インタビュー
ダイヘン 取締役 専務執行役員 森本 慶樹 氏
- 投稿日時
- 2024/01/11 11:13
- 更新日時
- 2024/01/11 11:18
溶接機大手ローヒ社とのシナジー早期実現へ
昨年、アーク溶接用途に向く「業界初」の協働ロボットを市場投入したダイヘン。溶接メカトロ事業(旧セグメント名)の国内販売子会社であるダイヘンテクノサポートの吸収合併や、ドイツの大手溶接機メーカー・ローヒ社の買収など、組織再編や欧州市場の販売網強化に取り組んだ。同社・森本慶樹専務に昨年の需要動向と次年度の見通しについて聞いた。
強みを軸に、売上伸長の布石とする一年に
――昨年の溶接部門の需要動向についてお聞かせください。
「市況が回復傾向の造船は、ゼロエミッションに向けた新燃料開発の機運により今後も回復が続く見通しです。自動車はコロナ禍・半導体不足による減産が解消しつつあり、生産台数が持ち直しました。具体的な設備投資や、EV投資関連の引き合いが増えています。鉄骨は首都圏の再開発が精力的とされていますが、実際は止まっている雰囲気です。しかし潤沢な工事需要により、結果としては高水準に推移するとして見通しは悪くありません」
――FA部門の需要動向はいかかがでしょう。
「FA部門の売上比率は海外が7割で、最も大きな市場である中国の景気が悪く影響を受けています。米中貿易摩擦によりアメリカへの輸出が停滞し、不動産危機の影響で需要が低調です。中国大手EVメーカーの設備受注によりカバーしているものの非常に厳しい状況です。大手EVメーカーの案件を糸口に、水平展開できればと考えています。米国はEV関係が堅調で、新製品の協働ロボットやシンクロフィードを武器にしっかり取り組みたいですね」
「国内においては大手自動車メーカーEV投資が本格化しており、対前年比30%以上と非常に好調でした。他には協働ロボットを起爆剤として活性化させたいです」
――溶接部門の売上に寄与した製品をお聞かせください。
「注力したのは『Plasma Jet TIG』です。非常に高効率で溶接スピードが速く、溶接品質もいい。お客様にも認められ売上が伸びており、今後も力を入れます。海外向けにも展開を考えています」
――FA部門で好調だった製品は。
「シンクロフィード・エボリューションが好評でしたね。溶接品質を上げてスパッタを低減し、アルミの異材溶接も可能。この製品を今後も軸とし、海外向けにも出していきたいです」
「後発ではありますが、溶接用に最適な協働ロボットを発売しました。産業ロボットと同等の高精度を保った協働ロボットで昨年の国際ロボット展にも出品しました。もちろん溶接用途に限らずハンドリングとしても使っていただけます」
■欧州へ攻勢、シェア拡大へ
――ダイヘンテクノサポートを合併されましたが、変化は。
「事業部の傘下に営業部隊を統合することで、意思決定が非常に迅速になりました。指揮系統も明確になって、営業効率が上がったと認識しています」
――ドイツの溶接機大手ローヒ社を買収したことも大きな動きですね。
「今年1月から正式子会社化となりましたが、どういう風に製品を融通しあうか、どのような市場を攻めるか早くから協議を進めています。2023年度内の売上に寄与するよう早急に立ち上げたいです」
――24年は貴社にとってどのような位置付けになると考えていますか。
「アーク溶接を含めたすべての接合を我々の事業領域の範疇にしていきたい―、こういう大きな目標に向かって開発に力を入れると共に、評価されているCSJ(固相抵抗スポット接合システム)の製品化を着実に進めます。溶接に留まらず、新しい接合事業として脱皮、成長していく。そのための布石の一年としたいです」
「また、ローヒ社買収を足掛かりに、欧州市場で売上高200億円を目指しています。達成に向け、世界プレイヤーとしてさらに成長するためにも、ローヒ社とのシナジーを早く引き出せる製品に取り組みます」
産業ロボットと同等の高品質溶接を実現したアーク溶接用途に向く協働ロボット「FD-VC4」
(2024年1月10日号掲載)