インタビュー
ナガセインテグレックス 代表取締役社長 長瀬 幸泰 氏
- 投稿日時
- 2024/10/28 14:46
- 更新日時
- 2024/10/28 14:53
『超越』精密を導く6台の新機種
超精密加工で知られるナガセインテグレックスが、JIMTOFで「超越精密」を打ち出す。最高の加工品質は大前提に、生産性の向上や非熟練化をも叶えるという文字通り超精密を超えた新たな概念だ。今展ではそれを体現する6台の新機種とAIを用いたシステムを披露。長瀬幸泰社長は「どこにも負けない加工品質を、従来の数倍の能率、数分の1のスペースで実現する」と語る。
超精密加工を超高能率で
――「超越精密」という耳慣れない言葉が出展テーマです。
「超精密の先にあるもの、今までの超精密を超える概念と捉えて頂ければ。そもそもナガセは常に新しい概念による新たな価値を創造してきたメーカー。40年以上前に『超精密』を提唱し、それまで不可能だった加工品質を実現しました。しかし今や超精密は品質を指す言葉として一人歩きしています。また時代は生産性向上や非熟練化、省人化を求めています。表立って宣伝こそしてきませんでしたが、我々の超精密加工機は実のところ、品質だけでなくそれらあらゆる課題の解決をも包含したマシン。品質だけを指す超精密とはまったく別次元の価値を生むことが可能で、それがすなわち超越精密です」
――今展では超越精密、つまり超精密加工を高い生産性で誰もが行えるような機械・システムを披露されるわけですね。
「例えば今回披露する超精密門形平面研削盤『SGD-3012SLS2B-Zero4』は加工時間が従来の3分の1になる事例が頻出しています。動剛性やテーブルの送り速度、作業性など諸々の要素によるものです。しかも面積は従来の半分。また超精密ロータリマルチ研削盤『RG-700SLS2-N2』はアルミナセラミックスで1パス200㍈の切込み量と、従来の10倍、下手すれば20倍の加工能率です。数字が極端なので常識が邪魔をして営業トークに感じるかもしれません。ただ実際、我々の機械を導入されたお客様は品質はもちろん生産性が飛躍し、端的に言えば儲けておられます」
――出展機の大半が常識に囚われずマシンの理想構造を追求する「IGTARPデザイン」採用機です。
「IGTARPデザイン採用の門形平面研削盤『SGXシリーズ』は常識を排して理想的な構造を追求した結果、半球のような形に。実際、従来の機械と形も機能も違うわけです。我々は今回展で『異次元・異空間・異形態』という概念を強く提唱します。異次元・異空間の加工を実現するマシンは、まさに異形態です。これからは人手不足も今までと次元が違う。日本の製造業の今後を考えれば小手先の改善でなく、今までとは違う次元、違う景色を思い描くことが必要。そのために従来とはまったく形態が異なる設備を受け入れなければ、という我々からの問題提起です」
■AIが研削を変える
――AIを用いた砥面観察システム「GRIDE EYE」も披露されます。
「回転中の砥石表面をつぶさに観察できるわけで、画期的だと思います。しかもAIはマラソンを短距離走の早さで走るような速度で進歩しており、こうしている今もGRIDE EYEの解析精度が上がっています。同じ撮像結果でわかることが格段に増え目が離せません。砥石軸内にセンサーを搭載し実加工中に研削抵抗を測れる『NPXスピンドル』も披露します。これらのシステムで得られるデータで適切なドレスタイミングを判断できます」
――加工中の現象が可視化されると超精密加工の非熟練化が可能になりますね。
「従来は熟練技術者が音や視覚で判断していました。しかしこれらはすべて定性であって定量ではない。個人の感覚が物差しになっています。ナガセは長年、その暗黙知を定量的に数値化してきました。数値化されれば制御の対象になります。これこそすなわち製造現場のDXです。この流れを汲む、推奨加工条件を自動で導くAI研削盤もお見せします」
――「SES」という加工ソフトは詳細が明らかにされていません。会場でのお楽しみですか。
「ええ、少しくらいそういうものがあっても良いのではないかと。これも面白いですよ。詳細は伏せますが加工能率が格段に上がります」
――改めてJIMTOFの来場者へコメントを。
「日本の製造業の勝ち筋は人材と設備への投資を絶対に緩めないことだと思います。海外のお客様に生産性が高い理由を聞くと『常に設備投資を緩めないからだ』と返ってきますが、まさにこれが答えではないかと。日本は優秀な人材の育成には腐心しますが、同時に設備投資もしっかりしなければ。『投資』ですから目の前の仕事を安く済ませるのではなく、先々を見据えたとえ素材や要求品質が変わっても加工できる、変化を先回りした設備を選ぶべきです。後々生まれた新技術をビルドアップできるよう、ベースがしっかりしている必要もあります。我々も今展で10年経っても価値が変わらないマシンをご提案します」
超精密門形平面研削盤『SGD-3012SLS2B-Zero4』は加工能率が従来比3倍に。スペースも同一加工面積比で「業界最小」だ
(日本物流新聞2024年10月25日号掲載)