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インタビュー

岡本工機 代表取締役社長 菊地 正人 氏

ロボット向け歯車を大量生産、振動・騒音抑える超音波研削

「傘歯車が強いが、ほとんどすべての歯車はつくれる」と言う岡本工機は日本屈指のオーダー歯車の量産メーカーだ。自社製の研削盤を使い、世界で唯一の「超音波援用歯車研削」で製造する歯車は、高速回転で高性能を発揮する。

同社としては近年では珍しくシカゴショーに出展し、米国を攻めると話す菊地正人社長。趣味はお酒とカラオケでサザンオールスターズを歌うことだそう。

−−最近の景況感は。

「残念ながらあまりよくなく例年並みといったところです。ウクライナ戦争あたりからおかしくなってきたようです。お客様の多くは自動化の悩みを抱えているので、昨年の夏までは自動車から半導体、スマホ関係の設備投資でロボットの生産が間に合わないくらいに忙しく、ロボットメーカーさんと毎週Web打合せで納期調整してましたね。当社がつくる歯車の半数近くはロボット向けで、次に多いのは船外機と減速機向けでそれぞれ1割弱。ほかは農機具や電動工具、印刷機械、自動車向けです」

−−ギヤ増産の準備をされていたのでは。

「お客様から将来的に伸びるから設備投資してほしいと言われて、2度目の投資に踏み切りました。昨年3月に工場を竣工し、46月に50台ほどの機械とロボットを入れて12の自動製造ラインを作って準備しました。ところが戦争でロシアの市場がまずなくなりました。ロボットだけでなく船外機などもすべて在庫調整となり、中国景気の悪化も重なりました。船外機市場はコロナ禍により、レジャーを兼ねて船上でWeb会議するのがアメリカなどで流行ったせいで大忙しになった時期もありましたが」

−−歯車を軸に研削盤なども製造されています。

「当社事業の第1の柱は歯車で国内で月におよそ30万個、中国で10万個の計40万個つくっています。月産能力としては60万個あります。第2の柱はアングルヘッド、減速機、刈払機ギヤヘッドなどのギヤアッシー製品。第3の柱は内外端面複合・両頭・内面研削盤、スライシングマシンなどの工作機械です」

−−今後の見通しは。

「自動化は必要ですからロボット需要は必ず上向きます。他の設備投資も増えるのは間違いありません。ただ、この1年間では在庫は解消しないので来年以降でしょう」

−−貴社の歯車の特長は。

「『超音波援用歯車研削』は世界で当社だけの加工法です。超音波を利用して歯面に微小な凹凸をつくり、そこに油が入り込みます。潤滑性が増し振動・騒音を抑制し、耐摩耗性も向上します。歯車加工用の設備やカッターは内製しており、熱処理も自社で行い一貫生産ができます。歯車屋でここまでできる会社は珍しいと思います。当社には協力会社もたくさんあり外注することもできます。当社が一貫生産をしていて仕事の内容がよくわかっているから任せられます。不具合があった際に対応できますから」

−−保有する設備機械はものすごい台数です。

「自社開発機を含め国内外で歯切盤136台(傘歯車、平歯車)、研削盤70台、旋盤53台、歯車研削盤は45台。このほかマシニングセンタやブローチ盤なども多数保有し、熱処理炉は4基あります」

−−ギヤスカイビングマシンを1台だけ保有されています。今後増やしていくつもりですか。

「専用のカッターを用いるギヤスカイビングマシンは生産効率が非常に高く、加工時間も短縮できます。加工精度も高く大量生産に向きます。当初はカッターの性能が低く切れや持ちが悪かったのですが、ノウハウが蓄積され今や各社が高性能なカッターを用意しています。でもすべてがスカイビングに置き換わっていくわけではありません。径の異なるギヤが近接する2段ギヤの加工にはカッターが干渉するためスカイビングマシンは使えません。できる仕事が増えればマシンも増やしたいです」

−−新たな需要開拓の計画は。

「新しい分野としてはビルや鉄道向け(駅のホームドアなど)の自動ドア、医療機器、縫製機分野などがあり、開拓していきたいです。あと、円安もあってアメリカでの仕事を模索しており、今年9月にシカゴショーに出展します。昔参加したことがありますが、近年では初です。現在のところ当社の米国のお客様は電動工具と製罐メーカーの2社だけ。当社は岡本工作機械製作所のグループ会社で、同社の世界中にある拠点をうまく利用させてもらいたいと考えています。その後はヨーロッパ、インドも開拓したいです」

9面減速機特集・岡本工機菊地正人社長P2.jpg

歯車研削盤「TGG-26-2W」(左)と立形複合研削盤「TVG-20C-2S」をロボットでつなぐ歯車研削ライン

■岡本工機株式会社


1975年設立、社員289

広島県福山市金江町金見2050

傘歯車に強く、歯車を月に約40万個生産(うち国内で30万個)

歯車製造部門と工作機械製造部門を、研削盤大手の岡本工作機械製作所から分離してできた岡本歯車(1973年)、岡本工機(1975年)が合併して設立。事業は歯車製造を軸に、歯車製品(アングルヘッド、減速機、刈払機ギヤヘッド)、工作機械(内外端面複合・両頭・内面研削盤、スライシングマシン)を製造する。製造拠点は広島県内に本社工場(傘歯車)、尾道工場(尾道市、工作機械・半導体製造装置・自動車ギヤ)、府中工場(府中市、熱処理・検査)、府中第二工場(府中市、平行軸歯車)の4つと、中国・常州市に100%出資の子会社をもつ。