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インタビュー

山崎技研 代表取締役社長 森尾 孝博 氏

投稿日時
2023/09/22 09:00
更新日時
2024/08/19 13:18

高知発、人にやさしいマシニングセンタ

山崎技研のフライス盤は人によく馴染む。高い接近性と独自のハンドル・レバーによる操作性、そしてプログラム不要の加工ガイダンス機能が段取り時間を短縮。これが単品加工の相棒として支持を受ける理由で、NCフライス盤では国内トップシェアだ。その同社がこのほど、25年ぶりに国内向けマシニングセンタ(MC)を発売した。森尾孝博社長は「MCでありながら汎用的な使い方ができる」と独自の強みを打ち出す。

――直近の受注環境は。

「4月以降は階段を一段下りたような感覚です。しばらく状況は変わらないでしょう。とはいえ、ここから落ちるとも思っていません。コロナ禍で落ちた受注は昨年度に回復しました。折からの部材不足で受注と売上に開きはありますが、それも解消傾向にあります。短納期の機種もかなり増えましたね。何より新型コロナが5類になり、展示会の制限が解けたことが大きい。我々のフライス盤は実機でこそ良さを伝えられます」

――以前に貴社のフライス盤で、大型機でも作業者がワークと機械に寄り付いている光景を見ました。確かに接近性ひとつ取っても実機で伝わる良さがありそうです。

「例えばベッドの足元が窪んでいるだけでも、足先が入り寄り付きが良くなります。ワークを載せてチャッキングし、基準点を出す――段取り作業を早く確実に行うのにその一歩が物を言うわけです。もちろん、各軸独立のハンドル・レバーによる汎用的な操作性や、プログラムなしで加工できる『加工ガイダンス機能』も重要。この積み重ねで単品加工は確実に早くなります。実機を触ればこの長所にも納得いただけますが、それが弱点かもしれません。何せ使い勝手にこだわりが詰まっており、WEB展には全然向かないんです」

――NCフライス盤で国内トップシェアです。理由はやはり操作性ですか。

「操作性や接近性、そして単品加工に特化したシリーズである点は大きいと思います。テーブル高さやハンドル・レバーなど、弊社が良いと考える仕様は全機種統一です。ただ汎用操作では、作業者の体格や慣れ親しんだ機械の違いで必ずしも我々のベストがユーザーのベストとは限らない。そこでご意見は真摯に取り入れ、可能な限り要望に沿ったカスタマイズをします。だからこそ愛着を感じてもらえるのではないでしょうか。また加工ガイダンス機能も毎年、改良を重ねています」

――守るべき部分は守り、変えるべきところは変えている。

「やはり根本にあるのはユーザーの意見。我々としても勉強させてもらい、新機能を加えています。進化ほどではないかもしれません。ただ、間違いなく熟成はしているのかなと。そんな具合にゆっくりじっくり、いまだに育ち続ける機械だと思っています」

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6月末に発売した立形マシニングセンタ「M-502

■25年ぶりの国内向けMC 

――立形マシニングセンタ(MC)「M―502」を発売されました。国内向けMCは25年ぶりとか。

「実はカバー付きの機種は過去にもあったんです。ただ、それはマガジン付きNCフライス盤にカバーを後付けしたような構造。切粉処理に課題もありました。これに対しM―502はイチから設計しています。カバー付きでも最大限テーブルに接近でき、汎用性を意識したお馴染みのハンドル・レバーもあります。使い勝手は立形NCフライス盤のYZシリーズにかなり近い。山崎技研には汎用性とガイダンス機能という譲れない一線があり、それを活かしたMCです。少ない箇所の加工ならプログラムより手動操作が早く、加工に合わせた使い分けができる。カタログスペックで検討するMCとはコンセプトが違います」

――MCでありながらYZシリーズでもある。

「まさにその通りで、一般的にはATCとカバーが付けばMCだと言われます。M―502もMCですが、使い勝手の面では、我々からすると汎用性のあるNCフライスでもあるわけです。ありがたいことに、YZのような操作性のMCが欲しいという声はかなり以前から届いていました。限られた設備で様々な加工を行う現場では、単品とある程度の数物を同じ機械でこなす必要があります。YZの既存ユーザーへじっくり浸透させたいと思います」

――長い目線で今後の方向性を教えてください。

我々は創業76年目。業界ではまだまだ若手です。荒波を乗り越え、まずは100年を着実に目指します。我々の開発の原点は『人に威圧感を与える機械はだめだ』という創業者の思い。これが接近性や細かなRにも妥協しない機械デザインを生んでいます。本来はパテのいらない部分にもパテを塗るのが、昭和から今に至るまで我々のモノづくりの姿勢。技術とともに引き継いでいきます」


徹底したユーザー目線

以前は見込みに基づくロット生産を行っていた山崎技研だが、リーマンショックを機に生産方式を変えた。引き合いやオーダーに合わせて様々な機種が流れる方式にしたのだ。「当然、能率は下がります」と森尾社長は穏やかに話す。「ただ、見込み生産ではユーザーさんをお待たせしてしまう。少しでも要望に合わせられるようにしたんです」。今では社内で「多能工」を育成し、地道な取り組みで効率アップを目指している。

(2023年9月10日号掲載)