インタビュー
山善 執行役員・物流統括管理者(CLO)/ロジライズ 社長 松田 慎二 氏
物流をコストから事業戦略の柱へ
- 投稿日時
- 2026/03/09 09:00
- 更新日時
- 2026/04/01 09:29
国際標準の勝ち筋へ進む
昨年4月1日付でロジライズの代表取締役社長に就任した松田慎二氏。機械工具商社・山善の執行役員を務め、今年4月から同社の物流統括管理者(CLO)にも就任する。物流をコストセンターからプロフィットセンター(外販)へ転換するロジライズの展望と、山善の物流戦略について話を聞いた。

山善 執行役員・物流統括管理者(CLO)ロジライズ代表取締役社長 松田 慎二 氏
――新CLOとしてどのように取り組みますか。
「まずは物流関連2法改正への対応です。これにより山善は特定第一種荷主となり、ロジライズは元請事業者と位置付けられます。ともに自社だけでなく、多くのパートナー企業と連携し物流効率化を進めていかなければなりません。特定第一種荷主には物流の適正化や生産性向上のため物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられます。極端に言えば、物流効率化のために事業部門に深く介入することが求められます。その権限と責任を強く自覚しています。まずは、法改正への対応システムとして、ハコベル社の受付管理システム『トラック簿』のテスト運用を3月から開始しています」
「これまで日本企業では物流はコストセンターとされ、『運べればよい』という位置づけでした。しかし欧米企業ではCLOが重視され、事業戦略の中核を担っています。今回の法改正を契機に、日本企業の物流もSCMを含む高効率化が求められ、いわば物流が事業競争力そのものになる大きな転換点にあります」
――ここ数年、ロジライズの第二創業的な動きやロジス大阪の開業など大きな変化があります。
「山善は2010年代、時代背景もありロジス名古屋やロジス西日本(固定費型拠点)を売却し、3PLへ移行する『物流コストの変動費化』を進めてきました。生産財は名寄せや納品書同梱など商習慣が特殊で、委託では難しい部分も多く発生しましたが、その過程で、委託倉庫スタッフにスキームを伝授するノウハウを培うことができました。しかし、そういう状況下、委託荷役料や路線運賃の上昇を背景に、2021年からは独自のLMS・WMSの開発を行い、自社運営倉庫として、ロジス東京、ロジス大阪の開設を進め、大型拠点には最新自動化・省力化設備を導入しました。流通商社として、物流インフラを生命線と再定義した『固定費型物流』への方針転換を行います」
「さらにこの生産財物流のノウハウを活かし、プロフィット化(外販)にも取り組んでいます。物流品質を象徴的な言葉として、ロジライズの社是を『物流品質こそ、われらが命』としました。その品質を武器に、ロジス大阪では工具メーカーから約200坪の荷役業務を受託するなど、外販によるプロフィット化も着実に進んでいます」
――デポ(小口配送拠点)との連携も重要ですね。
「固定費型の自社便配送に移行すれば、運賃が上昇しても積載率を高めることで限界利益を確保できます。全国104カ所ある住建事業部のデポに生産財在庫も配置しながら連携を強化しています。これら共用デポを増やすことで自社便配送エリアを広げ、運送効率や積載効率を引き上げ、限界利益の向上を目指します。そこで先に培った3PL路線を逆手に取る戦略で委託デポ活用により、わずか1年で7カ所の共用デポを増設しました。いわば自社運営ロジスと委託運営デポを組み合わせたハイブリット型の物流網の構築を目指します」
■ECの「波動」見極め自動化
――「ロジスEC関東」の4月開業も控えています。
「山善の家庭機器事業部では、ホームセンター流通の競争激化を背景にECを強化する戦略を取っており、原則365日稼働するEC専用倉庫が必要になります。ネットビジネスの特徴は、従来の卸売モデルと違い『波動』が大きいことです。いつ、何が、どれだけ動くか分からない。昨年、南海トラフ地震臨時情報が出た際には防災バッグが爆発的に売れました。そのように平常荷動きの上下で10倍以上の波動が起こります」
「そのため、ロジス大阪の様に最初から省力化設備を入れるのではなく、まずは人員投入で運用し、波動データを整理したうえで、段階的に設備投資を進める方針です」
――ロジライズと山善物流の中長期ビジョンを。
「定量面では現在の取扱高100億円を3年後には111億3000万円へ引き上げます。一方、定性面では物流品質向上を掲げ、誤出荷・クレーム発生率を3年以内に100PPM以内を目指します。まさに社是の裏付けとなる数字です。その中で、グループ内取引から外販への比率を高めていきます」
「物流戦略と事業戦略を一体で進めることによって、利益率の改善を図りたいと考えています。物流を単なるコストではなく、事業機能として活用する。これまで日本の流通商社の多くは営業・物流・管理が同じ視点で戦略を立てず、独自の視点で行動してきました。欧米企業はこの点が進んでいる。戦略物流という国際標準の勝ち筋に、我々の事業をしっかりフィットさせていきます」
(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)