インタビュー
ニデック 副社長執行役員 機械事業本部長 西本 達也 氏
- 投稿日時
- 2025/02/21 16:56
- 更新日時
- 2025/02/21 16:57
ディスシナジーは自社需要で対応
他候補は説得による買収か
昨年12月27日、ニデックは牧野フライス製作所に対する「事前打診のないTOB」を表明。もし成立すれば買収総額は2500億円超となりニデックにとって過去最大の買収となる。2日10日、西本達也副社長が、日本物流新聞の単独インタビューに応じた。

――なぜ牧野フライス製作所(以下マキノ)だったのか。
「ニデックマシンツール、同オーケーケー、TAKISAWA、PAMAのラインナップを見ると歯車加工機、門形五面加工機、横中ぐり盤、旋盤、高剛性のマシニングセンター(MC)などがありますが、MCのラインナップはまだまだ拡充余地があり、放電加工機は持っていない。ラインナップはそこそこあっても、中国・東南アジア市場と強化余地のある地域市場や、開拓途上の産業などグラデーションもあります。地域や業種での弱強などを総合的に見たとき、もっともシナジーが発揮できる相手はどこかを考えた結果です。工作機械の世界市場は10兆円強で、MCが全体の40%。この40%の大市場を強化したい」
「機械事業を強くするために、ぶつかるところが少なく、補い合えるところが多い会社の候補が数社あり、そのうちの1つがマキノさんでした。マキノさんは横形MCに強く立形MCもしっかりしている。我々にはない放電加工機もある。半面、我々が強い門形五面加工機や横中ぐり盤はもっていません。レーザー加工機はぶつかっていますが、市場が拡大しており共存共栄できる。一緒にやれば両社にメリットがある。前述のマキノさん以外の候補社は経営陣とのつながりもあり、時間がかかるにせよ説得できぬことはないと思いましたが、マキノさんとは経営的つながりが薄く、なかなかそういう道筋が見えない。そこで同意なきTOBで粛々とやっていく方針を固めました」
――両者のシナジーはあるでしょう。しかしディスシナジー(マイナスの相乗効果)もありますね。
「ディスシナジーでいえば、ニデックはモーターや減速機、プレス機事業を行っているので、競合している部分に短期的にはディスシナジーが発生する可能性はありますしご心配も理解できる。長年のプレス事業での買収や、三菱重工工作機械(現・ニデックマシンツール)などの買収でも経験してきましたが、時間をかけて競合するユーザーにご説明してきました。ユーザーの企業秘密が当社の競合部門に伝わることは、威信にかけてないですし、私や、二井谷(春彦ニデックマシンツール社長)をはじめ経営幹部が訪問し説明させていただく。そこは1年かけても、2年かけてもやります。大半は戻ってきてくれていますがそれでも『ニデックとの取引きは困る!』というところもある。ただ、ニデックグループ自体も製品を作っており工作機械のビッグユーザーです。グループ内・及び親密顧客様の需要だけで、減った分を十二分に補えてきました。機械事業本部だけで12の買収をしてきましたが、ディスシナジーが大きな問題になったことはありません」
――中国金型工業協会がTOBに懸念発表をしたとの報道も。
「誤解があったのだと思います。各地の金型協会や取引先、お客様からは懸念するご意見はなく、仕事が増えると、むしろ歓迎する声を頂いています。中国国内の金型業界で非常に重要な位置付けである浙江省金型協会と2月8日に会談し『もしマキノさんと一緒になっても不利益はない。むしろ当社には金型の旺盛な需要があり取引を拡大したい』とお伝えし固くシェークハンドしました。その他地域の金型協会や取引先などでご心配なことがあれば、私が直接行ってご説明申し上げます。我々を知らないところは『敵対的TOBをするとは酷い』とイメージを膨らませ、いろいろご心配されています。私は係る方々にはフットワーク軽く、直接お話しする機会を増やしています。我々が過去に実行してきたことと、M&A及び買収後PMIの方針について誠意を持って話せば分かり合えるものですよ」
――ニデックの工作機械カテゴリーが拡大するにしたがって直販志向になっていくことは。
「それはあり得ません。日本の工作機械の販売網(特にMC・旋盤等)は、代理店や販売店の各々の努力によって全国津々浦々に入り込んでいます。その一つ一つに我々の営業パーソンを張り付けるのは極めて困難です。また各社ごとの商流も地域性も特色があり、代理店さんや販売店さんに対しニデックが中央集権的に口出しすることはありません。代理店さん、販売店さんにお任せするほうが合理的です」
「商社さんからはよく『直でやるんじゃないか』のほか『型番の廃止を強行するのでは』とのご心配を頂きます。ニデックグループに入る前は経営が不安定でトップが変わるたびに不採算械の廃止が行われていた企業も、ニデック入りしてそれが逆になくなったと流通からは好評ですよ」
浙江省金型協会に、説明を赴いたニデック西本達也副社長(右から4人目)、荒木隆光専務執行役員(同3人目)
(日本物流新聞2025年2月25日号掲載)