インタビュー
ニデック 副社長執行役員 機械事業本部長 西本 達也 氏
- 投稿日時
- 2024/11/12 14:59
- 更新日時
- 2024/11/12 15:05
ニデック、プレス事業でラストピース揃う
ニデックは10月1日、プレス加工用の後工程(トランスファー)などプレス機周辺装置を手掛けるLinear Transfer Automation Inc.(カナダ)と同関連会社の買収を発表した(以下リニア社)。
カナダの後工程メーカー買収
高収益モデル「工作機械部門」に横展開へ
ニデックのプレス機事業は小型高速プレス機を主体とし2011年度の売上は70億円程度であったが、翌年度からM&Aをその成長施策に加え、2023年度には約700億円まで伸ばした。「小型高速プレス機から超大型サーボプレス機までプレス機本体のラインナップを充実させ、加えてプレス機事業の前工程である大小送り装置、アンコイラー、レベラーなどをグループに加えることで、多種多様な産業のお客様にプレス機のライン一式を提供可能となり、ライバル大手各社に比べ安定的により高い利益率を確保できるようになりました。この高収益化モデルのいわば最後のピースが今回の買収です」(西本達也副社長)とする。リニア社はプレス後工程の搬送自動化装置の開発・製造・サービス等、を提供する企業。米国の大手自動車メーカーや同ティア1・2等に対し強い実績を持つ。
プレス機事業で成功したこのトータルソリューション・高収益化モデルを今後工作機械事業へ横展開し「工作機械業界においても圧倒的な存在感を確立したい」(同)と言う。
――小型プレス機のキョーリのグループ入りから、プレス事業を育成してこられた。後工程のトランスファーを得意とするリニア社買収は、同事業育成における重要なポイントだったとみているが。
西本 小型プレス機のキョーリに製品・地域・市場の分散を目的に2012年に中・大型プレス機のミンスター(米)、自動車産業への拡大を目指し15年に超大型のアリサ(スペイン)を買収しました。これでプレス機のラインナップは揃い競争優位を獲得しましたが、営業利益率は一桁台後半でした。プレス加工のキモは送り装置で、プレス機とのタイミングが合わないと下手な餅つきの様に杵が手を叩いてしまう。杵と手が連携すれば極めて大きなメリットになりますよね。17年に小型高速高精度送り装置のヴァムコ(米)、19年に同じく送り装置メーカーでヨーロッパに強いSYS(独)と買収。さらに超大型プレス機用の送り装置メーカーとして定評のあるAutomatic Feed Company(米)を5年越しの交渉の結果、23年に仲間入りしてもらい、前工程の整備が完成。お客様に大きなメリットをもたらし、当社利益率も大きく改善しました。
――前工程の整備に続き、後工程のトランスファーをグループ化出来れば様々な面でメリットがあると。
西本 後工程を担当するリニア社を買収することで、様々な相乗効果が現れます。中・大型、超大型プレスの後工程の整備はお客様に更なる生産効率性を提供できるという意味合いで我々にとり極めて重要な課題でした。米国の完成車大手はリニア社製品を指名買いすることが多いです。またアリサのプレス機をカナダで、リニア社の製品を中国工場(浙江省平湖市)で作るなどグループシナジーもあります。リニア社との買収交渉は2016年からの紆余曲折を経て、今回の合意に至りました。プレス機と前工程、後工程を顧客は一体で揃えられるので、設備投資が低く抑えられます。その分我々のお客様へのソリューション提供力が格段とアップしますよね。
■次は、工作機械事業で展開
——30年に機械事業本部で1兆円の売り上げを目指されていますが、伸びしろが大きいという意味では、プレス事業以上に工作機械部門でしょう。
西本 今回のM&Aでプレス機事業は必要な機能をおおむね確保できました。対して工作機械部門はミッシングピースがまだまだあります。サービスやパーツ事業を含む総合プレスビジネス集団として、お客様にも喜ばれながら業容を拡大してきたプレス事業に対し、工作機械部門ではそこまで至っていません。
——工作機械部門もプレス事業のようにしていかねばならないと。
西本 ええ。工具やパーツのラインナップやサービスを強くしていきたい。工作機械メーカーのM&Aにメディアの感心が集まりますが機械のラインナップ拡大のみが重要ではないのはプレス機事業で説明した通りです。機械を大中小揃えながら、周辺領域の工程やソリューション・サービスの整備を進め業種と地域、市場を分散することで安定高収益化を実現させるという成功モデルを工作機械でも応用してまいります。
(日本物流新聞11月10日号掲載)