インタビュー
南海電設 取締役 岡野 馨 氏
- 投稿日時
- 2025/07/24 09:47
- 更新日時
- 2025/07/24 09:54
稼げるEVステーションを提供、充電器+蓄電池+再エネのトータル提案も
日本でも普及拡大が見込まれる電気自動車(EV)。だが充電インフラの整備はまだ道半ばで、経済産業省が掲げる2030年の設置目標30万口とはかなりの開きがある。普及加速には無料で利用できるEV充電器だけでなく、課金の仕組みを備え自立的に運営できる充電器の整備が急務だ。電気通信工事を手がける南海電設は充電器の設置から安価な課金サービス、アフターサポートまで一貫して提供。さらには蓄電池や再エネ発電も含めたエネルギーのトータル提案まで踏み込む。

——事業概要は。
「元は電気通信工事が主力。電話やネットワーク設備を中心に販売・施工・保守まで対応します。ただ昨今はコミュニケーションツールが多様化してきました。我々も通信以外、受変電設備の更新・改修事業などにも力を入れています」
——EV充電サービス「チャージコネクト」もその一環ですか。
「ええ。親会社である日東工業が2013年にEV充電スタンドを発売し、公共設置では国内首位のシェアです。我々も同時期に充電器の設置事業を始め、EVが下火になったことで一時は事業を中断していましたが、需要が高まった2年前に再始動しました。13年頃と違い、今回は脱炭素を目指す国の方針もあり簡単にはEVが下火にならない。設置実績は足元で数百口あります」
——サービスの特徴は。
「設置工事に加えて課金の仕組みも提供します。現在、EV充電器の多くは無料開放。課金式も一部ありますが、運営企業が他者の土地の一部を借りて設置し、収益は運営企業が得る形がほとんど。設置台数が少ないうちはさほど問題になりませんでしたが、今後30万口の設置目標を達成するには課金の仕組みを整え、ガソリンスタンドのようにオーナーが収益をあげながら持続的運営ができるEVステーションを増やさねばなりません。今は課金の仕組みが世にないことがネックです。我々のEV充電のキャッシュレス課金サービス『プラットチャージ』は充電器1台あたり月額3600円と低額。ランニング費用を抑えてオーナー自身が簡単にEVステーションを運営できる仕組みを提供し、様々な事業者が参入できる環境を整えました。知る限り業界最安値です」
——標準的にはどの程度の利用で黒字に。
「利用料金はオーナーが自由に決めますが、標準的な時間当たり350〜360円の料金なら1日1時間ほどの利用で固定費と相殺できます。それを上回る利用料金から、決済会社の手数料や電気料金などを引いた額がオーナーの収益です。また月額3600円は充電器の使い方がわからない場合などに利用できる当社コールセンターの費用も含みます。これほど低額なのは我々の主力が工事だからですが、必ず施工とプラットチャージの利用がセットだと充電インフラの普及が進まない。そこで、他社が設置した充電器に課金サービスだけの後付けも対応します」
■商用利用に伸び
——EV充電器の設置案件は増えていますか。
「今はどちらかといえば一般企業や物流向けなど課金システムが不要なEV充電器が先行して伸びています。日本は1000万台以上の商用車があるとされ、今後これがEVに置き換わるとの予想も。自社の駐車場に設置するような課金式とは違う運用形態でも我々は幅広く充電器を提供できます」
——課金システムが不要な場合、貴社はどこで強みを発揮する。
「我々は電気工事が得意。充電器を複数台導入するとキュービクルの増設が必要な場合がありますが、まさにこれが専門領域です。また昨年から充電器にとどまらず、蓄電池や再エネ発電も含めたサーキュラーエコノミーの仕組み全体の提案も始めました。日東工業が日産リーフのリユースバッテリーを再利用した蓄電池システム『サファLink-ONE-』を提供していますが、これに限らず電気を賢く使う、あるいはBCPを視野に入れた仕組みづくりを我々がすべて担います」
——EV充電器の設置費用の目安は。
「充電器の本体費用も含め1台なら80〜100万円がボリュームゾーンですが、供給地点が至近だと50〜60万円で済むことも。国や自治体の様々な補助金があり、一般的な制度を利用すれば1台あたり40〜50万円の還元が受けられます。補助金サポートも我々が対応します」
(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)