インタビュー
FUJIYA TECH FA事業本部 本部長 庄子 就 氏
- 投稿日時
- 2025/11/25 14:40
- 更新日時
- 2025/11/25 14:43
ロボットによる金属加工自動化ツール
ベトナム拠点に、ニッチな研磨市場攻めきる
老舗作業工具メーカー・フジ矢の金属加工のノウハウを活かし、「FUJIYA TECH」としてFA事業を約2年前に立ち上げた。ロボットを用いた金属加工の中でも、研磨の自動化システムに特化して提案。長年、金属を削ってきた現場のノウハウに加え、現場に応じた研磨ロボットのシステムインテグレーションにも対応する。FA事業本部の庄子就(しょうじ・なる)本部長に話を聞いた。

――景況感は。
「ありがたいことに問い合わせは増加傾向です。会社として運営を本格的に始めたのは昨年の2月、外販の営業を開始したのは昨秋頃ですので順調な滑り出しですが、実績はこれから。展示会に周辺機器メーカーやSIerと共同出展するなど、認知をじっくり広げているところです」
――作業工具メーカーから、ロボットを使った研磨の自動化システム事業を手がけられるように。
「長年、フジ矢はペンチやニッパなど作業工具を量産してきました。自社の自動化に取り組む中で研磨やバリ取りなどのロボットシステムを開発してきた知見をFUJIYA TECHを通して提案します。研磨作業や加工の自動化に特化し、ロボット用のグラインダーやスピンドル、倣いユニットといった主に金属加工用の自動化ツールの開発・製造、販売を手がけます。重研削向けのベルトグラインダーやディスクグラインダー、曲面形状の研磨ができる自動スラック研磨なども、用途に合わせて適宜対応しています」

FUJIYA TECHのグラインダーツールで研磨している様子
――SIer的な役割も。
「研磨工程は自動化の中でも新しいジャンルですので、当社が担う範疇は広くなります。適切な研磨ツールや研磨材の選定も大切で、細かい加工条件の調整まで提案しています。SIerの方々と連携して、加工の自動化プロセスの主たる部分はうちで、それ以外のワークの供給や自動検査のラインを組んでいただいたりすることも。ロボットによる研磨の自動化はまだまだ開拓されていません。だからこそ当社の知見が光る部分があります。求める仕上がりまで一気通貫に提案できるのが大きな強みです」
「有償のテスト加工やレンタルも請け、実際に装置を作る前に仕上がりの確認が可能です。製品は最低100時間の連続・断続加工試験を実施し、過酷な環境に耐えることを確認してからリリースしています。アフターサービスも東大阪にある本社で行い、導入後もすぐに対応可能です」
――実績のある業種は。
「引き合いのメインは金属加工の自動化で、鉄鋼関係や建機・重機メーカー、船舶や大型車両のエンジンメーカーなど幅広いです。工場の自動化システムの案件では鋳物の鋳バリ取りや製缶、板金など溶接関連の機械が多いですね。」
――得意分野は。
「研磨関係ということ以外は特に絞らず、重研削から鏡面研磨まで対応していますが、基本的に他社が対応できないニッチな部分を取りたい。我々のようにグラインダーを専業にしている所はほぼありません。ディスクグラインダーやスピンドル、バンドソーまで、ニッチなロボット加工の自動化を攻めきる考えです」
■ベトナムの自動化ニーズも狙う
――コストメリットも強みでは。
「研磨は海外製のツールやロボットシステムが強いですが、ベトナムを拠点に開発・製造をしているため価格面でも勝負できます。導入時のハードルを下げられる国産メーカーとして存在感を発揮していきたいですね」
――人員拡充も。
「ロボット研磨の認知が十分に広がっていない市場では、セールスエンジニアの役割は重要。機械や加工に対する深い知識や経験が必要で、営業から現場対応までマルチに動けるセールスエンジニアの育成や増員に力をいれます」
――今後の目標は。
「外販で5年以内に3億円が目標です。この2、3年は日本を主戦場に実績を作り、ゆくゆくはベトナムも攻めていきたい。賃金が急カーブで上昇しており、ベトナムに自動化ニーズが顕れるのは遠くない未来。今でもFacebookやSNSを通じてローカル企業から引き合いは来ています。人件費高騰を見据え、自動化が必要だと真剣に検討する企業は確実にいます。研磨の自動化は今が過渡期。コロナ禍前後から顕在化していた人材不足も、かなり深刻化してきてニーズは増えてきているというのが体感です。粉塵や作業者の振動障害対策なども自動化の流れの追い風です」
FUJIYA TECH
2023年設立
社員 日本4人、ベトナム8人
大阪府東大阪市松原2-6-32
研磨・研削・切削の自動化ツールを開発、製造。ツール販売年間目標として26年で10台
1923年創業のペンチ・ニッパなど高品質作業工具メーカー・フジ矢が蓄えた独自の研磨加工技術や自動化技術ノウハウを活かし、自動化システムを提案するFUJIYA TECH。「ロボットによる加工の難しさは身をもって知っている」と自動化ツールの提供だけでなく研磨プロセスの部分までサポートする。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)