インタビュー
【1日2台】浴室工事店CONCEPT、クリナップ超省施工システムバスで実現した工期短縮
- 投稿日時
- 2025/12/05 09:00
- 更新日時
- 2025/12/11 10:55
施工現場の今を聴く
浴室工事店 CONCEPT 嘉山 心 さん
クリナップが昨年発表したシステムバスルーム「SELEVIA(セレヴィア)」「rakuvia(ラクヴィア)」は、コンセプト「リビングバスルーム」の通り生活空間とシームレスな意匠や機能を実現できる点に評価が高まっている。一方で、製品からは見えない施工性にも大きくメスを入れ、労働力がひっ迫する現代の建設現場を助ける製品となっている。関東でも屈指の同製品施工数を誇る認定施工店・CONCEPT(埼玉県川口市)の嘉山心さんに話を聞いた。

クリナップのシステムバスの魅力を語ってくれた嘉山心さんと嘉山さんが施工したクリナップ・東京北ショールームのシステムバス「SELEVIA」。1418サイズや梁を避ける切り欠き施工にも対応し、戸建だけでなくマンションにも対応できるようになった。嘉山さんによると戸建てとマンションの比率は「従来は7対3くらいでしたが、現在は半々くらい。マンションが続く時も多い」と、市場のニーズもしっかりと捉えている。
「月に40台ほど一人で組み上げています。20日稼働で考えると1日2台ですね」
そう笑顔で話すのはCONCEPTの嘉山心さん。従来モデル「アクリアバス」では標準で1日かかっていた組立て・設置(以下、施工)時間が、新システムバスルームではほぼ半日に短縮されたという。
「一般的な製品でも1日1台が普通ですし、それ以上の注文を受けることはまずありません。セレヴィアとラクヴィアだと1日2台でも十分こなせます」
施工時間短縮の背景には施工性の大幅な刷新がある。旧アクリアバスでは壁パネルの設置方向が横向きと特殊な施工法をとる必要があった。さらに、浴槽も壁パネルを全て納めてから入れる「後入れ方式」であったため、「寸法がギリギリの場所に重たい浴槽を細心の注意を払って搬入する必要があり、時間や体への負担となっていました」と嘉山さんは振り返る。これに対し新製品では、壁パネルは業界標準の「縦設置」に変わり、浴槽も「先入れ」が可能になった。
■コーキング作業2時間→10分に
改善ポイントが多々ある中で、嘉山さんが特に推すのがコーキング作業の簡易化だ。コーキングの役割は浴室からの水漏れを防ぐことだが、エンドユーザーの目に触れる部分でもあるため仕上がりには丁寧さが求められる。
「事前の養生方法や仕上げ、厚みによって、コーキングの見た目や性能が大きく変わってきます。実は浴室施工の中で一番技術が求められ時間がかかるのがこの作業です」
そこで、クリナップのセレヴィアとラクヴィアは、目地材にコーキングではなく独自の樹脂製パッキン「クリンパッキン」を採用。コーキングよりも硬質な樹脂材がカビ菌糸の侵入を防ぎ手間なく綺麗を保てるユーザーメリットと共に、施工面においては目地に「捨てコーキング」を行ったあと、クリンパッキンを押し込むだけで防水処理が済むようになった。
コーキング剤を使った作業は、捨てコーキングと壁裏に施す防水処理だけのため、見た目を意識した細かな養生や仕上げ作業などが必要なく爆速で作業が進む。リリース当初はパッキンが硬すぎて入らないなどのトラブルもあったが、「現場の声が反映されてパッキン素材は見直されて」おり、関東随一の施工数を誇る嘉山さんの手に掛かると「従来1〜2時間かかっていた作業が10分で終わってしまう」という。
■パネル軽量化と後加工の手間軽減
クリナップのシステムバスの特徴である「高断熱」を実現する壁や床パネルも設置しやすくなった。高い断熱性能はそのままに、従来モデルよりも薄型化(壁パネル25→14㍉)。保温材と芯材を鋼板で挟み込むサンドイッチ構造に見直すことで強度を維持したまま軽量化した。嘉山さんは薄型・軽量化の効果について「搬入作業が楽になるのはもちろん、一番実感するのは床施工時」と話す。
「床のレベル調整は床下にあるボルトを手作業で締めたり緩める必要があります。狭小空間のため無理な姿勢で作業することも多く、資材重量によってはかなりの重労働になる。従来製品ではこの作業に半日かかってしまうこともありましたが、本製品になってから大幅に改善されました」
このサンドイッチパネルには石膏ボードが使用されていないため、現地での追加工時に粉塵が舞わないというメリットもある。石膏ボード加工には粉塵が付き物で、施工後の水拭き掃除など後処理も現場負担となっていた。加えて、壁のつなぎ目に使用するジョイナーも、他社製品に多い鉄ではなく加工しやすいアルミ製を採用。現場で切断するのが容易で火花が出ないため、「施工の効率化と現場のトラブル防止に役立っている」という。
■現場が儲かるシステムバス
施工性の向上は職人負担を軽減するだけでなく、工務店やビルダー側の売上にも直結する。工務店やビルダーの売上はこなした案件数によって変動するため、短期間で施工できる→こなせる案件数が増える→業績が良くなることにもつながる。嘉山さんは「おかげさまで会社の売り上げに大きく貢献できている」と笑うとともに、こうした「誰でもできる」ことの重要性を説く。
「私としてはライバルが増えるので正直嬉しくないですし、職人の技術力へのリスペクトもありますが、『誰でもできる』ことは今後の建設業界のことを考えると非常に大事。ご存知の通り人手不足は深刻で、特に技術力のある人材が不足しています。新人を教育している時間さえ惜しく、品質の高い施工を今まで通りのスピード感で提供していくのが難しくなっています。こうした技術力の差を埋める製品は、業界を持続可能なものにしてくのに大きな役割を果たすと思います」
最後に嘉山さんはクリナップのシステムバスのポテンシャルに期待を込め、「都内のアパートなどで採用されている1116サイズがあれば、もっと入れられる現場が増えるのでは」と提案してくれた。職人に寄り添った製品が「キッチンのクリナップ」から「水まわりのクリナップ」への移行を現場サイドからも進めていきそうだ。
(日本物流新聞2025年12月10日号掲載)