インタビュー
清和ビジネス 首都圏営業本部 第一営業部 第二グループ 物流システムチーム リーダー 副参与 塚本 聡 氏
- 投稿日時
- 2025/02/21 16:10
- 更新日時
- 2025/02/21 16:15
倉庫人材の獲得競争過熱
確保・定着・省人化の三位一体の改革必要
2024年問題が4月にスタートしたにも関わらず、昨年のマテハン機器向けの投資は軟調だった。喉元過ぎれば熱さを忘れるではないが、ニーズや関心も落ち込んでしまったのか。主に中小企業の物流センターのマテハン・システム・各種工事の提案から設計、納品まで一気通貫で行っている清和ビジネスの首都圏営業本部第一営業部第二グループ物流システムチームリーダー兼副参与である塚本聡氏に話を聞いた。

――昨年の物流・マテハン業界は軟調といった印象でしたが、貴社の業況はいかがでしょうか。
ここ数年、物流施設の設備投資は活況で、現在も案件数は多い状況が続いています。しかし、これは部署全体で見た話で、空調設備導入に伴う配管工事などの工事の仕事とマテハン関係の仕事で分けてみると明暗が分かれてきます。つまり、断熱関連や空調関連への工事は高い状態が続いている一方で、マテハン関係は一時期よりも少し落ち着いています。
――マテハン関係の投資が落ち着いている理由は。
マテハン機器は物流施設を新たに設置した際に大きく投資することが一般的です。現在、2024年問題などによって建設コストが増大しており、建設の見直しや遅れが頻発しています。それに伴い、マテハン設備投資も計画の見直しや後ろ倒しが起こっている状況です。また、物流施設を建てたはいいものの、想定していた予算を超過してしまい、マテハン設備にお金をかけられないという企業も多く見られます。ニーズはあるが市場環境が悪いのではと見ています。
――ニーズとは。
工事関連の仕事で求められることも同じですが、人手不足への対応です。どの施設管理者と話をしても「人が集まりにくい」と言います。特に北関東のマルチテナント型倉庫が乱立しているエリアは、どこも満床に近い状態で運営されていると思いますが、もともと人が多く住んでいるエリアではないので労働力の取り合いが発生しています。
――スキマバイトの人材なども活用されていると聞きますが。それでも足りない。
スキマバイトや派遣の人材には、非常にシンプルなオペレーションで、ボリュームのある作業が向きます。一般的な物流施設では、時間ごとにやることが変わったり、様々な商品を様々なオペレーションで扱う必要があります。そのため、日々変わる人材に対してその都度、作業内容を教える業務が発生したり、時給換算で見ると賃金が高いにも関わらず普段から働いてくれている人の数割程度の作業しかこなせないと物流センターの運営側は頭を悩ませています。物流センター側としては、「人材確保」「人材定着」「作業の標準化」の3つの視点を同時並行して取り組まなければいけないと危機感を抱いています。
――3つの視点で特に優先されているものは。
取り組みの段階にもよって変わるので一概には言えませんが、「人材確保」と「人材定着」です。ここでもマテハン機器よりも施設施工への投資が優先されていることがわかります。マテハン機器を導入しても作業者はメリットを感じにくいです。一方で、暑熱対策や空調設備の導入はメリットを感じやすい。スキマバイトのアプリ上では雇用者側を評価する仕組みもあるので、口コミの評価を高めておくことが人材獲得の源泉になり、人材を定着させる意味でも働く環境の整備を重視している運営管理者は多いと思います。
■マルチテナント型倉庫特有課題に商機アリ
――どういった機器が活用されているのでしょうか。
暑熱対策や空調対策でいうと、屋根部に塗布する断熱塗料や遮熱シートといったものが注目されています。庫内であれば、業務用エアコンや大型シーリングファンなども導入が進んでいます。シーリングファンは配管工事が不要であり、当社が扱うエネファンであれば半径30㍍くらいの大空間でもエアコンを使用することなく体感温度を下げられるため、イニシャルコストも運用コストも抑えて使用できる点を評価いただいています。
猛暑対策としてシーリングファンの活用が広がっている
――空調関連以外で活用されている機器はありますか。
最近増えているマルチテナント型倉庫は専用センターと違い、本当はこうしたかったやこうだったらよかったのにといったことが各テナントさんで発生しやすいです。例えば、多くのマルチテナント型倉庫の有効天井高は5・5㍍ですが、そんなに高くなくていいという会社も非常に多い。空調設備を付けても効率が悪くなってしまうため、仮天井を後付けするといったニーズがあります。
また、事務所や休憩室が建物の両端にある場合が多く、中央付近に物件を借りている企業が、職場環境を改善するために事務所や休憩室を倉庫内部に増設したいというテナントさんも増えています。
――マルチテナント型倉庫特有の課題もあるのですね。
そうですね。他にも当社の製品「トラックバース床上げ架台」は、低床式のトラックバースに架台を設置して、高床式の倉庫部と同じレベルにする製品です。マルチテナント型倉庫は建物の中央に共同のトラック専用通路があって、そこを挟んで両端に物件が並ぶケースが多いです。そのため、各物件には低床式のトラックバースが必ず一定割合ついてきます。しかし、トラック複数台が同時に停車することのない現場も多くあり、低床空間を上手く活用できていないケースが散見されました。本製品を使えば、トラックバースの一部を倉庫部として使用でき、空間を有効活用できます。
マルチテナント型倉庫特有の困りごとが増えている。写真の「トラックバース床上げ架台」はトラックバースを高床化し、倉庫部の床面積を拡大できる
――今後の需要についてはどうみますか。
倉庫の運営側は人手不足に対して強い危機感をいただいています。ですので、人手の確保や定着だけでなく、人海戦術的な運用をやめるための自動化・省力化設備に投資をしたい方は多いと思います。一方で、昨年はトラックドライバーの処遇改善に関する取り組みや建設現場関連の混乱への対応に追われていました。もう少し社会全体の変化が収まり予見可能性が高まってくると、即効性の高い工事仕事にマテハン関連の仕事が乗っかって、相乗効果で市場を押し上げていくのではないかと期待しています。
(日本物流新聞2025年2月25日号掲載)