インタビュー
EcoFlow Technology Japan 日本地域統括責任者 Paul Liu 氏
- 投稿日時
- 2025/08/07 15:54
- 更新日時
- 2025/08/07 15:58
防災へと活用広がるポータブル電源
「いつも」と「もしも」をシームレスに
家庭やレジャー向けに人気のポータブル電源が、災害現場でも注目を集めている。静音・無排ガスの新たな電力インフラとして、自治体や学校でも導入が進む。販売台数世界一のポータブル電源ブランドEcoFlowの日本地域統括責任者のPaul Liu氏に、ポータブル電源の可能性と防災分野での展望を聞いた。

――家庭やアウトドア領域などで注目を集めているポータブル電源ですが、防災分野でも活用が進んでいますね。
「そうですね。当社は140以上の国・地域で事業を展開していますが、これまでアメリカでの大雪や中国での武漢洪水、能登半島地震など、様々な災害現場で支援活動を行ってきました。そうした中で感じるのは、情報インフラの充実と共に、電力の安定確保の重要性がさらに高まっているということ。それに合わせてポータブル電源にも注目が集まっています」
――様々なソリューションがある中でポータブル電源が特に求められる理由は。
「避難所となる学校などの公共施設は、多くの人が集まり、二次災害が発生しやすい環境にあります。従来型の発電機では排気ガスによる一酸化炭素中毒や騒音のリスクがあり、燃料の備蓄・管理といった運営面でも課題が指摘されてきました。ポータブル電源は排気ガスや音が出ず、安全かつ簡単に様々な機器に給電できる点が評価されています」
――中でも貴社製品が求められる理由は。
「当社製品の特長は『急速充電、大容量、スマートかつ機能的なモジュール構造』にあります。各ユニットを自在に接続でき、使用シーンや必要容量に応じてバッテリーを拡張可能です。また、ソーラーパネルやエクストラバッテリーとの組み合わせも容易で、柔軟なシステム設計を実現します。近年、バッテリーと接続して使えるポータブル冷蔵庫やエアコンも用意し、より広い用途で活用いただける体制を整えています」
――シームレスに活用できる。
「『平時と災害時を結びつける』という理念に基づき、機器同士だけでなく使用シーンも切れ目なくつなぎたいと考えています。平時では校内イベントや課外学習で使用いただき、災害時が起こったら緊急電源として即座に切り替えられる。平時と有事をシームレスにつなぐ電力インフラの基盤として、活用を広げていきたいと考えています」
――防災分野での今後の取組について。
「当社ビジョン『クリーンな電力へ、誰でも簡単にアクセスできる社会』の実現に向けて、三つの重点領域で取り組みを強化します。まず、太陽光発電と蓄電池製品の組み合わせにより、電力コストの削減とクリーン防災の実現を支援。次に、家庭や地域で迅速に導入できる高レジリエンスな電力インフラの開発を進めます。さらに官公庁や通信事業者、販売パートナーとの連携も強化していきます」
「昨年1月に発生した能登半島地震では各種製品を供給し、衛星通信設備と接続した事例もあります。同年12月には東京都江東区と災害時にポータブル電源などを優先的に貸与する協定を締結しました。今後も誰でも簡単に使える電源製品を通じ、持続可能な防災・教育環境の実現に多角的に貢献していきたいと思います」
家電も動かせソーラー充電可能なポタ電
Paul氏が「学校向けに特におすすめしたい」というのがDELTA シリーズの大容量・高出力なタイプ。DELTA 3 Plusは1024Whのリン酸鉄リチウム電池を内蔵し、最大5kWhまで拡張可能。最短56分でフル充電できる。一方、DELTA Pro 3は同4kWhを内蔵し最大12kWhまで拡張可能。定格出力3600W、X-Boostモードだと最大5100Wまで対応し、IHヒーターや洗濯乾燥機などの高出力家電も安定稼働できる。専用の自動切替分電盤を使用すれば、複数のコンセントエリアへ安定的な電力供給を実現する。いずれもソーラーパネルからも充電可。DELTA 3 Plusは「1kWhクラス」のポータブル電源の中で、容量・性能・スマート機能のバランスに優れ、東京都江東区との協定でも寄贈された。
(日本物流新聞2025年8月10日号掲載)