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インタビュー

HAI ROBOTICS JAPAN 代表取締役 鈴江 俊雄 氏

投稿日時
2025/10/17 09:00
更新日時
2025/10/17 09:00

3月発表の自動倉庫を初出展
国際物流総合展2025振り返り

ケースハンドリングロボット(ACR)のグローバルトップメーカーであるHAI ROBOTICSが、新製品「HaiPick Climb」を日本の展示会で初披露した。天井高を生かした高密度保管と柔軟な拡張性を武器に、日本市場での存在感を一層高める狙いだ。人手不足や省スペース化に悩む物流現場に、どんな変革をもたらすのか。展示会場で日本法人トップの鈴江俊雄氏に狙いや市場動向を聞いた。

――3月発表の自動倉庫「HaiPick Climb」(以下、HPC)が日本初公開となりました。出展の手応えはいかがですか。

「リリースから約半年、既に多くのお問い合わせをいただいていましたが、実機を披露するのは初。HPCのサイズや、走行時、昇降時のスピード感など、動画やカタログでは伝わりにくい部分を体感いただけたと思います。特に、HPCは競合他社のシステムと違い片側のラックをロボット『HaiClimber』が昇降します。そこから通路向かいのラックにもアクセス可能で、『実際に動く姿を見て初めて仕組みがわかりました』と納得される方が多くいました」

――HPCの基本的な性能について教えてください。

「HaiClimberとワークステーション、ラック、トート、スマート倉庫管理プラットフォーム『HaiQ』などを組み合わせた一体型の自動倉庫システムです。最大高さ12㍍に対応し、1000平方㍍のエリアに最大3万個の保管ロケーションを提供でき、オーダー応答時間は最短2分以内で、1時間当たり最大4000個のコンテナを処理できます」

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HaiPick Climbはロボットが片側のラックを昇降する独自のシステムを採用する

――これまで展開してきたACRとは何が違う。

「最大の違いは保管効率です。ロボットをACRより小型化でき、通路幅を約90㌢に抑えられます。日本の倉庫は面積が限られる現場も多く、倉庫の天井高の有効活用を望む声は根強いです。既にピッキングアシストロボットを活用している現場からも、保管効率向上と人手不足対応のため、より高密度で自動化されたシステムを導入したいとお声かけいただいています」

――競合も似たシステムを発表しています。差別化ポイントは。

「拡張性のしやすさとサービス体制です。HPCは床面積を抑えてスタートでき、事業成長に合わせて段階的に拡張可能です。加えて、片側レール方式のため床精度もシビアでなく、ACRの導入時と同程度の精度があれば稼働でき、迅速な展開が可能です」

■将来の人手不足を見据えた先駆け投資も

――サービス体制についても教えてください。

「当社は2021年に日本支社を設立し、営業からバックオフィス、アフターサービスまで日本国内で完結できる体制を整えてきました。現在、従業員数は42人まで拡大し、来期も1・5倍の増員を計画中です。特に、営業や契約書対応などフロント業務は一貫して日本人スタッフが担当するため、言語や契約慣習の壁を感じさせない点も評価いただいています」

――中国では既に導入が進んでいますね。実稼働から見えた課題などはありますか。

「最初に導入した現場もまだ1年経っていないため、消耗部品のメンテナンスサイクルなどは今後データを分析していきますが、現時点ではシステムの稼働状況は安定しています。日本のお客様がよく懸念される『昇降中のHaiClimberが緊急停止してしまった場合の対処』についても、停止後に自動でゆっくりと降下する安全機能が付いているため、長期間運用が停止してしまう危険はありません」

――展示会を通じて日本市場特有の課題感など感じたことは。

「やはり倉庫面積に対するコストの高さです。借りている倉庫面積を減らしつつ処理能力を確保したいという要望が多いです。加えて、『労働力不足』を心配する声も多かったです」

――省人化が求められている。

「単純な人員削減ではなく、今いる人材により付加価値の高い業務で活躍いただくための投資と捉えているお客様が多いと感じています。一度流出した人材を再確保する大変さが身に染みているようで、自動化投資も作業の効率化だけでなく労働環境の改善や将来的な人手不足に備える意味合いが強まっています。そのため、従来のROI(投資対効果)だけが投資の指標ではなくなりつつあると感じています」

――展示会後もHPCの性能を体感できる機会はありますか。

「展示したシステムは、会期後に埼玉にある本社ショールームに移設します。本ショールームにはHaiPickシリーズ全機種を常設しており、簡単な荷物の持ち込みテストにも対応可能です。見学は当社HPの専用フォームから随時受け入れているので、今回お越しいただけなかった方にも、ぜひ実機を体感しにお越しいただきたいです」

(日本物流新聞2025年10月10日号掲載)