インタビュー
徹底的な提案と顧客との関係強化へ
- 投稿日時
- 2021/09/13 13:48
- 更新日時
- 2024/08/19 13:21
サンドビック 代表取締役社長 山本 雅広 氏
すべてがポジティブに向かっている--。サンドビックの山本雅広社長(日本法人代表)は、日本も含めた切削工具市場をそう分析する。戦略上重視するプロセスの改善に向けて、徹底的な技術提案と顧客との関係強化を担う新たな役職を設けた。
-工場稼働率の指標とされる切削工具市場が回復基調に変わりました。
「サンドビックがセールスエリアとして位置付けている、米国、ヨーロッパ、アジアのすべてがポジティブに向かっています。2021年第2四半期には、コロナ禍以前の19年のレベル近くまで回復していました。足元は自動車と一般機械が非常に好調、航空機とエネルギー関連でも回復に向かう兆しが出ています」
-日本の受注環境はどうですか。
「19年のレベルに追いつきそうです。金属加工業界が持ち直していることは間違いなく、今年7月単独では19年同月実績以上の結果が出ています。先程挙げた一般機械には半導体も含めているので、大きなポーション(割り当て)が今後期待できそうです。工作機械の受注回復も、機械搭載工具に力を入れている当社にとっては良い話。代理店様、販売店様によるチャネルビジネスも好調です。市場回復に加えて、組織改革や大手案件獲得などの戦略も奏功し、21年第3四半期には少なくとも19年同期を越えると予想しています」
-組織改革の一環として、アプリケーションスペシャリストとアカウントマネージャーを新設しました。
「前者は徹底的な技術提案、後者は顧客との関係構築が目的です。当社は、航空機、自動車、ソリッドツール、機械搭載工具など、セグメントごとに専門部署を設けていますが、両者は『よりお客様に近い存在』として最適なプロセスと付加価値につながる道筋を提示します」
-もう少し具体的に教えてください。
「一般的なセールスではなく、コンサルタントのような役割です。加工時間を減らせれば、CO2排出量や電気料金も減らせる。そういった具体的なメリットを、切削工具の観点から提案するイメージです。とくに、アカウントマネージャーはニーズに合わせて必要なサポートを検討し、アプリケーションスペシャリストや各専門部署につなげる役割を担っています」
■増加するデジタル提案
-デジタルメニューも増えてきました。
「『CoroPlus』として、推奨工具・条件の提示、工具管理、ツールパスの最適化、モニタリングなどを取り揃えています。なかでも、長い突き出しの加工に使用する防振工具『Silent Tools Plus』は、熟練工が切削音や切りくずで判断していた部品内部の加工状況をモニタリングし、予防保全や問題解析・改善につなげられる点が好評です」
-今年6月、工作機械の稼働率や停止原因などを可視化する『CoroPlus マシニングインサイト』を市場投入しました。
「後付け可能なメニューとして、工作機械メーカーと連携を進めているところです。切削工具側の情報もフィードバックできます。来年には、メンテナンス時期を知らせてくれる回転工具仕様を発売する予定です。メニューが増えても、闇雲にデジタルを推奨するつもりはなく、必要とされるお客様に対して専門部署が提案するスタイルを続けていきます」
-日本におけるシェアをどう見ていますか。
「皆様が想像されている数値とほぼ近いと思います(笑)。確実に言えるのは、シェアは確実に伸びています。瀬峰工場で特注仕様も請け負っていますので、マーケットのニーズを満たす体制が整っています。WEBから準標準品の注文をしていただける『テーラーメードサービス』であれば、さらに短納期で対応できます」
-製販ともに体制が整ってきました。
「課題は多いです。グローバル企業にも関わらず、情報の伝達スピードが遅い。世界の情報をいかに早く社内外に伝えていくか。そのスピードが差別化につながると考えています。SDGs、環境対応、デジタライゼーションなど、昔の時間軸で考えているようでは世界の動きに対応できません。そのための社内改革を現在進めています」
-生産財ビジネスの在り方が変化しています。
「セミナーやトレーニングがオンラインに代わったことは、早期対応できていた当社にとって強みになりました。今後販売店様に対して、営業力強化につながるイベントをさらに強化する予定です。販売店様とともに築いてきたチャネルを太くして、ビジネスチャンスを広げていく。そのためにも、まずサービス強化にリソースを投入していきます」