インタビュー
ブラザー工業 常務執行役員 マシナリー事業統括 星 真 氏
- 投稿日時
- 2023/03/20 09:00
- 更新日時
- 2023/03/20 09:00
協業深め販社と連携強化へ
堅調な売り上げを記録しているブラザー工業の30番MC。従来、40番MCで行っていた加工を置換可能で、工程集約や自動化にも対応するなど機能の充実と豊富なラインアップが国内外を問わず好評を博している。同社マシナリー事業トップの星真常務が直近のセールス状況と今後の見通しについて語ってくれた。
――昨今の受注環境はいかがでしょうか。
「2022年度は順風満帆、とまではいきませんが、想定通りの数字で推移しています。受注面では調達で難航し、2度ほど生産に影響が出てしまう局面がありました。これが納期遅れや受注にも影響が及びました。しかし、こちらも徐々に解消されつつあり、3月末にも通常通りの納期に戻せる見通しです」
――貴社はグローバルで展開されています。調達面でプラスになった面は。
「従来はマシナリー事業部単体での調達を行っていましたが、コロナ以降は全社での調達を行っています。主力のプリンタ事業は調達数も桁が違いますし、調達先に対する交渉力もあります。こうした部分にかなり助けられました」
――貴社主力機種はリードタイムの短さに強みがあります。業界全体の受注残が積み重なる中、短納期がプラスに働いた側面はありますか。
「当社の標準的な機械の納期は国内製で3か月、中国製ですと1・5か月ですので、短納期ということもあり、選んでいただけるケースも増えています。特に中国のEV関係は進捗が早い。短期間で一気に設備投資しますので、まとまった台数が必要になります。そういったスピード感のあるモノづくり現場にしっかり対応できていると感じています」
――2023年度も中国市場を中心とした需要を見込んでいますか。
「中国経済の先行きは不透明と言われていますが、私たちは『良くなる』と期待を込めてみています。EV関連は底堅いニーズを感じており、ここをビジネスチャンスとして追求していきます。中国は一貫して経済成長を重視した政策を取っています。EV以外も含め、幅広い分野でさらなる成長を期待しています」
――国内市場はいかがでしょうか。
「2022年の国内市場はまだら模様でしたね。自動車関係の投資は控えめでしたが、それを補って余りあるのが半導体や自動化関連需要で、多様な業界から注文をいただけたという印象です。2023年は自動車関連の需要が戻ってくると見ています。ここ数年、自動車各社は作りたくても作れない状況が続いています。それが戻ってくれば、下降局面の下支えになると思っていますので、2022年より上向くと期待しています」
■EVニーズを確実にキャッチ
――今後の自動車向け需要はEV向けになるのでしょうか。
「全世界的に見れば、EV向けの比重が高まっていますが、国内はEV、ハイブリッドなど様々な投資が行われると考えています。現在、ガソリン車も納期短縮を目指しているのは感じているので、部品が確保できる状況になれば、全方位での生産量アップが見込まれます」
――EV向けではどういった加工ニーズが寄せられていますか。
「アルミダイカスト製品の加工が多いです。モーターケースやインバーターケースといったケースものを中心に、電動車特有のニーズをしっかりと取り込もうと努めています」
――貴社の30番MC(マシニングセンタ)は従来、40番MCで行っていた加工にも対応できる加工能力があると聞いています。
「当社製品、SPEEDIO(スピーディオ)は生産性や環境性能では大きなメリットを提供できますが、加工能力に限界があることが課題でした。高剛性モデルF600X1をはじめ全ラインナップで、剛性アップやトルクアップ二取り組み、さらにはW1000Xd1やU500Xd1で象徴される大物ワークの加工を追求する開発を行ってきました」
――昨今の自社展では周辺機器メーカーとのコラボも目立ちます。
「当社機械の加工能力は、周辺機器メーカーの製品によってさらに磨きがかかります。各社がSPEEDIOにうまくチューニングしてくれたものを続々と開発してくれています。各社のイノベーションと当社の機械の性能とうまく掛け合わせた相乗効果で顧客価値がぐんと高まります。良い協業体制が築けていると感じています」
――仙台にショールームを設けるなど、国内セールスにも注力されていますね。
「2021年度に商流改革し、販売代理店の数が増えました。こうした代理店やそこを通して取引する販売店との関係をさらに強固にしていきたいですね。セールスの方々をサポートすべく、SPEEDIOのさまざまな価値を理解いただけるようなウェビナーや動画の充実、販売制度の見直しなど、よりよい関係性を築いていきたいです。また具体的な時期は未定ですが、いずれ九州、広島にもショールームを立ち上げたい。販売店の皆様からも要望されていますが、メーカーの責任として出来るだけ早い時期に実現したいです」
工程集約を実現する「U500Xd1」
(2023年3月10日号掲載)