国内市場において存在感を増している。その背景と近年の市場ニーズについて同社の神野瑞晴取締役と三浦裕二部長に話を聞いた。

【写真(左)】三浦裕二部長=建機メーカーを経て2021年より現職。学生時代は本格的な登山に取り組んでいたとか。
【写真(右)】神野瑞晴取締役=大学では航空宇宙学を専攻、航空自衛隊を経て2011年入社。趣味はゴルフ、釣り、ボディーボード等。

――昨年は日本法人70周年を迎えました。近年の貴社の業況は。

神野(瑞晴氏=取締役) 1954年の創業当時は数名でやっており、私が入社した約15年前は10数人の会社でした。それが現在では30人以上のスタッフが活躍してくれており、今後もさらなるサービス拡充のために増員を計画しています。売上に関しても順調に推移しており、特に昨年度は過去2番目の受注をいただいております。本年度も高いレベルでの数字が出るのではないかと期待しています。

――ユーロ高の影響で受注額が上がっているのでしょうか。

神野 売上高はあくまでユーロ計算ですので、台数ベースでボトムアップしています。これは日本国内だけではなく、全世界で当社の歯車加工ソリューションが求められています。加工機だけではなく、ソフトウェアから計測に至るまで、当社だからこそご提供できるアプリケーションにお客様が価格以上の付加価値を実感して頂いていると感じています。

――関税や紛争などの地政学リスクなど、逆風を受けている日本の工作機械メーカーも少なくありません。

三浦(裕二氏=サービス部部長) 自動車産業への依存度が高いとそうなってしまいがちですが、日本のマーケットは多様な産業が揃っています。当社にはエネルギー、航空機、造船、建機、ロボットなど幅広い産業のお客様がおります。

――歯車加工機に対するグローバルの市況をどのように捉えていますか。

神野 クリンゲルンベルグの国別売上高は中国、インド、アメリカに次いで日本は世界4位です。欧米は徹底的に設備投資を常に続けています。一方、アジアはこれから最新の設備を入れていこうという国がまだまだあり、市場としても有望と捉えています。

――日本市場については。

三浦 10年前まで当社は人数も少なく、なかなかお客様に充実したサービスをお届けすることが出来ませんでした。それが解消されたことが大きいですね。またクリンゲルンベルグは全社を挙げてサービス部門を徹底的に強化しており、お客様が困るケースを激減させています。こうした背景もあって、これまでカバーしきれていなかった案件が受注に繋がっています。今後も引き続き人員体制を強化していく予定です。さらに、在庫部品についても今後3年間で現在の2倍に拡充する計画としており、これにより迅速かつ確実なサービス対応を実現し、お客様満足度のさらなる向上を目指しています。

――なかでも顕著な伸びを見せている需要業種は。

三浦 少し前までは波動歯車装置向けの小型・中型機が好調でした。現在は半導体関連向けが好調で、数量も精度も両方求められるお客様に導入頂いています。また自動車関連でもご採用頂くケースが増えています。

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円筒歯車研削盤「RAPID」

――貴社の優位性についてお聞かせください。

神野 我々が扱っている商材は技術的にも圧倒的にトップであると自負しています。少々高価ではありますが、それがいま全世界から求められています。またクリンゲルンベルグは利益のほとんど全てを開発費に回しています。世界中の拠点から様々な情報を得て、それをベースに現在の市場で必要とされる機械開発を行っています。

ちなみに社員1400人のうち200人がソフトウェア関連開発に携わっていますが、このボリューム感は業界トップクラスだと思います。

――歯車に対する要求精度は年々高まっています。

神野 ハイエンドの歯車は、もはや従来の加工方法、測定方法では仕事が出来なくなってきています。加工機の精度がいいのはもはや当たり前で、工程全体、工場全体でどう管理していくかが重要です。加工機や測定機など、それぞれが最高精度で、なおかつ自動化や省人化もできる。そうした歯車加工ソリューションを提案しています。

当社の測定機は、PTBなどの校正機関で正式採用されており、測定室を必要とせずにDIN1級レベルの測定が可能です。また分解能も市販されているものとは桁が違い、ナノレベルの領域で識別しています。そういった領域の自社開発したトレーサーヘッドはもう実際に量産、販売されています。

――測定における信頼度や再現性も期待できますね。

三浦 ワークを測定する際に、素人が乗せてもロボットが乗せても、置かれたワークの座標を瞬時に作ってプローブが測定しますので、誰が使っても同じように測定できます。高精度を担保しつつ、自動化も可能な『測定のプロを必ずしも必要としない測定機』なんです。

――人手不足の中小企業でも活用出来そうですね。

神野 大手は自動化や稼働状況の管理を徹底的にやっていますが、中小はなかなか難しい。加えて、工場の中で機械を触りたいという人がこの先増えるとは思えません。機械に向かうのではなくパソコンに、という時代が遠からず来ます。当社には中小企業でも導入しやすい『スマートファクトリー』というソフトがありますが、これはNC機であればメーカーを問わず稼働状況が可視化でき、お客様が抱えている問題を明確にします。今後は高精度を謳うだけではなく、お客様にとって確実にメリットとなる提案をしていきたいですね。




日本クリンゲルンベルグ株式会社

1954年設立 従業員32人

神奈川県横浜市港北区新横浜1-13-12

歯車歯切盤、歯車研削盤、円筒歯車研削盤、歯車測定機、周辺機器、ソフトウェアなどの販売・アフターサービス


歯車加工におけるリーディングカンパニー・クリンゲルンベルグ社の日本法人。新幹線の部品製作にも使用されている円筒歯車研削盤「RAPID」シリーズをはじめ、多彩な加工機と業界最高レベルの測定機を揃える。近年ではニデックマシンツールの本社工場に同社測定システムを設置するなど、国内メーカーとの連携も深めている。





(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)