インタビュー
キャドマック 代表取締役社長 髙垣内 昇 氏
- 投稿日時
- 2025/07/24 13:30
- 更新日時
- 2025/07/24 13:34
曲げ工程のロボ化をソフトで支援、デジタルの力で人が活きる職場実現
深刻な人手不足や物価高騰の影響は、板金業界に工程ごとの効率化や自動化だけでは追い付かない状況をもたらしている。職場全体の効率化に向けて、ソフトウェアの力がますます重要になっている。これまでに、6000シート以上の板金用CAD/CAMソフト「MACsheetシリーズ」を納入してきたキャドマックの髙垣内昇社長に、7月19日まで開催されていた「MF―TOKYO2025」の会場で話を聞いた。

――MF―TOKYOでは、様々なブースで貴社製品と連携する動きが目立ちました。連携強化の背景を教えてください。
「従来から、どんなメーカーの製品であっても繋がれることが当社の製品の強みの一つでした。機械メーカー様はそれぞれ特長ある機械を作られているので、特定のメーカーの製品だけでなく、様々なメーカーの機械を組み合わせて使いたいというお客様は常にいらっしゃいます。人手不足や労働者の確保が難しくなってきている中で、機械ごとに専門の人材を用意できず、1人の従業員が複数の機械を触らなければいけない場面を増えています。その際、一気通貫で扱えるシステムとして当社の製品が選ばれています」
――中国をはじめ韓国や台湾などアジアの板金機械メーカーの台頭も目立っています。海外メーカーとの連携は。
「メーカー側のスタンスにもよりますが、当社としては来るものを拒まず。ファイバーレーザー溶接機を始め、ユーザー様が日本製より格段に安いアジア製の機械を目にする機会も増えてきています。従前と異なり品質も上がっており、導入した企業からは加工内容によっては十分だといった声も聞こえてきています。今後、こうした流れは加速していくと見られており、機械を繋ぐソフトウェアの重要性はさらに増していくと見てます」
――メーカーとの連携という意味では、曲げ加工の自動化ソリューションにも注目が集まりました。
「曲げ加工専用の『MACsheet BEND Robot』をコマツ産機様と吉野機械様のブースで活用いただきました。昨秋から情報としては出していましたが、本格的に披露するのは今回が初。ベンディングマシンと産業用ロボットを組み合わせた曲げ加工の自動化システムで、ティーチングレスで使えることが大きな特長です。板金用のCAMとロボットの軌跡を自動で生成するため、プレスブレーキの操作とティーチング作業が不要になります。曲げ加工でボトルネックとなりやすい、多品種少量生産にも柔軟に対応でき、日中は人が操作して夜間はロボットが自動生産といった使い方も可能です」
コマツ産機のブースで披露された曲げ工程を自動化するロボットシステム
――他社メーカーでも同様の提案が見られました。何が違う。
「欧州メーカーなどでは既に数年前から用意しているソリューションですが、こちらもプレスブレーキ、ロボット共に、メーカーを選ばないことが当社の強み。当社は長く板金業界向けに製品を手掛けていますが、あくまでソフトベンダー。機械側の知見は十分ではありません。曲げ加工の自動化にはマシンとロボット、ソフトの三位一体での取り組みが必須。様々なメーカー様と手を取り合ってきた当社だからこそできる自動化ソリューションだと思っています」
■The省人化
――ロボットだけでなく、貴社製品同士の連携も進めていますね。
「はい。製品同士もそうですし、お客様の図面データや見積書類など、様々な形で保存されているデータを一元的に管理ができるクラウド型のデータ管理システム『MACsheet DataPocket』を用意しています。機械の性能はどんどん上がり加工も速くなっています。一方で、書類やデータの管理となると各社各様の方法で保存されている。そのため、過去にやったことのある仕事の見積りを出すのに半日かかっていたり、ある関係の手続きは誰々さんしかわからないという属人化も多く見られます。ここを変え、より付加価値の高い作業に注力いただきたいと考えています」
――MF-TOKYOでは新機能も訴求されました。
「まず、お客様からの要望の多かったタブレットに対応しました。現状、Surface Goの画面サイズにチューニングされていますが、今後は様々なデバイスに対応する予定です。これにより、図面や各種データの確認が現場や職場以外の場所からも可能になります。また従来、不良の報告や段取りに関するマニュアル作りは、現場で写真などを撮って、事務所に戻って書類の作成という流れでしたが、タブレットのカメラ機能を使って、即座に報告、紐づけが可能。手間による報告漏れなどを防ぐことができます」
「OCR(光学文字認識)読み込みから、タグ情報などを自動で割り当てる機能も実装しました。これまでタグ付けは人の手で行う必要があったのですが、図面や書類に記載されている品番や材質、取引先の情報を読み取り自動でタグ付けできるので、保管の手間を減らすことができます」
――板金業界の効率化に多角的に取り組まれる。
「そうです。MF-TOKYOで掲げたテーマも『The 省人化』でした。これは単に人員を減らすということではなく、人を活かした効率の良い板金製造業の実現を目指したものです。深刻化する人手不足の中で、人が本来持つべき創造性や専門性といったより価値の高い業務に集中できるよう、デジタル技術でサポートしていきたいと考えています」
(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)