インタビュー
ヤマザキマザック 代表取締役社長 山崎 高嗣 氏
- 投稿日時
- 2024/02/27 17:28
- 更新日時
- 2024/02/27 17:33
工場新設はインドへのコミットメント
10年ぶり6カ所目の新たな海外生産拠点を、インド南西部プネーに据えたヤマザキマザック。同地で生産する立形マシニングセンタ(MC)は競争力が高く、いわゆる「ジョブショップ」と呼ばれる層の新規顧客開拓に効果的だ。ここに日本製のハイエンド機とシンガポール製の旋盤もミックスし、さまざまな顧客層へ最適な機械を届けて成長を果たす。山崎高嗣社長は「工場新設はインドへのコミットメント」と語り、同地に根を下ろした実直なモノづくりを志向する。
インド生産機で新規顧客の開拓へ
——インド工場を新設されました。かなり以前からインドでの生産を志向していたとか。
「実は初めてインドを訪れた28年前から、いつかインドでマザックの製品づくりをしたいと考えていました。海外戦略上、より早期の市場拡大が見込まれた中国に先に2つ工場を作りましたが、結果的にインド工場はふさわしいタイミングで新設できたと思います。伸び行く市場であり、世界中が熱い視線を送ります。モノづくりが今後大きく育つであろうことは確信に近い思いです」
——28年前と状況は変わりましたか。
「変わった部分もそうでない部分もあります。当社の工場に向かう郊外の沿道の風景はあまり変わりありません。ただプネー中心部は綺麗なホテルが並び外資系企業も多く進出しました。我々のユーザーでは、日本製のハイエンド機を自動化システム付きで導入する例が年々増えています。直近も大型の横形MCと自動ストッカをセットで受注しました。インドには自動車や農機、一般産業機器、医療機器など様々な顧客がいます。それらティア1・2の企業が我々の主力ユーザーですが、より客層を厚くする狙いからインドで生産する立形MC『VC-Ez』はジョブショップをターゲットに開発しました」
——日本製ハイエンド機とインド製立形MCの2段構えで攻勢をかける。
「さらに言えば旋盤はシンガポールで生産しており、インドに短納期で出荷できます。旋盤はシンガポール製を、立形MCはインド製を提供し新規層を開拓します。インドはローカル工作機械メーカーも多く、他にも台湾や一部の米国メーカーなど価格競争力の高い競合が多い市場。VC-Ezは機能とコスト、品質のバランスを追求し、ジョブショップ市場も開拓できる戦略的な機種にしました。直近の実績でもVC-Ezの導入先の新規ユーザー比率は6割超と思い描いた通り。既存のお客様にも積極的に宣伝しています」
——エントリー機として良い滑り出しです。
「我々がインドに初の拠点を置いたのは1998年。そこから25年が経過し、営業・サービスなどの各職種において優秀な人材が揃ってきました。加えて確立された販売・サービス網と顧客層は、新たな機械を新たな顧客に提案するうえで大きなアドバンテージでした。VC-Ezは停電や暑さなど現地事情を考慮しつつ日本で開発しています。製造スタッフも日本で数カ月の研修を行い、当社が大切にする工程管理や品質管理を浸透させました。まずはVC-Ezのユーザーに利益を上げ品質に満足してもらう。いつか成長を遂げ日本製のハイエンド機を所望いただければ、我々のインド事業における1つのゴールです」
——長い目線のインド工場の方針は。
「まず今年に月産40台、中長期で月産100台を目指します。VC-Ezは現行の2機種より大型の機種を来年にかけ投入予定です。将来的に工場を拡張できる敷地があり、今後は立形MC以外の生産も考えています。まずは良い物を安定して生産し評価を得る。その後、東南アジアを中心としたインド国外への輸出も視野に入れています。工場は最初の3年が重要。マザック流とインドの人々の考え方を融和させた運営を3年でしっかり根付かせます。VC-Ezを導入いただいたユーザーを訪問すると概して好評でリピートしたいとの声もありました。今後もお客様の現場の声を聞いてニーズを発掘し、製品開発につなげてまいります」
■インドで根を下ろした事業を継続する
——ベンガルールで開かれたIMTEX FORMINGも見学されたとか。
「半日ほど視察しましたが、中国メーカーにインドメーカー、そして日系も欧州勢もあり世界の縮図を見た思いでしたね。膝元に巨大市場を抱えるレーザ加工機のローカルメーカーは徐々に台頭してくるのではと感じます。今後の我々のレーザ加工機のラインアップを考えるうえで参考になるショーでした」
——インドで重視する市場は。
「さまざまな市場が伸びています。例えばインドで多いトラクターは横形MCの得意分野。インドは一大農業国で農機具は今後も市場拡大が続くと見ています。自動車も伸びが期待できます。人々の購買力が上がれば2輪から4輪に乗り換える波が来るでしょうし、すでに到来しているとも感じます。実感として人々の消費行動はこの10年でガラリと変わりました。良い車に乗りたい人も増えています。その対象がEVか内燃機関車かは見極めが必要ですが」
——インドの航空会社の航空機の大口購入が続きますが、航空機向けは。
「航空機も大いに伸び代がある。我々のインドにおける航空機向けビジネスもここ2、3年で本格化しました。航空機部品のサプライヤー網がインドまで広がっています。大手顧客からの民生用航空機の部品加工案件が増えています。インドは大きな国。所得が豊かになれば移動も車や列車から飛行機へシフトするでしょう」
——人口が14億人を超える国ですが、自動化需要は。
「大手へ納める機械は大半が自動化システム付き。我々のビジネスの実績だけでも、自動化ニーズはことのほか早く顕在化していると語れます。我々はインドで治具を設計し機械に載せ一緒に提供しています。ターンキー専門の部隊もおり、強みの1つです」
——工場の新設含め、インド市場を本気で攻める意思を感じます。
「工場の新設はインドのお客様やインド市場に対する我々のコミットメントでもあります。この地に根を下ろした事業を継続するという意思の表れです。長く使う機械ですから、メーカーのバックアップ体制は購入を決める重要な要素です。マザックなら任せられると感じていただければ幸いです」
(2024年2月25日号掲載)