インタビュー
ジェービーエムエンジニアリング 小谷 幸次 代表取締役社長
- 投稿日時
- 2025/07/24 13:17
- 更新日時
- 2025/07/24 13:22
ソフトウェアのチカラで圧倒的「人手不足」を解消する
世界ナンバーワンCAD/CAM「Mastercam」の日本国内納入No.1ベンダーとして、ユーザーの精密加工ビジネスの効率化&高収益化を支えてきたジェービーエムエンジニアリング。昨今は産学連携での積層造形アプリケーションの開発や、ロボットを活用した自動化など先進的なソリューションも積極的に展開している。同社の小谷幸次社長に近年のユーザーニーズや主力ソフトMastercamの最新情報について語ってもらった。

ジェービーエムエンジニアリング・小谷幸次代表取締役社長
――直近の景況をどう捉えていますか。
「当社は9月決算なのですが、上期は冷え込みましたが下期は4月あたりからかなり上向きになっています。新規の受注も防衛関連、航空宇宙、船舶などが特に好調で、他の業種も含め全体的に底上げされてきたと実感しています」
――日工会の受注統計は依然として横這い状態が続いています。影響は。
「いつもは、そこまで影響を受けないんですがやはり自動車業界や金型など、下支えしている産業の設備投資が見送られているので、市場全体が盛り上がりに欠く傾向にあります。ただ、一部のお客様は『もう忙しくてしょうがない』というところもあり、儲かっているところとそうでないところが二極化している印象です」
――限られたマーケットに仕事が集中している。
「先日訪れたお客様は、『仕事はいっぱいある。機械もある。でも人がいないからどうしようもない。採用してもすぐに辞めてしまう』と嘆いておられました。よくよく話を聞いてみると、賃上げもしているそうですがかなり給与面で他所に見劣りしてしまう。また事務所から加工現場まですべてが昭和の雰囲気で、いまどきの若い方が働きたいと感じるような現場とはかけ離れています。やっている加工やワークは最先端のモノなんですけどね」
――人手不足が慢性化する中、貴社はソフトベンダーとしてどういった取り組みをされていらっしゃるのでしょうか。
「当社はMastercamを中心に積層造形、ロボット向け、計測・リバースエンジニアリングなど様々なソフトを提供させて頂いておりますが、昨今は設計、オペレータの方の負担をより減らせる、また自動化できるような提案を行っております。また最近多数お問合せ頂いているのが、中小企業様からの生産管理に関する案件です。使いやすさやコストメリットを踏まえて、ボリュームの小さい企業様にマッチするようなものがありそうでないのが現状です。今後は中小企業向けに最適な生産管理ソフトウェアをご提供していくことが現場の省力化、省人化に繋がっていくと考えています」
――先日はロボットパッケージの販売も開始されました。
「ローコスト、省スペース、多機能、DX対応というコンセプトのロボットパッケージ『マルチプロ』を7月に上市しました。バリ取り、ねじ締め、溶接、検査、ナットランナーなど様々な作業に対応可能です。すでに導入された企業様からは、手作業を1/3に減らせたという感想も頂いております」
ロボットパッケージ「マルチプロ」
■「自動生成」がテーマに
――7月1日にはMasterCam向けのAI支援ソフト「CAM Assist for Mastercam」日本語版をリリースされました。
「こちらはCAM支援ソフトで、CNC加工プログラムの作成におけるCAMオペレーション作業の効率を飛躍的に高めるツールです。開発元のCloudNC社が約10年間蓄積してきた切削加工データをもとに構築された機械学習モデルに、物理学に基づく切削理論を融合したソフトで、クラウド上で最適な加工工程を自動計算することでCAM作業を80%削減、オペレータの生産効率を5倍に向上させることも可能です。
AI支援ソフト「CAM Assist for Mastercam」
加工形状のレベルに応じて自動化の範囲は異なりますが、ツールパス生成の主要工程を自動計算し、得られた結果はオペレータがMasterCam上で補完・調整することも可能です。自社のポストプロセッサを使用しNC出力できるので、ユーザー様のノウハウを活かしながら生産効率と品質の向上を実現できます」
――ツールパス作成における作業を80%減らせるのは大きいですね。
「100%ではないところも大きなポイントです。100%を目指そうとすると、どうしても技術的な課題が多く、うまく動作しないといったトラブルが起こりがちです。この支援ソフトはすでに当社技術者が様々なトライを行っており、出来ることと出来ないことがはっきりしており、お客様にもそれを伝えた上で提案しています。日本は120%じゃないと出さない、といった風潮がありますが、80%でも十分お役に立てると考えています」
――AIを活用するとのことですが、クラウドにデータを上げる必要があるかと思います。その点でデータセキュリティは担保されるのでしょうか。
「CloudNC社の過去データを元にパス生成を行うので、顧客のデータがクラウドに残ってAIの学習に活用されてしまうことはありません」
――Mastercam2026も間もなくリリースになりますね。
「当社では例年8月30日に販売開始していましたが、今年は9月上旬になりそうです。今回も様々な機能強化が行われていますが、やはり自動生成というのがひとつのテーマになっており、より手戻りが少なくなっています。例えば段差のあるフラット加工ですと、これまで2段階加工をしなければならなかったものが一発で出来たり、データ上の矢印の向きを自動で修正したりするなど、作業時間が短縮される機能が充実してきています」
(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)