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インタビュー

クラボウ 取締役 常務執行役員 環境メカトロニクス事業部長 川野 憲志 氏

投稿日時
2025/03/21 16:38
更新日時
2025/03/21 16:42

目・脳・手をロボで再現、ラボの自動化へ

線状物に特化した高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」を核にロボット関連事業へ切り込んだクラボウ。ケーブルなど線状物を扱う作業を自動化してきたが、このほど米国・Flexiv社の7軸ロボット「ライゾン」とクラセンスを融合させた協働ロボットシステム「クラビゾン」を発表した。ライゾンは各軸に高感度の力覚センサーを備え、クラセンスとの融合で人の目と脳と手を再現できる。同社はこれを機にあらゆる繊細な作業の自動化に挑み、完全自動化に向け残されたピースを埋める。

――高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」を軸にロボット関連事業を展開しています。

「クラボウの技術はニッチなものが多いのですが、ニッチなビジネスはいずれ成長が頭打ちになります。レッドオーシャンから逃げずに成長領域に切り込むべきと考えました。そこで環境メカトロニクス事業部のコア技術である画像処理技術に着目し、ロボットが苦手だった繊細な作業を自動化するソリューションに的を絞りました。開発後、針穴に糸を通すデモを展示会で見せたところ、かなりの反響がありました。業界にはケーブル等の不定形物の認識に課題があるとわかったことで、線状物の認識に強いクラセンスを開発しました。一番の特長は高速で正確であることです」

――どのくらい速くて正確か。

JR東海と共同開発した『軌道材料モニタリングシステム』は当社の画像処理技術を活用しています。新幹線の車両の下に設置したシステムがレールの締結ボルトや枕木を撮影しながらリアルタイムで解析。その膨大なデータを瞬時に処理し、異常箇所を抽出するのです。時速300㌔で走りながら撮影しても、目視と同等以上のレベルで測定できることが確認できています。この高速処理が技術の核で、クラセンスもケーブルのようにたわんで揺れ動く物体を認識できる。スマホや自動車などコネクタや配線を扱う製造現場、カテーテルを扱う医療分野で採用されています。レーザーを組み合わせてケーブルの束から1本だけを認識する新型センサーも開発中です」

――2月に新たな協働ロボットシステム「クラビゾン」を発表しました。

「クラセンスと米国のディープテック企業・Flexiv社の7軸協働ロボット『ライゾン』を一体化させました。6軸より人に近い動きができますが、特筆すべきは優れた力覚制御技術。0.03Nの力を検知する高感度の力覚センサーを内蔵しており、ロボットにわずかに触れてもわかるほどです。目と脳の役割を果たすクラセンスに極めて繊細な『手』が加わり、非常に適応能力が高いアダプティブロボットになります。たとえばコネクタやカムなど、はめ合いを感覚で探って嵌合する、人の感覚頼りだった作業を自動化することが可能です」

――クラセンスは線状物の認識に特化していました。クラビゾンはその他領域へ適用する?

「確かにクラセンスは線状物に特化していましたが、今はそれ以外も認識するアプリケーションを開発しています。クラビゾンの開発理由は、クラセンスを展開する中でラボラトリーなど繊細な人の手の感覚が必要な現場が見えてきたから。バイオや創薬はピペッティングなどの作業がまだ人の手頼みです。ライゾンは先述の通り極めて繊細な作業が可能で、遠隔操作や複数台の同期制御もできる。センシングデータはリアルタイムに表示・記録され容易に遡れます。Flexiv社と共同で双腕ロボとAMRを組みわせた移動ロボも開発中です」

 ――ラボラトリーの自動化ニーズについて詳しくお願いします。

「例えば生化学ラボでは細菌やウイルスを遮断する必要があり入室条件が厳しく、特にバイオ関連はその環境下で、ストレスがかかる作業を研究者が延々と繰り返しています。サンプル入り容器のふたを開け、試薬を添加し、ラベルを貼り気を抜くと検体を取り違えるかもしれません。ラボオートメーションには切実なニーズがあるんです。クラビゾンはヒューマンエラーをなくし作業を確実に、かつ長時間行うことができます」

■15%に挑む

――ラボラトリー以外の分野の展開は。

「ライゾンは既に自動車業界に普及しています。自動車業界も配線や研磨など人の感覚によるセンシングが必要な工程があり、この自動化を推進します。食品や農業への展開も可能です。また国内産業のけん引役はこれまで自動車でしたが、今後伸びるのは半導体や遺伝子・人工知能などのライフサイエンステクノロジー。我々もこれを成長領域と位置づけ、クラビゾンのターゲットに据えます」

――自動化の引き合い状況は。

「引き合いは好調であとはどこまでこなせるかです。21年にFA設備に強いセイキ(富山県)がグループ入りしたことで生産ライン全体を手掛けられるようになり、クラビゾンも含め完全自動化に必要なピースが揃ってきました。現在の自動化工程は85%までは達成できても、残り15%は人間しかできないと言われています。クラビゾンはこの15%に切り込みます」

クラビゾン画像.jpg

クラボウの撹拌脱泡機「MAZERUSTAR」を用いた工程をクラビゾンで自動化する様子。ロボのアームに高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」が搭載されている




決め手は面倒見


クラセンスで人の目と脳を再現したクラボウだったが、研究・実験工程など繊細な作業が必要な現場の自動化は人の手の感覚をロボットに与える必要があるとの結論に至った。そこで10台近いロボットを自社でテストし、最も評価が高かったのが日本ではあまり知名度のないFlexiv社のライゾンだったという。一方、Flexiv社にはクラボウの他にも同社と提携を望む企業から声が掛かっていたが、クラボウの130年以上の歴史や高い技術力、さらにメンテナンスサポートを関係会社が一括で引き受ける方針が決め手となり、業務提携に至った。



(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)