インタビュー
スイデン 取締役 営業本部本部長 川合 雄一 氏
- 投稿日時
- 2024/07/01 09:23
- 更新日時
- 2024/07/01 09:29
好調の夏商戦、大型受注が牽引
スポットエアコンや送風機が欲しい季節になった。この分野のパイオニア・スイデンのもとには今期、夏の到来前から大型注文が舞い込むなど旺盛な需要が寄せられる。季節性の需要に応える一方、集塵機など環境商品にも一段と力を入れる方針だ。「やるべきことをやればまだまだ結果は出せる」と取締役営業本部本部長の川合雄一氏。夏の本格到来を控えた6月初旬、販売動向や今後の方針を聞いた。
つながり武器に提案型商品で成長へ
——昨夏は観測史上1位の暑さでした。
「個人的にもはや日本に冷夏は存在しないと思っています。もちろん気象学的にはありますが、例年より相対的に気温が低いだけで人体にとっては十分猛暑。以前は冷夏予報が出ると影響を懸念していましたが今は気にしません。どのみち暑いんです」
——需要も多かったのでは。
「全体的に好調でしたね。幅広い商品の中で昨年の数字をけん引したのはスポットエアコン。夏季商品以外も伸ばしたいので良くも悪くもですが。例年との違いで、自治体・教育機関向けが夏の終盤にかなり上向きました。この動きは北海道から始まって東北に波及し、大型受注につながりました。暑さに慣れない地域も『移動できる冷房機器』を配備する流れが広がっています。我々の100V仕様の扇風機やスポットエアコンは電源を確保しやすい。全体空調に移行しても別の場所や用途で使えるのでムダになりません」
——今夏も酷暑予想です。夏商戦の動向は。
「今年は動きが早いです。大手からの大規模な注文など出だしが好調で、思いがけない時期に一時品薄になったほど。我々は見込み生産ではなく夏に入っても生産を続けるのでもともと夏商戦の後半が得意。今年も台数ベースで昨夏の実績を上回る予想です」
——売上ベースでは。
「昨年を超えると思っていますが、実は戦略的にスポットエアコンの価格を下げた。それがどう影響するかですね。ファンケースの材質など内部構造を見直し全体をスリム化しました。気密性を上げ、冷房能力は向上させ消費電力を下げています」
——力を入れる商品は。
「今年初めて発売した除湿機はよく売れています。スポットエアコンを扱う中で除湿効果の有無を聞かれることが多く需要は感じていました。湿度が下がれば不快指数も下がる。保管物も湿気から守れます」
——クーラーテントも展開しています。
「クーラーテントも好調。実は開発秘話があって、我々の工場に暑がりの社員がいます。ちょうど運動会で使う簡易テントがあったのでビニールシートで囲ってスポットエアコンの冷風を入れたところ、これがとんでもなく涼しかった(笑)。昨年は欠品も相次ぎ今年は生産を拡充しました。デモ機をお貸しした際の受注率がかなり高く、お客様の所有されているスポットエアコンを使える点も好評。中の数人を一気に冷やせるので休憩室にピッタリです」
■環境商品で成長
——課題はありますか。
「我々は工場扇などを『季節商品』、集塵機や屋上換気扇など提案型の商品を『環境商品』と呼びます。この環境商品をさらに伸ばしたい。季節商品は価格競争に引っ張られますし、アップデートに務めますが代理店やディーラーさんからすると差が見えづらい。だからこそ彼らとタッグを組み販売できる商品を伸ばすのが課題で、可能だとも思います。改めて考えると我々の強みはつながり。ディーラーさんごとに販売実績を共有できる独自の制度を設けており、それをもとに毎年、膝を突き合わせて来期の方針を話し合います。営業の最前線は30人規模で活動していますが、これだけの人数を割く企業は業界でも希少。営業の名前を知っていただいている場合も多いです。だからこそ環境商品はまだ伸ばせると思います」
——環境商品を伸ばす施策は。
「実は昨年から季節商品を営業の個人成績から除外しました。私もそうですが初心を忘れるのが人間。数字を伸ばすためあれこれ考えても、忙しさを言い訳にして後回しにしてしまうのは私も一緒です。だからこそ意識してほしかった。行動が変わった人は多いと思います。また、展示会での見せ方も変えつつあります」
——どう変えましたか。
「これまではブースに商品を並べる形でした。クーラーテントも展示していましたが、思いのほか認知されていなかった。スイデンの荷物置きと思われたのかもしれません(笑)。アピールしているつもりができていなかったのは落とし穴。そこで直近の展示会ではブースではなく商談スペースへ置かせてもらいました。それで複数の受注が生まれています。認知の広げ方ひとつでもまだ課題があります」
——提案型で成長を果たす。
「日本は島国なので工場が次々と建つことはなく、言ってしまえば取るか取られるかの世界です。その点、環境商品はターゲットが明確で他社の牙城をひっくり返す道筋が見えやすい。ディーラーさんと共に戦略も立てられます。営業個々の持っている力を十二分に発揮した上で、当たり前のことをやればまだまだ伸ばせる。こんなものじゃないと思います」
スポットエアコンと合わせて空間全体を冷やせるクーラーテント(左)と、冷房能力は上がり消費電力は下がったスポットエアコン「SS-25EL-1」(右)
(2024年6月25日号掲載)