インタビュー
グリーソンアジア 代表取締役社長 池垣 多一郎 氏
- 投稿日時
- 2025/07/28 09:00
- 更新日時
- 2025/07/28 09:00
円安、自動車不況を吹き飛ばす「日本の高性能歯車を世界へ」
アメリカで生まれ、世界中の自動車産業を支えてきたグリーソンは今年創業160周年を迎える。高度成長期真っ只中の日本においても1960年代にはすでに1000台以上の同社機械が輸入され、国際的な競争力を勝ち取るメイドインジャパンのクルマ作りを支えてきた。そんな同社の日本法人グリーソンアジアの池垣多一郎社長に話を聞いた。

池垣多一郎代表取締役社長=自他ともに認めるゴルフ通。練習はジムでの筋トレが中心。「飛距離はかなり伸びている」という。
――貴社は日本の自動車産業の発展を下支えしてきました。
「グリーソンの歯車加工機は1936年から日本に導入されてきました。当社の前身となる大倉商事が1977年に日本販売総代理店となり、1999年に100%グリーソン資本となり、グリーソンアジアに社名変更し現在に至ります。国内の自動車メーカー、部品メーカー各社様とは長年に渡って良い関係性を築いており、当社のトータルギヤソリューションを高く評価して頂いております」
――昨今の景況感はいかがでしょうか。
「ここ最近は良いとは言えないのが現状です。やはり自動車業界の設備投資がいまひとつ進んでいませんので、なかなか大きな受注に繋がりにくいのが現状です。逆にオーバーホールの案件はちょくちょく来ていて、皆さん古い機械を騙しだまし使っていらっしゃるのかもしれません」
――世界的にもEV需要には一服感がありますが、日本国内の自動車メーカーの動向は。
「世界に比べても国内の投資は遅れていると感じています。多くのメーカーは積極的にEVを生産するフェーズではなく、まだ様子見というスタンスだと思います。とはいえ、メーカーによっては国内にもしっかりとEVの生産ラインを立ち上げています。当社も昨年、大手メーカーのEV生産ライン向けに採用頂いています」
――自動車以外の需要に関してはいかがでしょうか。
「防衛、航空、エネルギー関連には期待しています。特に大型歯車向けで手応えを感じている案件もあります。また今後、ロボットの増加に歯車への需要は必ず増えていくと見ています。レジャー系もひと息でしたが、ここにきて大手釣具メーカーさんが当社の設計解析ソフト『KISSsoft』に興味を持って頂いています。当社のコンセプトは設計、製造、測定まですべてにおいてソリューションを提供するというものです。設計はその入口のところに当たります。建材メーカーさんやプラスチックギヤを製作している会社など、KISSsoftをきっかけにお付き合いのなかった業界からの引き合いも増えています」
歯車設計解析ソフト「KISSsoft」
――良いアプリケーションがいい循環を生み出している。
「ここ数年、展示会はもちろんホームページ経由や他のマーケティングリードから、いろいろなお客様と繋がり、成約にまで漕ぎつけるケースが増えています。加工ソリューションをたくさん持っている当社だからこそ、お役に立てているという実感があります。これまで自動車に軸足を置いているところがありましたが、今後はこれまで回り切れていなかったお客様にもしっかりアピールしていきます」
――自動車業界の逆風も追い風に変えられそうですね。
「他業種へのアプローチが形になるのかは分かりませんが、やはり日本全体の歯車メーカーさんが競争力を挙げていってもらわないと。各社とも実力は十分ですし、日本のマーケットだけじゃなく、世界も視野に入れたほうがいいのではないかと感じています。先日、歯車工業会でも発言したのですが、いまは円安ですし価格的な競争力も絶対ある。特にヨーロッパとか。もちろん行ってみないと分かりませんが、業界全体で海外進出の戦略みたいなものを立てていかなければならないと強く感じています」
――日本だからこそ作れる高精度、高性能の歯車を世界に、ということですね。
「国内市場だけですと、今後じり貧になってしまいます。業界全体で力を合わせてオールジャパンでやったり、歯車の単価をもっと上げていくとか、歯車の価値そのものを上げていく努力をしないと。下請けの部品じゃなく『これがないとモノが作れませんよ』というところを目指すべきです。当社のような海外メーカーもお手伝いできる部分がたくさんあります」
グリーソンアジア株式会社
東京都中央区月島1-2-13
ホブ盤、歯車研削盤、パワースカイビング盤など各種歯車加工機のほか、測定機、歯車解析・設計・計測ソフト、ツーリング、治具など歯車のトータルソリューションを販売
ベベルギヤ設計・製造・測定のパイオニアメーカーであり、「トータルギヤソリューション」を手掛ける米国・グリーソン社の日本法人。日本の自動車産業との関りも深く、現在は高性能かつ幅広い歯車加工機を日本や台湾、東南アジア市場へ展開している。
(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)