インタビュー
KMC 代表取締役社長 佐藤 声喜 氏
- 投稿日時
- 2022/07/26 16:29
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
データ活用の本領発揮はまさにこれから
2010年に設立した当社(神奈川県川崎市のかながわサイエンスパーク内)はセンサーなどの機器とそれを効果的に使うためのソフトを開発し、コンサルティングも行っている。DX、IoTに関して近年引き合いが相当増えている。無線センサーを使って設備稼働監視をする当社のシステム「稼働モニタリング」は昨年末から注目度が高まっている。
このシステムは超大手の自動車ティア1に採用されたが、同社の工場全体を見ると設備稼働率が把握されておらず、生産性が把握できていない現状にあった。最新の加工機には稼働状況を可視化する機能が付いたものがあるが、この工場では古い機械やメーカーの異なるマシンが多くてデータが取られていたのはごくわずかの生産ラインに過ぎなかった。超大手の工場でこうだから中小企業の現場で同じような悩みを抱えているところは少なくないだろう。
IoTだ、DXだとビッグデータの活用が必要と指摘されて久しいのにそんなものかと思われる向きもあるかもしれない。だがインダストリー4.0が提唱された2015年からまだ7年。データを取得する仕組みを整備してもその効果を発揮するには4、5年かかる。そのことを考慮すれば、データ活用の本領発揮はまさにこれからと言えるだろう。
実際、当社が設備・金型の監視システムを納入した児玉化学工業様(成形加工)は数年かけて7%近くあった成形不良を3%弱へと4ポイントほど改善した。定量的に成果を公表した例としてはきわめて珍しい。各種情報の連動、見える化、予兆管理などを行った成果と言える。
当社が様々な企業を支援してきて実感していることは、データは取ることよりも分析して生かすことのほうが難しいということ。中途半端なデータ取りだと役に立たないということだ。
■DXは金型管理に有効
DXが最も大きな効果を発揮する分野の1つは金型であると考える。部品不良による仕損費や金型突発故障による生産停止などが利益を圧迫しており対策が急務となっていることが背景にある。
当社の商品になるが、金型・設備・治具などをQRコードで個体管理する「QR銘板」はソフト「金型電子カルテ」などのIoTソリューションと連携可能で、タブレット端末を使って金型情報を一元管理することができる。現場をペーパーレス化し、金型の正確な所在管理と棚卸工数を大幅に削減する。さらにはメンテナンスや不具合の情報を蓄積・分析し、金型の予防保全や金型品質の向上に役立てられる。
金型管理の重要性が認識されてきたことは、当社の金型管理システム「AMS(Asset Management System)」がコニカミノルタ様に採用されたことでもわかるだろう。同社の情報機器事業では中国、ASEANへの生産地変更に伴う取引先の現地企業の採用に伴い、金型管理エリアの拡大、金型移管など管理対象は年々拡大する傾向にあった。主な課題として①資産総額、所在地、稼働状況を含めた全体像の把握(トータル8万点に及ぶ)②コニカミノルタ様とその取引先に跨る人手に頼った間接作業の負担増③金型廃棄処理の遅れと誤廃棄︱があった。
これらの解決手段として「資産管理の記録(棚卸、廃棄、所在変更)一元管理」「管理業務の最適化、効率化」「ミス、モレ、重複作業の撲滅」を実施するためにシステムによるデータ構築、管理の実現を目指した。ここで重要となるのはコニカミノルタ様と取引先が保有する金型資産において、同一データを同一環境で閲覧できること。資産の棚卸業務が簡素化され、効率的に行われ、間違いなくかつ短時間で完了できることになる。
これらを実現できた結果、同社では1カ月かかっていた金型準備期間が1週間に、5カ月かかっていた金型棚卸実施期間が2.5カ月に短縮。金型廃棄着手率は100%になり、廃棄着手後の処理時間も大幅に短縮できたという。
製造現場ではERPやMESにない現場管理に即したきめ細かい作業支援や管理機能が求められ、QCD・P(生産性)の向上が求められている。
(聞き手・編集部)
(2022年6月25日号掲載)