インタビュー
DOBOT日本法人 カントリーマネジャー 池川 隆一 氏
- 投稿日時
- 2025/11/26 11:25
- 更新日時
- 2025/11/26 11:31
DOBOT JAPAN、ヒューマノイドから6足歩行ロボまで
中国協働ロボメーカー、日本市場拡大へ
協働ロボットメーカーとして世界的にプレゼンスを高めているDOBOT。2023年の日本進出以降、わずか2年余りで販売ネットワークを全国に広げ、市場で確固たる地位を築きつつある。同社日本法人の新たな舵取り役として、2025年10月に就任した池川隆一カントリーマネジャーに日本市場の見立てと今後の戦略、国際ロボット展の出展内容について聞いた。

――まずは日本法人トップ就任、おめでとうございます。これまでの経歴を教えて下さい。
キャリアの原点はパナソニック(入社当時は三洋電機)で、前職は外資系のビジョンカメラメーカーにて、営業組織のヘッドとして、日本・アジア市場を担当していました。いまは3Dビジョンとロボットの連携が一般化しつつありますので、常にロボティクスの最前線に触れていたと自負しています。
――なぜ中国発の協働ロボットメーカーに参画されたのでしょうか。
パナソニック時代に香港に駐在しており、毎週のように深圳などの地場メーカーを訪れていました。その際感じたのが、彼らの圧倒的な開発スピードと勢いです。当時はまだ「日本の電機メーカーの優位は続くだろう」と社内でも考えられていましたが、私は5年、10年後には中国企業が世界を席巻すると強い危機感を持っていました。
その予感は現実となり、多くの日系家電メーカーは淘汰され、欧米企業でさえ中国企業の傘下に入るケースが増え、いまやロボットもコモディティ化しつつあります。こうした状況の中で、これまでの欧米企業での経験、ロボティクスの経験、中国市場を見てきた経験がすべて活かせると感じ、参画を決めました。
中国メーカーの進化スピードは日本式のペースではもう太刀打ちできない領域に入っています。DOBOTを通じて日本の現場に寄与したい思いはもちろんありますが、それ以上に“日本のものづくりに刺激を与えたい”。このままでは危ない、という危機感を共有したいという思いもあります。
――DOBOT日本法人の直近の販売動向を教えて下さい。
2024年は一部で代理店に在庫を持って頂いた時期があったと聞いています。大量に仕込んだ在庫が残れば、翌年は厳しいものになります。しかし2025年は、在庫積み増しなどをせずとも2024年以上の売上に着地できそうです。
2026年はさらに成長できる見通しです。特に30㌔可搬のCR30、IP68仕様の防塵防水協働ロボット、そして新シリーズのNOVAが市場の評価を高めています。競合の協働ロボットメーカーからの置き換え案件も増えており、当社製品を選ぶユーザー層は確実に広がっています。

30キロ可搬のDOBOT CR30H
■B2Cでのロボット活用も提案
――国際ロボット展ではどのような製品を出展されますか。
垂直多関節タイプは、当社の30㌔可搬モデルを中心に様々なシーンで使えるラインナップを展示します。さらに先日発表したヒューマノイド「ATOM(アトム)」も出展します。アトムは、派手なダンスや格闘ショーを目的としたロボットではありません。実用に振り切った設計で、組立、ピッキングなど産業用途での実稼働を目指しています。現在も驚くようなスピードでアップデートが進んでおり、実用化も大いに期待できると考えています。

ヒューマノイド「ATOM」
また変わったところでは、4足歩行ロボットや6足歩行ロボットも出展します。こちらはB2BのみならずB2C向けにも展開していく方針で、モノを運んだりするなど、家庭における「家事パートナー」的な活用を提案していきます。価格的にも比較的安価なので、すでに中国では個人が入手し、活用しているケースも出始めています。
――6足ロボットとは珍しいですね。
6足ロボットは、4足歩行では難しい場所でも動ける高い走破性と安定感があります。こちらはヒト型やAGV、4足歩行では難しい環境でのニーズが高まっており、警備関連など様々な業界から引き合いを頂いております。

6足歩行ロボット「Hexplorer」
――今後、日本市場で存在感を高めていくために何が必要と感じていますか。
日本市場は本社も極めて重要視しています。一方で、現在は売上規模に比べて人員が不足しており、代理店の数に対しても営業マンが足りていない状況です。またプロジェクト管理や代理店との情報共有が十分に行えず、せっかくの需要が取りこぼされていた可能性もあります。今年は名古屋・東京の双方でセールスマネージャーを増員し、代理店との密な連携体制を構築するとともに、サービス体制の充実を図ります。とにかく、まずはDOBOT JAPANとしての「カタチ」を整えることが最優先と考えています。
――最後に、採用活動について伺います。
現在、営業・エンジニア・マーケティングの3職種で積極採用中です。特に営業は経験者を求めています。ロボットやFAの知見を持ち、課題解決に主体的に取り組める方に来ていただきたい。待遇については具体的な数字は申し上げませんが、「後悔させない待遇を提示します」と言い切れます。世界的に急成長するロボットメーカーの日本法人を一緒に作っていくフェーズなので、やりがいも十分あると思います。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)