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インタビュー

ハイオス 代表取締役 戸津 勝行 氏

投稿日時
2024/03/29 18:00
更新日時
2024/03/29 18:00

高精度のネジ締めが実現する生産性向上と環境負荷低減の両立

1970年の設立から半世紀以上に渡り、ネジ締結に最適な産業用電動ドライバーを開発し、時代のニーズに合わせた革新的な製品を上市してきたハイオス。その屋台骨を支えるのが社長であり、エンジニアであり、発明家である戸津勝行社長だ。自ら陣頭に立ち製品力の向上を目指す姿勢は年齢を重ねても衰えるどころか、勢いを増す一方だ。

――直近の需要動向を教えて下さい。

「自動車メーカーや電機メーカー、住設メーカーなど業種を問わず『熟練工シリーズ』が好調です。IoT化に伴い、ネジ締めの工程もクラウドで一元管理されるようになっています。ネジ締め工程をリアルタイムで管理し、そのデータをもとにどの部分を改善すべきかを導きだせますし、トレーサビリティ管理も容易になります。以前に比べネジ締めの持つ価値が改めて見直される時代になっています」

――いずれの製造現場においてもこれまでネジは軽視されがちでした。

「当社は中国・東莞にネジの生産拠点を持っていますが、日本と変わらないレベルの設備で高品質のネジづくりを行っており、こちらが右肩上がりの成長を続けています。昨今、東莞のネジ生産拠点には、中国ローカル企業からのオーダーが増加しています。特に自動車関連のメーカーが多いですね」

「これまで中国のモノづくりはそれこそ『安ければ良い』でしたが、生産におけるボトルネックや歩留まり率を考慮すると、ネジに行きつきます。かつては安かろう悪かろう、であった中国のモノづくりもネジ一本のクオリティを気にする時代です。国内外を問わず、モノづくり企業が今後グローバル市場で勝ち残るためには、高品質のネジと高精度のネジ締結は必要不可欠なファクターとなっています」

――昨今では貴社がいちはやく世に提案してきた技術を模倣するメーカーも増加しています。

「当社は来年創立55周年目を迎えるなど、長きに渡ってネジ締結業界を牽引して築き上げてきた膨大なノウハウと様々なメーカー様と一緒に培ってきた強固な土台があります。後ろを見るより前向きに、自社の製品をより良くすることを考えています」

■人と環境に優しい製品開発

――以前より提唱されている次世代ネジ「インタトルク」の採用状況は。

「より高度なモノづくりをされているメーカーからの採用が増えています。国内外の大手自動車メーカーから精密機器メーカー、ロボットメーカーまで幅広い業種において、ようやくインタトルクの優位性が周知されてきています。ネジ締め不良がなくなれば、ネジそのもののロスだけでなく、製品そのもののロスも減らせますから」

――ワークロスや生産性の向上は省エネ・省資源にも繋がります。

「当社は創業時から『人に優しく、環境に優しい製品』の開発を続けています。カーボンニュートラルやSDGsといった言葉が無かった時代から、いかに地球環境に負荷をかけず、電動ドライバーを使う人のクオリティオブライフに繋がるかを考えて技術革新してきました」

――貴社のねじ締結システムは一昨年の第5回エコプロアワード「奨励賞」も受賞されています。

「製品のライフサイクル全体を見通すと、やはりネジからこだわる必要があります。そういった当社の取り組みが改めて評価されたのだと思います。現在はリサイクル、リユースの観点からもネジを確実に締めるだけではなく、確実に『締めて、緩める』製品の開発に注力しています」

――差し支えなければ開発中の製品についてお教え頂けますか。

「すでに一部特許も取得しているのですが、ビットの部分に改良を加えたものを開発しています。ビットが高速回転していてもしっかりとネジ頭に確実に嵌合するので、締め付けも緩める作業も効率の良い作業が行えます」

――今後についてお聞かせ下さい。

「創業から50年以上が過ぎましたが、よりいいものを作りたい、便利なものを作りたいという気持ちは変わりなく持ち続けています。これは技術屋の本能というか、職業病みたいなものです(笑)。これまでも、これからもネジでお困りの現場のお役に立てるソリューションを提案していきたいと考えています」

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デジタルドライバー「熟練工BLG-BC2シリーズ」

「トツねじ」と「インタトルク」

ハイオスを語る上で欠かせないのが、1970年代に発売したネジ頭の中央部に窪みをつけた「トツねじ」の存在だ。ネジに窪みを付け、ドライバーのビット先端部に凸部を作ることで、ネジの嵌合性が飛躍的に高まり、ネジ締め不良を激減させる。かつては精工舎や任天堂の初代ゲーム&ウオッチにも採用されており、見たことがある方も少なくなかろう。

インタトルクはヘキサロビュラと呼ばれる六角形状のネジ頭に窪みを付けたもので、プラスネジに比べ摩擦係数が高くネジ頭をなめにくくより精度の高い締結を可能にする「トツねじ」の進化版だ。これからの時代の変化には、ネジの変化も必要になってくるだろう。



2024325日号掲載)